トップページ

その2  1日目昼〜夜

 

地蔵崎

(じぞうざき:島根県松江市)

駐車場前の展望デッキから

12:40、島根半島東端の地蔵崎に到着。駐車場前の展望デッキからは、岬の上に建つ美保関灯台と日本海の風景。今回の旅は鳥取砂丘から気持ちのいい海の景色を沢山見られて本当に気分がいい。前回の広島県一周、その前の小豆島一周と、天気の関係もありあまり印象的な風景を見られなかった分、気分が高揚しっぱなしだ。

絵描きさんに声を掛けられる

灯台の隣にあるレストラン

駐車場から美保関灯台へ続く遊歩道の途中に、菅笠をかぶった絵描きさんが。声を掛けられ談話をしているうちに、何故か話が人生観へと深い内容に移っていき、10分ほど話につき合わされる。そして灯台へ。灯台の隣にある元々灯台施設だった建物は、お洒落な感じのレストランになっている。こんなところで食事してみたいなぁと思いつつも、男1人ではどうも入りにくい雰囲気なので止めておく。

美保関灯台は日本の灯台50選に選ばれている、明治31年に建てられた石造りの灯台。小ぶりだが存在感がある。日差しを浴びた白亜の灯台は真っ白で、背景の真っ青な空にとても映える。本当にいい灯台。灯台前には長い展望デッキがあり、視界いっぱいに日本海が広がっている。本当にいい場所。

美保関灯台前の展望デッキ

美保関灯台前の展望デッキ

ちなみに「世界の灯台100選」というのがある。日本の灯台は5つ選ばれていて、美保関灯台と千葉県の犬吠埼灯台、新潟県の姫埼灯台、静岡県の神子元島灯台、そしてこの後向かう島根県の日御碕灯台。島根県に2つもあるのがすごい。予定ではこの日の夕方に日御碕から夕景を眺めようとしていたのだが、美保関灯台の観光を終えたのが13:20。いつの間にか計画より1時間以上の遅れ。この後いくつか回る場所があり、日没前までに日御碕に行くのは無理なので夕景鑑賞は諦める。日御碕の観光は翌日にずらすことに。

華蔵寺

(けぞうじ:島根県松江市)

島根半島の中海を一望できる、枕木山の華蔵寺へ。曲がりくねった山道を上っていくと、華蔵寺の参道入り口にある地蔵堂に辿り着く。地蔵堂隣の駐車スペースに車を停め、石段を上っていくと仁王門があり、そのすぐ先に崖の上に鎮座する大きな石像が。写真では伝わらないが結構な大きさ。こちらを睨んでいるような顔が少々不気味で、何だか動き出しそうな迫力がある。説明書きによると不動明王というもので、大きさは日本でも有数のものであるとの事。慶応年間、章安和尚の時、建立された、と書かれているがいつの事かさっぱり分からない。石像の風化具合からしてかなり昔だというのは分かる。

地蔵堂

仁王門

不動明王

地蔵堂から境内まで続く参道は500mほどあり、木々に囲まれた緩やかな山道を登っていく。道は未舗装で所々に木造の小さな橋や石段があり、四国遍路の遍路道を思い出す。1年半前の出来事がつい最近のようにも思えるし、随分懐かしいようにも感じる。大変だったけど本当に楽しかったなぁ、いい経験ではあったが活路を見出すまでには至らなかったなぁ、などと物思いにふけりながら歩いていく。

参道

第一展望台

境内に着いてすぐ右手の道へ入っていくと、華蔵寺第一展望台がある。展望台からは中海や鳥取県の名峰大山まで見える眺望。少々遠くの景色が霞んではいるがいい眺め。島根半島には中海(なかうみ)と宍道湖(しんじこ)の2つの湖があり、東側にあるのが中海。日本で5番目に面積の大きい湖で、湖中心の北寄りに大根島(だいこんじま)があり、そのすぐ東隣に江島がある。

第一展望台から眺める中海

大根島

江島の堤防道路

大根島には竜渓洞という溶岩洞窟があり中を見学することができるのだが、事前に予約連絡する必要があり、目的地に着く時間がはっきりしない旅なので洞窟見学はボツになった。なので大根島へは行かない。展望台からよく見える、中海北岸と江島を繋ぐ堤防道路はちょっと走ってみたかった。

境内

本堂

境内にある地図によれば第二展望台もあるので、地図どおりに境内を進んで本堂を横切り、来た道とは反対側の山道を少し歩いてそれらしき場所まで行ってみる。ちょっとした広場のようになっていてベンチもあるのだが、周囲は木々に覆われていてほとんど景色を眺めることはできず、とても展望台とは言えない。場所を間違えたのか、それとも以前は景色を見られたのか、煮え切らないがこれ以上時間を無駄にしたくないので引き返す。引き際が肝心だと前回の旅、広島県一周で身をもって実感したばかりだし。

このあと時間に余裕があれば、島根半島北側の海岸に出て観光しようと計画していたのだが、だいぶ時間が押していたのでパス。特別行きたい場所ではなかったし、少々入り組んだ海岸線に沿って続くクネクネした道を走るのも面倒だし。もう面倒なのは全部パスパス!大海原の風景に心が満たされ小さいことは気にしなくなっている、多分。次の目的地は松江城。日本に12しかない現存天守のひとつなので是非立ち寄っておこうということで。島根半島だけでもいろいろ見所があるが、日本一周の旅では出雲大社以外素通りしていた。当時は旅行に関心が無かったのだと改めて思う。観光はおまけで走ることが目的で、毎日ひたすら車を走らせ27日間で一周してしまった。もし当時から今のように旅行好きだったら3、4ヶ月は必要だったと思う。

枕木山を下りると空全体に薄雲が広がっていて、日は射さなくなっていた。天気予報通り翌日は悪天候になりそうな予感。まぁ万が一そうなったとしても、日を改めて続きを再開すればいいさと思える気分。やはり鳥取砂丘や地蔵埼で見た大海原の風景に心が満たされ、小さいことは気にしなくなっている、多分。

松江城

(まつえじょう:島根県松江市)

松江城の駐車場に着いたのは15:50。平日にも関わらず駐車場は満車で10分ほど待たされる。観光バスも数台停まっていて観光客が多い。人の賑わいを見るのはこの日初めて。現存天守なだけあって観光地としての知名度も高いようだ。松江城天守は白壁が少なく黒板の壁が目立ち、割と小ぶりながらもそこそこ存在感がある。背景が青空ではないのが惜しい。

松江城

忍者発見

天守手前の植え込みの中の芝生に忍者の姿が。あぐらをかいてじっとしている。一般人が忍者パフォーマンスを楽しんでいるのだろうか。440円払って(JAF割り利用)天守に入城。現存天守だけに、年季のある太い柱が張り巡らされていて当時を思わせる。しかし期待したほど印象的ではなかった。天守の規模が小さいからか。

これまでに訪れたことのある8つの現存天守の中で一番印象に残っているのは、長野県松本市にある松本城。松本城は外観も内観も威厳に満ちた存在感があり、本当に素晴らしい天守。松江城が国の重要文化財なのに対し、松本城は国宝。比較すること自体が酷だ。国宝と言えば未訪の姫路城へ行きたいが、今は改修工事中なので完成後にいずれ訪れたい。日本一周では姫路城の駐車場で車中泊をしたものの観光はしなかった。到着が遅く、翌朝起きたのが早かったというだけの理由で…

天守最上階

天守最上階からの眺め

天守最上階からの眺めは、街の中にある多くの天守と同じくビル郡に囲まれた風景。城の多くは街の中心部にあるので仕方ない。それでも僅かに中海と宍道湖を見渡すことができる。松江城のほぼ真南には宍道湖唯一の島である嫁ヶ島が見える。宍道湖東端にある全長150mの小さな島。

宍道湖に浮かぶ嫁ヶ島

松江城のお堀

天守を出てから城内を少し散策しようと思っていたのだが、空模様はどんどん悪化して景色も暗くなってしまったので、お堀のまわりを少し歩いただけで観光終了。

宍道湖

(しんじこ:島根県松江市)

日御埼の夕景鑑賞はボツになってしまったが、この空模様ではどの道夕日は見られないだろうと考えながら、松江城から出雲市へ向けて宍道湖畔を走っていると、雲間から夕日が顔を出し始める。湖畔から眺める夕景も悪くない。何処か車を停められるところはないかと探しつつ太陽の沈む西へ進んでいくと、「道の駅 秋鹿なぎさ公園」があったので車を停める。道の駅に着いたのは17:00で、日没の17:50まで時間があるので、湖岸の波打ち際に腰を下ろし、カバンの中に入れてある小説を読んで時間を潰す。

湖畔沿いの道路から

ゆっくりと夕日を眺めながら日没を待つ。こういうのは随分と久しぶりな気がする。1人で静かに日が沈むのを眺めていると、センチメンタルとノスタルジーが混じったような、心地よさと寂しさが混じったような、何とも言えぬ気分になることがある。決して嫌な気分ではなく、たまにはそんな感傷的な気持ちになるのも悪くない。気楽で孤独な一人旅にぴったりなシチュエーションじゃないか。なんてね。

太陽が向こう岸の陸に完全に姿を消したところで出発。道の駅を出て少しすると、日が沈んだ方角から曇り空が赤く染まり始め、やがて空一面が真っ赤に。何とも鮮やかで印象的な光景。暗くなってしまう前に写真を撮らねばと、車を停められる場所を探すがなかなか見つからず、ヤキモキしながら車を走らせやっと駐車スペースを発見。

波打ち際から一段高いところにある道路脇からは、夕景を映して赤く染まった湖面も視界いっぱいに広がっている。少し不気味に感じるほど空も湖面も真っ赤に染まった光景に暫く見入る。夕方から曇りだしたものの、旅行1日目は朝から日没までいい景色を沢山見ることができて大満足。ただ、宍道湖畔には夕景鑑賞のベストスポットがあり、東端側の湖岸から嫁ヶ島と一緒に眺める夕景が素晴らしいと、後から知る。まぁいいさ、これはこれでいい景色が見られたのだからと、自分に納得させる。

日没直後の夕焼け

それからファミレスに入り夕食。考えてみれば朝からまともな食事をしていなかった。夜中に起きて軽く食事を済ませ出発して、それからは菓子パンと焼きいかを食べただけ。車中泊の一人旅において、食事は優先度が底辺というのは昔から変わらない。日が出ているうちは店内で時間をかけて食事をするよりも、できるだけ観光に時間を費やしたいという思いが大きい。まぁ余裕があれば1回くらいはご当地グルメをしたいとは思うけど。

出雲大社

(いずもたいしゃ:島根県出雲市)

翌日観光予定の出雲大社の近くにある、JR出雲市駅の前にある入浴施設に行くつもりが、道を間違え出雲大社まで行ってしまう。時間は19:00を過ぎていたが、参拝時間は20:00までなのでとりあえず立ち寄ってみる。駐車場に照明はなく真っ暗で人気もなく、もう終わっているのではないかと思いつつも境内へ向かうと、ライトアップされた神楽殿の正面に出る。参拝者の姿はなく静まり返っているが、正面両脇にある御守所はまだ営業していた。

神楽殿

神楽殿の注連縄

出雲大社と言えば神楽殿の巨大な注連縄が有名。日本一周で初めて訪れた時は、この注連縄の大きさに驚いた。鳥取砂丘と同じくここも12年振りの訪問なんだなと、昔を懐かしむ。そして本殿のある境内に入ろうとしたのだが、すでに門は閉められていた。神楽殿以外の営業は終了しているのだろうか、それとも、神楽殿は出雲大社正面から見て裏手に当たるので、正面の参道からなら境内に入れるのか。いずれにせよ出雲大社は翌日に観光するつもりだったので、駐車場へ戻り入浴施設へ向かう。

看板もお洒落

あらかじめ調べておいた入浴施設「出雲駅前温泉 らんぷの湯」。一般的な日帰り入浴施設なのだが、施設内の照明がランプの灯りでかなり個性のある場所。勿論ランプ型の電気照明だと思うが、とても雰囲気がいい。脱衣所と浴場は天井から吊り下げられた複数のランプの明かりのみで薄暗く、上だけ見てると小洒落た飲食店のような雰囲気。浴場は檜造りで高級感があり、ランプの薄暗い照明と相まってとても落ち着いた感じの空間になっている。入浴料600円の大衆浴場とは思えない雰囲気。そして露天風呂も個性的で、1人用の長方形型の木風呂が三つ並んでいて、敷地内の竹林を眺めながら湯に浸かれるようになっている。こんな入浴施設が自宅の近くにあったら最高だなと思う。是非とも浴室と浴場の写真を撮りたかったが、入浴客が複数人いたので自重。1時間半近く入浴して心も身体も癒される。入浴後休憩室のテレビで翌日の天気予報を見ると曇り。少し良くはなったが曇りではどのみち楽しめない。やはり翌日は旅行中止になるかもなと、腹をくくる。

らんぷの湯を出て、出雲大社のすぐ側にある「道の駅 大社ご縁広場」へ。シートを倒してさて寝ようとしたところで、何となく眠るまでに腹が減りそうな予感がしたので、道の駅の向かいにあるコンビニでコーンポタージュとチキンを買って夜食。就寝直前の間食はよくないが、少しでも腹が減ると気が散って眠れない性分なので。。23:00少し前に就寝。