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その1  1日目朝〜昼

 

11月ともなると日照時間がぐっと短くなり、それに伴い観光に費やせる時間も短くなる。宿泊施設に泊まらない車中泊の旅は、日没を過ぎ観光を終えた後は食事と入浴をし、後は翌日朝一の目的地まで移動するか寝るしかする事が無い。秋冬は寒さに加え日照時間が短い点でも、自分が行っているような軽装な車中泊スタイルには不向き。それでも気分転換に車中泊の旅をしたくなった訳で。最初の目的地である福井県の東尋坊までは500km強の道のり。限られた日照時間をフル活用し計画通りに旅を進めるために、自宅を2:00に出発。平日という事もあって高速道路は終始流れが良く、予定より1時間強早く目的地のインターチェンジを下りる。ETC利用の割引で料金は半額(関越自動車道練馬IC→北陸自動車道加賀IC 506.5kmの道のりで\10,400のところを\5,200)。高速走路休日1000円が終ってもETC利用の恩恵は大きい。

高速道路を下りてさらに20kmほど車を走らせれば東尋坊に到着。その前に東尋坊周辺の観光スポットのいくつかに立ち寄り。時間は8:00をまわり観光するのに十分な日の高さに。青空も出ていてなかなかの観光日和。とりあえず順調なスタート。

丸岡藩砲台跡

(まるおかはんほうだいあと:福井県坂井市)

まずは丸岡藩砲台跡。江戸時代末期の1852年に、丸岡藩が沿岸警備のために築いたという砲台。海に突き出た海岸線上に、弓状に築かれた高さ1.8mの土塁に5つの砲眼が4.5m間隔で設けられている。原形をこれだけしっかり留めた砲台跡は全国でも珍しく貴重らしく、国指定史跡になっている。だからと言って特別見応えがあるわけでもなく、際立った観光スポットというほどのものではないが、澄んだ空気と青空の下で海岸風景を眺めながら散歩するにはいい場所。

丸岡藩砲台跡

越前松島

(えちぜんまつしま:福井県坂井市)

次は丸岡藩砲台跡のすぐ隣にある越前松島。名前の通り、日本三景のひとつである宮城県の松島のように海岸に奇岩が点在する景勝地。本家松島は観光した事が無いのでどんな感じなのかよくは分からないが、ここはここでなかなか雰囲気のいい場所。久しぶりに嗅ぐ磯の匂いにも癒される。何よりも晴天に恵まれたのが大きい。天気予報で晴れマークの日を狙って日取りを決めていたので、予報通りになってくれてよかった。

特徴的な奇岩

観音洞入口

観音洞の奥

海岸に整備された遊歩道を進んでいくと、切り立った岩壁にできた洞窟の前に出る。観音菩薩が祀られている「観音洞」と呼ばれる洞窟で、松島三洞穴のひとつ。人一人が通るのに十分な大きさの穴が開いている。まるで昔の人が掘って出来たような穴だが、自然現象でできたというのだから不思議。奥行きは浅く、外から差し込む光だけで奥にある観音様まで歩いて行ける。ところで松島三洞穴って事は残りのふたつは何処?と、遊歩道を引き返す時に別の洞窟が目に入り、そちらの方へも行ってみる。観音洞と同じく観音様が祭られた、「聖り穴(ひじりあな)」という洞窟。聖り穴はしゃがまないと入れないほどの低さ。古代人の住居跡とも言われているようで、確かに人が住んでいたと思わせるような雰囲気の空間になっている。残りの1ヵ所の洞窟は面倒なので探さなかった。後から調べて「弁慶の抜け穴」というのがあると分かったが、落石の危険があり現在は立ち入れないらしい。

聖り穴

聖り穴の奥

雄島

(おしま:福井県坂井市)

雄島橋と雄島

雄島橋

次は東尋坊のすぐ手前にある雄島。周囲2kmの小さな島で、雄島橋という長い橋を渡って島まで行くことが出来る。橋を渡って島に入り、石段を上っていくと突き当たり左右に分かれた道になっていて、左側に鳥居があるのでそちらの道へ。鳥居の先には大湊神社という古びた神社がある。木々の影に覆われ暗い中を木漏れ日に照らされた神社は独特の雰囲気を醸し出している。神々しいというか”出そう”というか。

鳥居の先へ進む

大湊神社

神社の古井戸

神社を通り過ぎ木々に囲まれた道を抜けると、特徴的な岩場が広がる海岸に出る。雄島入口の案内板によると流紋岩・柱状節理・板状節理…などという複数種類の岩があるらしいが、どれががどれだかよく分からない。とにかく海岸一面に特徴的な岩場が広がっていてなかなかいい眺め。その岩場の一角に「瓜割の水」と呼ばれる湧き水があるので、足元に気をつけながら岩場を下りて行く。と、それらしいものを見つけるが、案内板も何もないので特定できず。もしかしたらただの水溜りかもしれない。しかしこれ以上岩場を歩き回って足でも滑らせたらたまらないので元の道に戻る。それにしても暑い。11月だというのに半袖でもいいくらいの暑さ。高速道路の途中で立ち寄ったSAでは、気温が10℃と寒かったので日中の気温が心配だったが、防寒のために持参してきた上着やインナーは不要だった。

海岸の特徴的な岩場

これが瓜割の水?

雄島灯台

雄島を時計回りに半周弱ほどまわったところに灯台が建っていた。さらに淡々と海沿いの道を進む。これと言って何かがある訳ではないが、島の海岸風景や周囲の海の眺めが長閑でなかなかいい場所。平日の朝で人の姿は全く無く、静かで落ち着く。島を3/4以上まわったところで「磁石岩」という場所に出る。方位磁石を近づけると磁針が狂う不思議な岩らしいが、見た目は今まで見てきた景色と変わらず。そして約40分で雄島一周。

細い遊歩道を歩いていく

磁石岩

後から知った事なのだが、雄島は結構有名な心霊スポットでもあった。東尋坊が自殺の名所として有名で、東尋坊で身投げした人が流れ着き霊が出るとか、反時計回りに島を回ると死の世界に導かれるという言い伝えがあるとか… 神社は少し妙な雰囲気があったが、そんな事を知らなければ別に何とも無い場所だった。まぁ一応時計回りにまわっていたのでよかった。

東尋坊

(とうじんぼう:福井県坂井市)

海岸へ続く商店街

東尋坊タワー

東尋坊

10:20東尋坊駐車場に到着。駐車場から海岸へ続く商店街を通って東尋坊へ。途中に東尋坊タワーがあるのだが、展望台からは肝心の東尋坊の岩場が見えないという、かなり残念なタワーらしいので立ち寄らず。

東尋坊から雄島が見える

商店街を抜けると海を一望出来る開けた場所に出る。先に観光した雄島と雄島橋もよく見える。東尋坊は福井県を代表する観光スポットで、海食によって海岸の岩肌が削られた岩壁が約1.5km続く北陸屈指の景勝地。昔々東尋坊という名の乱暴者で悪行を重ねている僧侶がいて、それに困った他の僧侶達が東尋坊を酔わせ眠らせて、断崖から突き落としたという伝説があり、そこから名前が来ているらしい。

東尋坊の岩は輝石安山岩の柱状節理というもので、これほどの規模を持つものは世界に3箇所だけ(東尋坊・韓国金剛山・ノルウェー西海岸)で地質上極めて貴重とされ、国の天然記念物及び名勝に指定されている。確かに特徴的な形状をしているが、正直期待していたほどのインパクトを感じ取る事はできなかった。何となくこんな感じの海岸他にもいろいろあるよね、という印象。それでも代表的な景勝地だけあって、平日の午前中にも関らず複数のツアーの団体客で賑わっていた。

「ライオン岩」や「三段岩」など、名前の付けられた岩が点在していて、それぞれ見て回ろうと思っていたのだが、イマイチどれがどれだか分からず。「ろうそく岩」だけはすぐに分かった。景勝地として多くの観光客で賑わう東尋坊であるが、自殺の名所としても有名。この手の断崖絶壁の観光スポットではよくある話だが、2010年は74人もの自殺志願者を保護するほどの名所となってしまっていて、地元の人も頭を悩ませているとか。不況による派遣切りが目立つようになってから、東尋坊での自殺志願者の数も増加しているらしい。何とも寂しい時代…

ろうそく岩

三國湊きたまえ通り

(みくにみなときたまえとおり:福井県坂井市)

東尋坊から南に3、4km進んだ所にある、古い町並みが残る三國湊きたまえ通りにも立ち寄り。近くの駐車場に車を停めきたまえ通りに入ると、思っていたよりも何というか普通な雰囲気の場所だった。格子や袖壁のある瓦屋根の旧家が通りの先まで並んでいる風景をイメージしていたのだが、そこまでではなく古い家がまばらに建っているという感じ。とあえずお腹が空いたので町内散策の前に腹ごしらえ。三國湊座という食堂喫茶の三國バーガーが名物のようなので、あらかじめここで食事をしようと決めていた。

きたまえ通り入口から

三國湊座

店の外観は和風レトロな感じで二階部分に「三國湊座」と大きな看板。レンタサイクルも行っているようで自転車が数台置かれている。で、「自動」と書かれた入口の扉の前に立つが扉が開かない。センサーの反応が悪いのかと思い、体を少し動かしたりしてみるがやっぱり開かない。扉に貼られた文字をよく見てみると、「分でかしてね」…まんまとだまされた。なかなか粋な事をしてくれるじゃないか、これだけで合格だよ(笑)。

だまされたっ

外観のイメージとは打って変わって、店内は小洒落たカフェ風で奥行きがあり結構広い。店の一番奥にはピアノと大きなスピーカーがあり、天井にはスポットライトがいくつも吊り下げられていているので、音楽ステージとしても使われているのだろう。とてもいい雰囲気の場所だ。壁に据え付けられた本棚には、有名人のサイン色紙が多数飾られている。旅番組にも取り上げられたようで、三國湊きたまえ通りを代表するスポットのようだ。

三國湊座店内

お目当ての三國バーガーとオレンジジュースを注文。本格的?なハンバーガーなので注文してから出来上がるまで少々時間がかかる。11:00を過ぎていたが店内に客は自分ひとりだけで、待っている間1人ぽつんとイスに座り、スピーカーから静かに流れる「プリンセスプリンセス」の懐かしい曲を聴いていたら、店内の独特の雰囲気も相まってノスタルジーな気分になってしまった。

そして出された三國バーガーの背の高いこと。店員に「背が高いので上から潰して食べてください」と言われる。分厚いバンズに肉厚なパテ、輪切りのオニオンにたっぷりレタスでボリューム満点。普段ハンバーガーと言えばマックくらいしか利用しない自分にとっては規格外のボリューム。これと比べたらビックマックも貧相に見えてしまう。味の方も焼きたてのジューシーなパテとシャキシャキのレタスがインパクトあっておいしい。

三國バーガーを食べた三國湊座を後にして、三国湊きたまえ通りを奥へと進んでいく。格子戸の家や歴史を感じさせる建物がポツポツと点在している。そしてきたまえ通りで一番の観光スポットらしい旧森田銀行へ。1984年(明治27年)に建てられた鉄筋コンクリートの建物で、外壁に赤茶色のタイルが貼られ大正ロマン漂う外観。建物内も見学できる。旧森田銀行より先は特に見学スポットが無さそうなので引き返す。旧森田銀行の向かいには「カルナ」という人気のアイスクリーム屋があり、そこでアイスクリームを食べようと思っていたのだが、冷たいものを口にする気分ではなかったので止めた。無理に食べて腹を冷やして腹痛になったら困るし。

きたまえ通り

旧森田銀行

旧森田銀行店内

三國町には、きたまえ通り以外の普通の住宅地にも古い町並みの残る場所が点在しているので、車を停めた駐車場周辺の住宅地をついでのついでに軽く散策。

思案橋

辰巳川

金鳳寺