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その1  1日目朝

 

旅行前日が土曜日で仕事が休みだったため、珍しくそれなりの睡眠をとって1:00起床。2:00前にレンタカーで出発して高速道路で一気に福島県まで進み、磐梯吾妻スカイラインに入る。

磐梯吾妻スカイラインは有料道路なのだが、時間が早いせいか料金所に人は居なく、通行料を払わず入る事ができた。早起きは三文の徳。ちょうど日の出の時間を過ぎた辺りで、ドアミラーにオレンジ色の朝日がチラチラと映る。綺麗な朝日を少し惜しみつつも磐梯吾妻スカイラインを進んで行き、つばくろ谷に差し掛かったところで、休憩がてら車を駐車場に停める。時間はちょうど6:00と早いながらも、駐車場はほぼ満車で驚く。早くもこの先渋滞の予感…

つばくろ谷に架かる不動沢橋

外は結構寒い。つばくろ谷周辺の紅葉はまだ色づき始めたばかりの様子。それにしても雲が多いのが気になる。紅葉を見に行くと悪天候に見舞われる、というジンクスがまた起こるのか…今回は紅葉が目当てではなく、浄土平の一切経山から眺める吾妻小富士と五色沼、それと蔵王のお釜が目的なのだが。

つばくろ谷から先は紅葉が目立ち始め、道路脇に停まる車の列が続く。しかし雲も増え始め、今にも雨が降り出しそうな様子。紅葉を見ようと車を停めて外に出ると、強い風が吹きつけもの凄く寒い。写真を数枚撮ってすぐに車に戻る。と、強風で車が揺れている。何だか嫌な予感…

浄土平

(じょうどだいら:福島県福島市)

6:30過ぎに浄土平駐車場に到着。ここはまだ車の数が少ない。早速一切経山に登りたいところだが、山の上の方は雲に覆われている状態。これでは頂上まで行ってもなにも見えない。仕方ないのでとりあえず吾妻小富士に登ってみる。吾妻小富士は浄土平駐車場から山肌の階段を5、6分歩いて頂上まで行けるお手軽なもの。

吾妻小富士頂上から浄土平駐車場と一切経山を眺める

吾妻小富士頂上から見上げる空

吾妻小富士頂上は強風、と言うより暴風が吹き荒れ真っ直ぐ立っていられない。そして猛烈に寒い!寒くて手と耳が痛い!!ちらほら登ってくる観光客も寒さと風ですぐに下りてゆく。吾妻小富士は火山で火口を一周できるのだが、今そんなことをするのは自殺行為に近い。いつまでいても体力と体温が奪われるだけなので早々に駐車場に戻る。

冷え切った体を車のヒーターを最強にして温める。強風で雲の流れが非常に早いので、そのうち一切経山周辺も晴れるのではないかと思い、暫く車内で待機。しかし一向に雲は晴れない。7:30をまわりある程度陽が高くなり、気温も上がってきたので、ここで意を決して曇りの一切経山の登山を開始する事に。

一切経山

(いっさいきょうざん:福島県福島市)

駐車場から浄土平湿原を通って、一切経山登山道の入り口へ。天気のせいか登山道を登っていく観光客は少ない。相変わらず一切経山の上には厚い雲。トレッキングシューズ以外全くの普段着な上、レインコートすら持って来ていないので、雨だけは降らない事を願って登山道へ入る。

これからこの山に登るっ

急で険しい岩場の登山道

最初から険しい岩場の道。でも見た目ほど大した事は無く、さくさくと先へ進んでいく。ふと気づけば前にも後にも登山者が何人もいる。そして後を振り向けば吾妻小富士や紅葉した桶沼がよく見える。しかし上へ進むにつれだんだん視界が悪くなり、周りの景色が全く見えなくなってしまう。完全に雲の中に入ってしまった。気温が急激に下がり風も強くなりかなり寒い。周りの登山者は皆トレッキングウエアに手袋装備。私服姿の自分がかなり場違いに思える…

一切経山火口跡と吾妻小富士

吾妻小富士の隣にある桶沼

頂上まであともう少しと思われる、地面が平たく開けた所に出ると、身の危険を感じるほどの強風が吹き荒れ真っ直ぐ立っていられない。時折突風が吹き足を止めじっと踏ん張る。あまりの強風に引き返す登山者多数。自分も引き返すべきか迷う。何とか山頂まで登ってもこの状態では何も見えないし、とにかく寒い。地面には空気中の水分が凍って結晶化したと思われる、氷の欠片のようなものが辺り一面に散らばっている。そして何とメガネが結露!?している。これはちょっとヤバイ気がしてきた。

視界が悪く冷たい風が吹き荒れる登山道

メガネが結露に…

岩場に手をつき強風に吹かれながら先へ進むか引き返すか考える。これだけ風が強いということは雲の流れも速いので、いずれ晴れるかも知れない。もしここで引き返して下山してから、一切経山を見上げて雲が晴れていたらもの凄く後悔する。それに今回諦めたら再度ここまで来ることはないだろう、などと考えていたら先に進む以外になかった。と、向かいから歩いてきたおばさんが自分のいる岩場にやってきて話しかけてきた。どうやらその人は頂上を諦め引き返すようだ。自分の事も聞かれたので、どうしても五色沼が見たいのでとりあえず頂上まで行ってみると言うと、リュックの中に軍手があるから使う?と言われたので、ありがたく頂いた。

一切経山頂上…完全に雲の中

あまりの寒さに岩に霜がびっしり

寒さと強風に耐え何とか一切経山頂上に到着。時間は8:45、登山時間はちょうど1時間くらい。頂上には10人ほどいる。視界は相変わらず最悪で、本来見えるはずの五色沼は全く見えない。そして強風が吹き荒れ体感温度はマイナス(多分、間違いない…)。とりあえず風をしのぐ為ために大きな岩場の影に入る。お腹がすいたのでカバンからカロリーメイトを取り出すと、冷蔵庫に暫く入れておいたかのように冷えてる。しかもあまりの寒さに口が思うように動かせずうまく噛めず、口からボロボロと噛んだ物がこぼれてしまう。改めて無謀な事をしていると思った。と、自分のいる岩場に一人の登山者が風をしのぎにやってきてた。一眼レフカメラを付けた大きな三脚を抱えたその登山者は、やはり五色沼が目的で晴れるまで待つらしい。自分も負けずにがんばる事にした!

五色沼のある方で何やら人のざわめき声が聞こえたので、もしやと思い行ってみると、微かに五色沼が見える!強風に流される雲で沼は姿を現したり隠れたり。雲の流れてくる先を見ると青空が出てきているので、もう少し待てば雲が晴れるかもしれないと思い、再び岩場に戻ってじっと風をしのぐ。

五色沼

(ごしきぬま:福島県福島市)

15分ほど岩陰でじっとしていると、強風に流されていく雲の隙間から青空が見えるようになってきたので、再び五色沼を見下ろせる所へ。相変わらず猛烈に冷たい強風が吹き荒れる中、寒さに耐え雲の流れに目を見張る。すると次第に沼の周囲の雲が減っていき、日差しも射すようになり鮮やかなコバルトブルーの五色沼に変化していった。やったっ!見れた!この景色が見たかったんだ!!と、一気にテンションが上がる。登山途中に引き返さず、強風と寒さに耐えてここまで来て本当によかった。非常に報われた気分。岩場で会った三脚を担いでいた人が写真を撮っていたので、側に行ってまた雑談。そして使い捨てカイロをくれた。何だか人に物を貰ってばかりだ。

福島県で五色沼というと、裏磐梯の北塩原村にある五色沼が圧倒的に有名で、こちらの五色沼はあまり知られていない様子。浄土平駐車場からだと一切経山の裏手にあり、一切経山の頂上まで登らないと見る事ができない、等の位置的な関係だろうか。実際は写真の通りとても神秘的な眺めの沼で、「魔女の瞳」とも言われている。本当に素晴らしい眺め。

一切経山周辺の雲はどんどん引いて行き、周辺の景色がよく見えるようになり、日差しが当たり気温も上がってきた。登山開始を1時間ちょっと遅らせていれば、強風や寒さに苦労する事無く楽に登って簡単に五色沼を眺める事ができたのだが、まぁこの苦労も1つの経験として意義のあるものだった事にしよう。

強風で髪型変形

火口だけ見ると本当の富士山頂上のよう

一切経山の頂上から見たかったのは魔女の瞳の他にもう1つ、浄土平のシンボルである吾妻小富士。吾妻小富士はこういう形をしていたのかぁ、とよく分かる。上から見下ろす吾妻小富士は浄土平から見上げる眺めとは全く印象が違い、とても力強く迫力のある眺め。ちょっと日本離れしたようなダイナミックな眺め。

浄土平から登って来た道を途中まで下山し、酸ヶ平湿原や鎌池を周るハイキングコースに向かう道に入る。下山する正面には酸ヶ平湿原と鎌池の風景が広がる。生憎こちらはまだ雲に覆われている。この道は急な斜面に岩が沢山転がっているので、下山するには足を滑らせて転ばないように注意。と、目の前で一人転んだ。

酸ヶ平湿原と奥に鎌池

酸ヶ平湿原まで下りると周辺の雲は引き、青空が広がり陽が射して紅葉と緑が鮮やかな景色に。今年の6月に行った志賀高原の湿原もよかったが、紅葉で色づいた景色はやっぱり一味違う。だからと言って紅葉の時期だけに旅行に出る、という訳には行かないのである。

酸ヶ平湿原の沼地と後ろに一切経山

湿原に敷かれた細い木道を歩いて鎌池へ向かう。晴れて涼しくて最高に気持ちいい。観光客も少なく静かでのんびりと歩ける。ただこのハイキングコースの木道、幅が狭くすれ違い辛いので、観光客が多いと結構大変そう。その点は志賀高原なんかを見習って欲しいかなと。

木道を進んで鎌池をぐるっと周る。鎌池は名前の通り鎌の形をしているらしいが、木道から眺める限り普通の池という感じ。鎌池を過ぎた辺りで木道は終わり、土の地面の細道を下って浄土平駐車場に向かう。

道の途中で景色が開け、吾妻小富士を正面にに望む。紅葉した景色が素晴らしい。

ハイキングコースを抜け浄土平湿原を通って駐車場に戻る