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六度目の登山その3  お鉢巡り→下山

ご来光の後は影富士見物、という事で5:20から反時計回りにお鉢巡り開始。ご来光を見物した河口湖口山頂付近からだと、反時計回りの方が早く影富士のビューポイントに着く。お鉢巡りで見られる山頂の様子は、四度目・五度目の登山記に載せているので今回は割愛。

相変わらず股関節が痛く、ゆっくり歩いても登り道だと特に痛い。逆に下りだと結構楽。お鉢巡りの後は下山だから何とかなるかなと。明らかに運動不足のツケが回ってきたと思われ…小幅な歩幅で15分ほど歩き、岩場の後ろに影富士が見えてきた。しかし残念な事に大地の上には雲が広がり、影は雲の上に映っている。1年前と同じ状態。出来れば3年前のように大地に映る影富士を見たいと思っていた。3年前に初めて見た影富士に感動し、もう一度同じ影富士を、大地に映る雄大な影富士を見たい。

影富士全景を眺めることが出来る場所に着き、影富士や周辺の景色を眺めたり写真を撮ったりしているうちに、影富士に掛かる雲が左から右へ流れて次第に減っていくので、もしかしたら雲が全部流れるかも知れないと暫く待つ事に。

10分ほど待つと期待通り影上の雲は流れて消え、大地に映る影富士を見ることが出来た。影富士の周囲にはまだ雲が広がっていて、まるで雲が影富士を避けているようにも見える。何はともあれ、望んだ風景を見ることが出来て大満足。

三年前に使っていたカメラはレンズ画角が広角35mm相当だったため、影富士の全景を一枚の写真に収めることができず、2枚の写真をPCで合成して全景写真を掲載していた。今回は新調した広角24mm相当のカメラで撮影したので、端から端まで影富士全景を一枚の写真に収めることが出来た。

撮影者の下半身の影が

街がもの凄く小さい

影富士をバックに写真を撮ってもらった人と話をすると、何と初登山で御殿場口から徹夜登山で登頂したらしい。何てツワモノ。自分もまだまだだなぁ〜 でもとりあえず御殿場口登山はもういい。股関節が痛くなるから。

富士山測候所がある剣ヶ峰

剣ヶ峰から北を眺める

影富士の次は富士山測候所。三七七六の碑からの記念撮影の順番待ちの列に並ぶ。気温がだいぶ高くなってきたので並んでいる間に服を一枚脱ぐ。やはり今年は例年よりも富士山の気温が高い気がする。ほぼ同じ時間に測候所へ登った四度目・五度目の登山記の、三七七六の碑からの記念撮影の写真の服装と見比べてみると、四・五度目は長袖のシャツの上に一枚着ていたが、今回はシャツの上に重ね着は無く一番薄着。

記念撮影の順番待ち

三七七六の碑の前での記念撮影は、いつも後ろに並んでいる人に撮ってもらう流れになっていたが、今回は何処かの登山ツアーの添乗員がずっと撮影係りをやっていた。引率のツアー客が全員撮り終わるまでサービスしてくれている様子。自分もありがたく撮影をお願いする。方角的に朝一の撮影は少し逆光気味になってしまうのが惜しい。

測候所の裏手にある展望台からの眺めも素晴らしい。ご来光を眺めた時よりも雲がだいぶ引き、地上の風景も見渡すことが出来るように。西側にある遠くの南アルプス山脈まではっきり見える。おそらくこれまでの六度の登山の中で、最も雲が少なく眺望が効いている。

測候所展望台から眺める南側

測候所展望台から眺める西側

太陽の上昇と共に低くなっていく影富士

奥に連なる山脈は南アルプス

測候所が建つ剣ヶ峰の急勾配、馬の背を下りて富士宮口山頂へ向かう。馬の背から真下を見下ろすと、富士宮口五合目の建物や駐車場に停まる車、富士山スカイラインの曲がりくねった道が見える。五合目の標高が最も低い御殿場口から登ってきた自分には、富士宮口五合目がやたらと近くに見える。そして遠くを見渡せば沼津市の緩い弧を描く駿河湾の海岸線、さらに伊豆半島までの眺望。駿河湾や伊豆半島を眺めることが出来たのは今回が初めて。とにかく最高の眺め。

馬の背

富士宮口五合目が見える

駿河湾とその奥に伊豆半島

火口

富士宮口山頂

富士宮口登山道を見下ろす

富士宮口山頂は河口湖口山頂と比べて人が少なく落ち着いた雰囲気。富士宮口は登下山道が一緒で、五合目の駐車場があまり広くないなどの理由からか、ツアー登山客が少なくそんなに混雑しないのがメリット。登山距離は5kmと四大登山口の中で最も短く、山頂から富士山測候所までも一番近いので初心者にお勧めのコース。

頂上富士館

富士館の食堂

時間は7:30。登頂から休憩せずにお鉢巡りまでしていい加減疲れたしお腹も空いたので、富士宮口山頂にある「頂上富士館」という山荘で食事と休憩。頂上富士館の食堂も外と同様空いている。登山客の一番多い河口湖口山頂の山荘は人でごった返しているに違いない。ただしこちらのメニューは、カップラーメンにカップうどん、缶飲料が数品程度と少ない。とりあえずカップラーメン(800円!)と持参してきたウィダーインゼリーで腹を満たす。山荘がほとんど無い御殿場口下山中にトイレに行きたくなっては困るので、腹に入れるのは最低限。

朝ごはん

御殿場口山頂

この格好で下山!

頂上富士館からすぐ側にある御殿場口山頂へ移動。御殿場口は七合目から山頂まで登山道と下山道が一緒。4:00の登頂にくぐった山頂の鳥居の前へ戻ってきたのが8:00。下山開始前に閉館中の山荘の日陰に腰を降ろし10分ほど休憩。これから8.5kmの下山道を歩かなくてはならないと考えると気が重い。下山は顔にハンカチを巻いて砂塵と日焼け対策。特に自分の場合、唇の粘膜が弱いのか毎回唇が日焼けして、ひび割れて流血して痛い目にあっているので、口元の保護は必須。ちょっと怪しい格好だけど気にしない。砂塵・日焼け対策にマスクをしている人もいる。

下山開始

下山時は曇り希望

8:15下山開始。前日の登山時は登山者がほとんどいなかったのに、何故か下山時は人が結構いる。下から登って来る人は前日同様ほとんどいない。それにしても相変わらずの股関節の痛みと足の疲れで足元に力が入らず、ゴツゴツした岩場や階段などの段差を歩くのが結構辛い。体力的には意外と余裕があるのだが、足の関節と筋肉がついていってない感じ。年中運動不足なので仕方ない。むしろ鈍った身体で御殿場口を弾丸登山+お鉢巡りしているのだから、我ながら勢いで何でもやるヤツだなと感心する。

富士山の下の方には雲

七合五尺

日射しが強い、暑い。暑さには体力を著しく消耗させられる。富士山の下の方は雲で覆われている。あの雲がここまで上がってきてくれれば…下山時はずっと曇りだと嬉しいがそう都合良くはいかない。そして眠い。下山開始からあくびばかり出る。前日10:00に起床してからまもなく24時間。そして登山開始からほとんど歩きっぱなし。下山開始から1時間半ほどで七合五尺に到着し、外のベンチに腰掛けたら眠気はさらに増して立ち上がる気力が出ない。別の登山者がベンチに腰掛けテーブルに置いたリュックに頭を乗せて寝ているのを見て、自分も少し寝ちゃおう…という事で仮眠。そして暑さで眠りから目を覚ます。15分くらい寝ていただろうか、少しだけ頭がすっきり。足の疲れも少し和らいだ気がする。ここで2本目の栄養ドリンクを飲み下山再開。

七合目まで下りると登山道と下山道に分かれ、御殿場口下山道の醍醐味でもある「大砂走り」へ。大砂走りは砂礫が堆積した急勾配の坂道。下山道に入って少しすると「宝永火口コース」という登山ルートとの分岐点があり、ほとんどの下山者は宝永火口コースへ入っていく。そのコースは富士宮口五合目へ続く道。御殿場口山頂からの下山者のほとんどは、御殿場口経由で宝永火口コースを通り富士宮口へ戻る人だった。御殿場口五合目へ戻る下山者はここで人の流れに釣られて宝永火口コースへ行かないよう注意が必要。

下山道へ入る

やっと雲の中

大砂走りに入って最初は砂礫の堆積量はさほど多くなく勾配も緩いが、宝永火口コースとの分岐点から先は砂礫の堆積量が多く急勾配になり、大股で勢いよく駆け下りることができる。ここから今回初装備の登山用スパッツが大活躍。前回の須走口登山でも下山道に「砂走り」があり、勢いつけて駆け下りたらあっという間に靴の中に大量の小石が入り込んで足が痛かったが、今回はスパッツのおかげでなかなか靴の中に小石が入らず、軽快に駆け下りることが出来た。ただ、調子に乗って勢い余って転ばないように注意。自分のすぐ後ろにいた下山者が、勢いつけすぎ豪快にすっ転んだ。

11:00に大砂走りの途中にある気象庁避難小屋に到着。小屋は一般人の利用は不可で閉められている。ここで少し休憩。1時間半ほど大砂走りを駆け下りて来て、スパッツをしていてもさすがに靴の中に小石が溜まってきたので、靴を脱いで石を出す。下りて来た大砂走りと山頂を見上げて、どれだけ急勾配なのかを改めて実感。こんな急勾配を登るのはまず無理。大砂走りは下山にしか使えない道。

気象庁避難小屋

急勾配の大砂走りと山頂を見上げる

気象庁避難小屋の前に「富士山 須山口二合八尺」と書かれた標識がある。御殿場口五合目は標高からすれば二合目に相当する高さなのに、何故「五合目」と付けたのだろう。登山口の出発点は「五合目」でなければならない決まりでもあるのだろうか。

気象庁避難小屋から少し下りると、登山道と下山道が平行して続く。そこから勾配は緩くなり砂礫も次第に減っていき、足への負担も大きくなりペースもだんだん落ちていく。登りも下りも最後のあと少しが辛い。はぁ、キンキンに冷えた飲み物が欲しい。五合目手前の大石茶屋はまだかまだかと思いながら道の先を眺めながら歩いていると、遠くに白くて横長な屋根のようなものが見えてくる。きっと大石茶屋の屋根だ!と思い進んでいくと、その正体は大石茶屋の屋根ではなく、五合目の大型車用駐車場にズラリと駐車しているバスだった。何であんなに沢山?!乗用車の駐車場も満車になっているのが見える。まさか御殿場口からの登山者のものとは思えないし、周辺でイベントか何かやっているのだろうか。しかしそんなことはもうどうでもいい。とにかく冷たい飲み物が欲しいっ!

左が大石茶屋、右奥に見えるのが五合目駐車場

日本中が見えましたよ

11:40やっとの思いで大石茶屋に到着。とにかくまず冷たい飲み物。ベンチに荷物を置き真っ先に自動販売機へ行きコーラを買い、喉を鳴らして勢いよく流し込む。クゥーッ、冷え具合と炭酸の刺激が最高にウマイ。とても生き返った気分。と、小学校低学年くらいの子供の集団が、五合目からぞくぞくと大石茶屋までやってきた。まさか全員で山頂まで登山するなんて事はないだろうし、何処へ行くのだろう。まぁ今の自分にはどうでもいい。とにかく疲れたのでのんびり20分ほど休憩。そして五合目へ。足の疲労は限界で五合目までの数分間の道のりが辛い。

12:15御殿場口五合目帰着。前日の16:40に登山開始してから19時間35分。本当に長い道のりだった。もう一歩も歩きたくない。しかし自宅まで車を運転しなくてはならない。気が滅入る。体と荷物の砂を払い車に乗り込む。車内で仮眠をとろうかと思ったが眠れそうにないので車を出す。しかし富士山を下りてすぐに眠気。やはり少し寝ないと運転は無理。速やかに最寄のコンビニに車を停め仮眠。1時間ほどの睡眠から目を覚まし、そして無事帰宅。その後3日間は足の激しい筋肉痛に苦しめられるのであった。