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七度目の登山 2011年7月14日〜7月15日

昨年に御殿場口からの登山をして富士山四大登山口を制覇。ここまで来たら流れに任せて今年は0号目から登山する富士吉田口に挑戦しようかと一瞬思ったが、標高860mからの登山で片道18kmもあり、万年運動不足の自分にはあまりにも無謀であると我に返る。にわか登山者には御殿場口が限界だと判断。

という事で、富士吉田口登山の代わりに、まだ歩いた事の無い宝永火口コースを通る登山をする事に。宝永火口コースは、富士山最後の噴火口の宝永火口を通る登山コースで、富士宮口の六合目と御殿場口の六合目を繋いでいる。今回の登山は富士宮口五合目から山頂まで登り、御殿場口から下山して六合目から宝永火口コースに入り、富士宮口五合目へ戻るというルートで登山。

七度目の登山その1  富士宮口登山→山頂→お鉢巡り

年々登山者が増加しているように思える富士山。出来るだけ登山者が少ない時期に登りたかったので、世間が夏休みになる前の7月前半に登ろうと計画。しかし登山予定だった7月の二週目に風邪を引いてしまう。そして富士宮口五合目の交通規制が始まる前日の、7月14日に病み上がりの状態で登山決行。相変わらずの運動不足に加え、病み上がりで身体が本調子では無いので少々不安ではあったが、富士宮口登山道は四大登山口の中で最も登山距離の短いコースだし、昨年は御殿場口登山を経験しているので何とかなるだろうと楽観的だった。後で辛い思いをする事になるとは考えもせずに…

富士宮口五合目に20:20着。混雑時は駐車場が満車になり道路に路肩駐車の長い列ができるが、この日はそんなことは無く登山者は多くない様子。やはり7月前半に来て正解だったようだ。自分はどうも高山病になり易い体質なので、暫く五合目に留まり高所の低酸素に慣らしたほうがいいと思い、車の中で30分ほど仮眠をとろうと横になるが全く眠れず。そして21:10登山開始。真っ暗な登山道をライトを照らして進む。登山客の姿はほとんど無く静か。

登山道から五合目を見下ろす

真っ暗な登山道

富士宮口五合目からの登山は実に10年振り。10年前の23歳の時に富士宮口から登ったのが初めての富士登山だった。10年前の記憶では体力的にはさほどキツイものではなく(八合目から高山病に苦しめられたが…)、特に六合目までは登山道というほどのものではなく楽勝だった気がしたが、10年経った今ではそんな事はなかった。登山道は五合目を出発してからいきなりゴツゴツした地面とそれなりの勾配。思っていたよりも険しい。登山開始早々から10年という年齢のギャップを思い知らされ少し凹む。

六合目

五合目から20分弱で六合目に到着。すでに少し疲れている、10年前は全然余裕だったのに…加齢と共に起こる体力の低下か、単なる運動不足か、それとも病み上がりによるものか。まだ六合目だというのに少し焦り。体力の回復と高山病にならないためにも、各合目でしっかり休憩することが大事。毎回持参している金剛杖にまだ焼印を捺すスペースが残っていたので、六合目で捺してもらう。

この登山記を制作している時に10年前の富士宮口の登山記と見比べたところ、富士宮口六合目が10年前は「新六合目」だったの対し、現在はただの「六合目」になっている事に気付く。年月が経って新しくなくなったので「新」を取り除いたということだろうか。

満月

空には月が出ていて眩しいくらいに明るい。月がこんなにも明るいと感じたのは初めて。登山道にはくっきりと影が出来ていて、暗闇に目が慣れたこともありライトを点けなくとも足元が見える。六合目からはライトを消して月明かりのみで登山。そして22:35新七合目着。早くも頭が痛くなってきた。標高の高い富士宮口五合目からの登山では高山病は避けられないのだろうか。これ以上悪化しないように長めの休憩を取るが、ほとんど痛みは引かず。仕方ないので先へ進む。新七合目辺りから登山者の姿が多くなってきた。皆ご来光の時間に合わせて登っていると思われ。あまり休憩に時間を取り過ぎるとご来光に間に合わなくなってしまう。

新七合目

元祖七合目

八合目

予定より少し遅れて23:45元祖七合目着。休憩でじっとしていると少し寒い。風がほとんど出ていないのが幸い。そして0:45八合目着。お腹が空いたので、カロリーメイトとウィダーインゼリーでエネルギーチャージ。高山病による頭痛が結構辛くなってきた。しゃがんで呼吸が乱れると余計に痛くなる。八合目でも長めの休憩を取るが、頭痛が和らぐ見込みは無し。仕方ないので先へ進む。

2:00表口九合目に到着。ここまで来ると防寒対策の厚着をしていても寒い。手足の指先がかじかんで少ししびれている。自分が休憩している隣では、若者数人のグループの1人が高山病で頭痛と吐き気を訴え、地面にしゃがみ込んでうごめき苦しんでいた。仲間の呼びかけにも応えられないくらいの状態で、やがて仲間に抱えられグループ全員が下山して行った。高山病を甘く見てはいけない。そして自分も高山病の症状がかなり悪化していた。山荘で何か食べ物を注文して休憩しようと思ったが、頭痛に加え気分も悪くなってきたので有料トイレの個室に入る。

表口九合目

頭痛と吐き気に苦しめられ身動きが取れなくなってしまった。富士登山七度目にして最大のピンチ…やはり病み上がりというのがいけなかったのだろうか。暫くトイレにこもるも頭痛も吐き気も治まらない。このままだとご来光に間に合わなくなってしまう。いやそれどころか登頂が危うい情況。ここまで来て登山を断念せざるを得ないのか。どうするべきか頭の中を考えが交錯するも、やはり自分には途中で引き返すなどあり得ない行為。どうしてもご来光に間に合わせたい。何が何でも気合で登るしかない!!表口九合目のトイレに40分ほどこもった末、意を決してトイレを出て登山再開したのが3:20。

九合五勺

薄っすらと朝焼け

ご来光までは1時間半を切っていた。体調を考えると時間までに登頂できるか微妙な状態。弱った体には他の登山客が照らすライトや月明かりが不自然なほどに眩しく不快に感じる。ただ、寒さが頭痛と吐き気を少し紛らわせてくれるようで、思った以上に足は動く。そして3:45に九合五勺着。相変わらず頭痛はするが吐き気は引いた。日が昇る方角には朝焼けが見え始める。

山頂まであともう少し。途中途中で足を止めながらも、ご来光に間に合うよう諦めずに山頂を目指す。朝焼けは次第に広く明るくなっていき、周囲の風景もはっきり見えるように。やがて富士宮口山頂の鳥居が見え始め、そして4:35登頂。五合目からの登山時間は約7時間半。表口九合目でトイレにこもり予定より時間が掛かってしまったが、ギリギリご来光前に登頂する事が出来た。

まだ明るい月

朝焼けが広がる

山頂の鳥居

富士宮口山頂

浅間大社奥宮

富士宮口山頂は思っていた以上に登山者の姿が少なく、数えるほどしかいない。やはり夏休み前だからだろうか。宿泊と食事ができる頂上富士館はシャッターが下りていて、まだ食堂の営業はしていない様子。最も登山客の多い河口湖口山頂の食堂なら日の出前でも営業していると思われ。

本当は剣ヶ峰の上にある富士山測候所まで登り、3776mの地からご来光を眺めたかったのだが、測候所へ移動する間に太陽が出てきそうなので諦め、富士宮口山頂にある岩場の上でご来光を待つ。そして4:45に富士山頂南東の岩陰から太陽が姿を現す。昨年の富士登山でもご来光前に富士山測候所へ行きそびれているので、次回こそは富士山測候所からご来光を眺めようと強く思った。

富士宮口山頂と後ろに剣ヶ峰

ご来光を眺めた岩場

ご来光を眺めたら時計回りにお鉢巡り開始。時計回りで火口を一周するのは、初めてお鉢巡りをした三度目の富士登山以来の6年ぶり。その時は悪天候による視界不良で景色が全く見えなかったので、晴天の下での時計回りのお鉢巡りは初めて。

馬の背

馬の背の途中から眺める影富士

時計回りの場合、富士山測候所のある剣ヶ峰の急勾配「馬の背」を登らなければならない。地面は砂礫が積もり靴が潜って非常に滑りやすいので、登るのも下るのも注意が必要。馬の背からは雲海に映る影富士が見えた。

ご来光の後はいつも混雑している富士山測候所だが、この日は並ばずに三七七六の碑で記念写真を撮ることが出来た。やはり夏休み前は登山客が少ない。測候所の裏手にある展望台からも影富士を見ることが出来るが、馬の背から眺めた時と同様に影に雲が掛かってしまっている。昨年と比べて見渡す景色全体的にうす雲が掛かっていて、景色が霞んでいる。

三七七六の碑

測候所を後にして時計回りに剣ヶ峰を下っていく。馬の背とは反対側の道には斜面に残る分厚い雪。お鉢巡りでこんなにまとまった残雪を見るのは初めて。登山したのが7月前半だからか、それとも例年よりも山頂の気温が低いのだろうか。いずれにせよ7月にこんなまとまった雪を見られる場所は、富士山以外にそうないと思う。

富士宮口山頂から1/3周ほどまわったところで、影富士がもっとも綺麗に見える場所に到着。影富士の周囲の雲は退いて、大地にくっきり映る理想の影富士を見ることが出来た。個人的にはご来光よりも、綺麗な影富士を見られた方が達成感を感じる。

今年も素晴らしい影富士を見ることができた

相変わらず雲は多いが、富士山頂ならではの雄大な景色を一望。富士登山七度目ともなるとさすがに大きな感動は無いが、それでもやはり富士山頂からの景色は何度見ても素晴らしい。それにしても、初登山をした10年前には富士山に七回も登る事になるとは想像すらしなかった。目標十回?!

火口壁の残雪

雪解け水?

金明水

山頂北側まで進んだところで分かれ道があり、火口内側へ向かう道の先に石碑が見えたので、そちらの方へ進む。以前から石碑があることは知っていたが、お鉢巡りの道から外れるのが面倒でこれまで行ったことは無かった。石碑には「金明水」と達筆な字体で刻まれている。石碑の手前には木枠の小さな井戸のようなものがり蓋がされていて、そこに「神徳水」と書かれた石板が立て掛けられている。そして一番手前には、割と新しい感じの石造りの賽銭箱があるが、何故か蓋も何も無い。ここは昔湧き水が出ていた場所。富士山頂で湧き水が出ていた所はもう1つ、「銀明水」という場所がある(須走口登山記参照)。

金明水から道なりに進んでお鉢巡りの道と合流し、さらに時計回りに進んで河口湖口山頂を目指す。相変わらず高山病で頭は痛い。そして日射しが強く暑いっ!

金明水を見下ろす

北東側は晴れて山中湖が見える

6:40河口湖口山頂に到着。こちらも思っていた以上に人が少ない。混雑時は山荘が数軒並ぶ通りが登山客でごった返しているが、この日は人通りも少なく落ち着いている。混雑している光景に慣れてしまっているからか、少し物足りなさすら感じる。食事はお鉢巡りを一周して富士宮口に戻ってからするつもりだったが、かなり空腹になっていたので河口湖口山頂の食堂に入る。

河口湖口山頂

河口湖口山頂

2年前にも利用した食堂「東京屋」で昼食と休憩。2年前にも食べた900円のラーメンを注文し、持参してきたウィダーインゼリーとポカリスエットと合わせて昼食。夏休み期間中はいつも混雑している東京屋だが、この日はガラガラ。やはり富士登山をするなら7月前半の方が空いていていいようだ。混雑していると長居しずらいが、空いているので食後も暫く休憩。

東京屋で昼食

900円のラーメン

山頂に自動販売機!

十分休憩したところで富士宮口山頂に向けて出発。と、河口湖口山頂で缶ジュースの自動販売機を発見。こんなの前からあったっけ?缶(小)とペットボトル(小)が400円、500mlのペットボトルが500円。自販機と言えど富士山価格。これは日本一標高の高い場所にある自動販売機という事になる。しかし富士山頂にわざわざ設置する必要があるのだろうか…ちょっと疑問に思った。