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七度目の登山その2  御殿場口下山→宝永火口コース→富士宮口五合目

今回の登山の目的は未踏である宝永火口コースを歩く事。五合目から山頂までの登山は富士宮口を利用したが、下山は御殿場口を途中まで下りて、宝永火口コースを通って富士宮口五合目まで戻る。登りと下りで違う登山口を歩くのも初めてとなる。登山七度目にしても、まだまだ未見未踏がある富士山。

まだまだ続くお鉢巡り

お鉢巡りを続けて山頂東側まで進むと、宝永火口コースにある宝永山が見えてくる。宝永山は宝永4年(1707年)の宝永大噴火で誕生した、富士山最大の側火山。第一火口から第三火口までの3つの火口が連なっている。

宝永山が見える

宝永山アップ

山頂南東側には石造りの小屋がある。以前から存在は知っていたが、金明水と同じく面倒でこれまでは素通りしていた。これは、東京と八丈島を結ぶ無線中継所として1944年に開設された富士無線中継所。中継所の手前には2つの碑が建っている。向かって右側に「富士無線中継所記念碑」、左側に「栗山國雄君殉職碑」。栗山國雄という人物は、超短波多重通信電解強度試験(何のことかさっぱり)のために山頂に滞在している間に、高山病で亡くなった人らしい。…って、高山病で死亡する事あるの?!

富士無線中継所

富士無線中継所にある2つの碑

富士無線中継所の裏手からは富士山の火口を一望出来る。柵などは無くあまり身を乗り出すと火口へ転落る恐れもあり、ギリギリまで伸ばす足がすくむ。そこから動画を撮ってみた。富士山で動画を撮ってHPに掲載するのはこれが初めて。今思えば何故もっと前から撮らなかったのだろうと思う。

富士無線中継所の側からもう1つ動画撮影。最初に富士山測候所のある剣ヶ峰、そして赤い屋根は富士宮口山頂にある浅間大社奥宮。そのすぐ隣に食堂の山頂富士館。富士宮口山頂のすぐ下に見える鳥居と屋根がある場所が御殿場口山頂。やはり動画だと写真よりも山頂の様子がよく分かる。富士山測候所からの風景や影富士の動画も撮っておけばよかった

富士無線中継所のすぐ側にある御殿場口山頂を通り越し、富士宮口山頂まで戻ってお鉢巡り完了。少し休憩してから御殿場口山頂まで戻り、8:20下山開始。御殿場口は七合目から山頂までは登山道と下山道が一緒。昨年も御殿場口から下山したので、御殿場口登山道の風景は記憶に新しい。まぁどの登山道も似たような風景ではあるが。ゴツゴツした赤茶色の景色にもいいかげん飽き、気分的にダルい。今年も御殿場口を登下山する人の姿はほとんど見当たらない。

御殿場口山頂

宝永火口へ向かう

山肌の斜面を見上げれば沢山の大きな岩があり、今にも自分に向かって落ちてきそうに見える。大きな地震があれば本当に落石する可能性は高い。実際にこれまで富士山の落石事故は何度もあり、中には12人が死亡する落石事故も起きている。富士登山をする時は足元だけでなく、山肌の状態にも注意しなければならない。と言っても、実際はそこまで注意しながら歩くのは難しい。夜間登山は何も見えないし…

山肌にある大量の岩

大智禅師の碑

御殿場口山頂から下山を始めて40分ほどしたところで、何やら文字が沢山刻まれた平たい岩を発見。昨年は登りは夜間で、下りはクタクタだったからか岩の存在に気付かなかった。大智禅師という僧の禅語らしい。

「山魏然独露白雲間 雪気誰人不覚寒 八面都無向背処 従空突出人看」 と、縦書きで刻まれている。

この碑の禅語について調べてみたが、小難しいので説明は省略。

9:15七合九勺の赤岩八合館に到着。まだ余力があるので休憩はせず下山続行。それにしても、毎度の事ながら陽が昇ってからの下山は暑さが辛い。強い日射しが否応無しに照りつける。下山の時は晴れて周囲の風景がよく見えるよりも、曇って日射しを遮ってくれた方がいい。ただ、今回に限っては初めての宝永火口コースを歩くので、快晴の下で宝永山や火口の様子をしっかりと見物したい。複雑な気分だ。そんな暑さの中を走って登下山するタンクトップに短パン姿の人をちょくちょく見かける。毎年恒例の富士山マラソンに備え体を鍛えている人達らしい。富士山をマラソンで駆け登るなんて、自分には絶対無理…

七合九勺 赤岩八合館

トミオカ シチヤ??

七合九勺から少し下ったところで、カタカナの文字が刻まれた岩を発見。これも昨年は気付かなかった。「トミオカ シチヤ」と刻まれているように見える。まさか昔ここに質屋があっとたは思えないし、宣伝のつもりだろうか?誰かが無断で彫ったものなら、撤去されているだろうし。真相が気になる。

山頂を見上げる

宝永山周辺に雲が増えてきた

9:50七合五尺の須走館に到着。ここで少し休憩し、金剛杖に最後の焼印を捺してもらう。これで金剛杖はもう焼印を捺す場所が無くなった。満足満足。後から気付いた事だが、須走館の建物が昨年とは別物になっていた。昨年に建てかえられたらしい。

七合五尺 須走館

須走館で焼印

大砂走り

七合目から下は登山道と下山道が分かれていて、下山道へ入る。程なくして御殿場口下山道の名物、大砂走りに突入。砂礫が堆積した坂道で、大股で走って一気に下りられる。ただ、自分の前を人が歩くと砂煙が舞うので、前の人と距離を置かないと砂まみれになってしまう。ここでもタンクトップ姿の人が走っていて、自分を追い越して走り去っていく。

下山道に入れば直ぐに宝永火口コースの分岐点があると思っていたが、なかなか分岐点にたどり着かず、気付かず通り過ぎたのではないかという不安が出てくる。行き過ぎて来た道を戻らなければならないなんて、考えただけでもしんどい。幸いにも宝永山が間近に見えて来たところで、宝永火口コースとの分岐点である下り六号に到着。通り過ぎてなくてよかった…宝永山へ続く右の道へ入る。前日夜から登り始めて早朝に登頂し、お鉢巡りをして六合目まで下山。すでに富士登山終盤ではあるが、今回の富士登山のハイライトはここからの宝永火口コース。富士登山七度目にして初の登山コースに気分が上がる。

目の前に宝永山

御殿場口下山道と宝永火口コースの分岐点

宝永山へ続く道の先には人影無し。富士宮口六合目と御殿場口六合目を結ぶ、ある意味微妙なコースだからだろうか。登山客で混雑する時期は、富士宮口ルートの下山時の混雑を避けるため、宝永火口コースを迂回路として利用する登山者もいる。富士宮口は登山道と下山道が一緒で、混雑時は下山者が登山者を優先して道を譲らなくてはならないので、下山にかなり時間が掛かってしまうらしい。

この広い谷間が宝永火口

宝永火口コースを宝永山へ向けて歩いていくと、向かって右側に宝永火口が見えてくる。火口と言っても富士山頂のように火口壁でぐるっと囲まれた穴ではなく、富士山の斜面と宝永山の間に出来た谷間のような感じ。実際は宝永噴火で富士山の山肌に裂け目が出来て、宝永山が出来たのだけど。そして宝永火口の火口壁である富士山の山肌がもの凄い光景になっていた。

右の動画は、宝永山→宝永火口→火口壁→富士山頂を順に撮ったもの。

富士山の山肌は大きくえぐられ、急傾斜の絶壁になっている。これが宝永火口の火口壁。火口壁の上部は複雑な岩脈ができている。とにかく大きく、本当に凄い迫力のある眺め。富士山の風景にこんな一面があるとは今まで知らなかった。やっぱり富士山は凄い。宝永火口は三つの火口から出来ていて、この富士山の山肌を大きくえぐって出来た火口一帯が宝永第一火口。

宝永第一火口の火口壁

火口壁上部の岩脈

さらに道なりに進んでいくと、今度は「宝永山馬の背」という分岐点がある。宝永山の山頂へ向かう道と、富士宮口六合目へ向かう道に分かれている。もちろん宝永山山頂へ向けて分岐点を直進。

宝永山馬の背の分岐点

宝永山山頂

宝永山馬の背の分岐点から10分ほど歩いて宝永山山頂に到着。山頂には方角を示すモニュメントと、その側に小ぶりな積み石があるだけ。周囲の景色は雲に覆われよく見えないが、迫力ある火口壁が目の前にある。

宝永山山頂のモニュメント

宝永山山頂から火口壁を眺める

宝永山山頂から馬の背分岐点まで戻ろうとしたところで、第一火口を通り富士宮口六合目へと続く道へ下りられる細道があったので、そちらの道を通って第一火口へ下りる。第一火口から見上げる火口壁も迫力満点。火口壁にできた岩脈は、薬師如来になぞらえて十二薬師岩脈群と呼ばれているらしい。

第一火口を通る登山道

十二薬師岩脈群

第一火口には無数の岩が転がって、登山道には「落石注意」と書かれた標識がある。確かに急斜面の火口壁からいつ落石があってもおかしくない。と思った正にその時、岩脈から砂煙を上げて岩が転げ落ちる!動画動画っ!…間に合わなかった。登山道までは落ちてこなかったが、頻繁に落石はあるようす。本当に落石注意な道だ。

第一火口の中心にある「への字」

宝永第一火口の一番下まで下りて、一際目立つ「への字」の前へ。宝永山から見下ろした時は深い裂け目のように見えたが、実際は段差ができているだけだった。ここから噴火したのだろうか。

左が富士山頂側、右が宝永山

宝永山からだいぶ離れたところから第一火口を見渡すと、富士山の山肌がえぐられてできた火口壁と宝永山が、第一火口をぐるっと囲っているのがよく分かる。他の登山道では見られない、宝永火口コースならではのパノラマ風景。

宝永山

宝永第二火口

第一火口を通る道を富士宮口へ向けて歩いて行くと、宝永第二火口が見えてくる。こちらも見た目は山の谷間という感じ。第三火口は第二火口のさらに奥側にあり、宝永火口コースからは見えない。そして宝永第一火口縁という分岐点に到着。分岐点を右に行けば富士宮六合目。左に行けば御殿庭というハイキングコースが続いている。御殿庭の方へ進めば宝永第三火口を見ることが出来るが、疲れてそんな気力は残っていないので今回はパス。富士宮口六合目へ向かう。

富士山には四大登山口の他に、五合目までの道路が出来る以前に登山道として使用されていた山道や、山肌を周遊するハイキングコースなど、沢山の道が存在している。それらを全て制覇する気はさすがに無いが、機会があれば宝永第三火口が見られる御殿庭コースを歩いてみたいと思う。

富士宮口六合目が見えてきた

宝永第一火口縁の分岐点から5分ほど歩くと、富士宮口六合目の山荘が見えてくる。やっとここまで戻ってきたか、とかなりお疲れモード。本当は五合目に着いてから炭酸ジュースをがぶ飲みして爽快気分を味わうつもりだったが、手持ちのペットボトルのポカリスエットとお茶はヌルくて飲めたもんじゃなく、我慢できずに六合目の山荘でラムネを飲んでしまった。あぁ、冷たくておいしい。暑さと疲労でクタクタの体に炭酸が効く。やっぱり我慢はよくない。

ラムネです

そして12:20、登山開始から約15時間で富士宮口五合目に帰着。登山道入口には「サー・ラザフォード・オールコック富士登山記念碑」というものがある。こんなの初めて見た。10年前には無かった気がする。1860年に外国人として初めて富士山表口登山道(富士宮口)から登山した、初代在日英国公使らしい。まぁそんな事はどうでもいい、五合目山荘前の自販機でジュースを買ってがぶ飲みっ。暑くてたまらんっ!

登山道入口にある記念碑

五合目から山頂を見上げる

七度目の富士登山も無事終えることが出来た。が、病み上がりで体が十分なコンディションではなかったため、登山中に九合目で高山病にかかり激しい頭痛と吐き気に襲われ、今までで最大のピンチを経験するハメになってしまった。やはり富士山は万全な体調で望むべきだと痛感。高所の低酸素状態をナメてはいけない。ともあれ、今回が初めての宝永火口コースは本当に素晴らしかった。次回の富士登山も今回と同じルートで、宝永火口コースを楽しみたいと思った。そして次回こそは、富士山測候所からご来光を眺めたい。