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その4  3日目

 

道の駅 生月大橋

(みちのえき いきつきおおはし:平戸市生月町)

5:00に目を覚ますと外は小雨。3日目の朝は曇りがちながらも日の出が見られるのではないかと少し期待していたのだが、やはり無理だった。2度寝して再び目が覚めたのが6:30頃。雨は止んでいたが濃霧で辺りは真っ白。仕方ないのでもう一度寝て今度は8:00前に目が覚めると、近くの景色は見渡せる程度に視界が回復していた。車内でパンとコーヒーで朝食を済ませ、車を降りて生月大橋が見える海岸堤防へ。

海岸堤防から眺める生月大橋

この階段を下りた岩場で転倒した

道の駅 生月大橋の海岸堤防にある、海岸の岩場へ下りる階段。2010年10月にこの階段を下りたところで足を滑らせ転倒してしまい、左手薬指を骨折。多めに見て1ヵ月の車中泊旅行を予定していたのが11日目に怪我をしてしまい、予定の半分も観光できずに旅を中断せざるを得なくなってしまった(その半年後に執念の旅行再開を果たした)。怪我は旅行以外のさまざまな事にも影響を与える結果となり、少なからず人生を狂わされてしまった。なので生月大橋が目の前に見えるこの場所は諸悪の根源であり、あまり思い出したくない場所となってしまった。しかし時間の流れと共に気持ちも変化し、もう一度訪れ過去を清算したいと思うようになった。そして今回再訪を果たしたのだが、転倒した岩場は満ち潮で海水に浸かっていた。岩場の一歩手前まで階段を下りてみようとしたがためらわれ、結局一歩も階段を下りず。でもここまで来ただけでも十分に気が済んだので、肩の荷が下りたような胸のつかえが取れたような、とにかく頭の片隅に居座っていたモヤモヤが取れてすっきりした。本当の意味で今回の旅の目的はここへ来ることだったのかもしれない。

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生月島西岸沿いが通行止め

生月島南東端にある道の駅から北端にある大バエ灯台へ向かう。行きは西岸沿いの道路を走り、帰りは東岸沿いを走り島を一周するつもりだったのだが、道の駅から西岸沿いの道路に入って直ぐに通行止めの看板が。崖崩れで復旧工事との事。前日の大雨の影響と思われ。この先の道路から特徴的な断崖風景が見られるのだが、この天気では折角の絶景も冴えないだろうと諦めもつく。道の駅まで戻り東岸沿いの道路に入る。

東岸沿いの道路に入って直ぐに、住宅の密集する後ろにそびえる観音像に目が留まる。気になったので広い路肩に車を停め、住宅地の細道を歩いて観音像がある方へ適当に歩く。そして辿り着いたのが高台の上に建つ生月観音。高台からは眼下に家々の瓦屋根が並びその先に漁港があり、生月大橋と対岸の平戸島まで見渡せる眺め。晴れていれば絵になる風景だったに違いない。天気予報では曇りのち晴れとなっているのだから、なんとか大バエ灯台に着くまでには晴れてくれっ!と、切実に願いつつ北へと向かう。

生月観音

生月観音からの眺め

 

東岸沿いの道路を数キロ北上し、西岸沿いの道路と合流して少し進んだところに、絶景スポットの塩俵の断崖(しおだわらのだんがい)がある。相変わらずの空模様で冴えない眺めだが、断崖をよく見てみると柱がいくつも立っているような特徴的な岩。柱状節理(ちゅうじょうせつり)というもので、溶岩台地の上に玄武岩が重なり、垂直方向に亀裂が入って多角形の断面ができ柱のように見える…というものらしい。

柱状節理

塩俵の断崖

大バエ灯台

大バエ灯台

(おおばえとうだい:平戸市生月町)

南北に細長い生月島を縦断するように、南東端の道の駅から北端まで約12km走って大バエ灯台駐車場に到着。駐車場から遊歩道を歩いていくと景色が開けたところに出て、目の前に大バエ灯台が建っている。灯台と言っても小ぶりで円柱状の質素なもの。外階段で上部に上がって周囲の景色を眺望できる。

灯台は約100mの断崖の上に建っていて、360°の大パノラマを眺望!のはずなのだが、残念ながら曇り空のままで視界も良くなく映えない眺め。東側に薄っすらと島が見え、北〜西にかけては灰色に霞んだ水平線が続くだけで、南に生月島の陸地が見られる。晴れていればかなり気持ちのいい場所だったに違いない。まぁ前日の雨を思えばまだ救いのある天気だ、そう思うことにした。

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大バエ灯台観光後は、来た道を引き返し生月大橋を渡って平戸島へ再び入り、映画「あなたへ」のロケ地のひとつである薄香漁港へ。

薄香漁港

(うすかぎょこう:平戸市薄香)

平戸観光交流センターから3kmほどの場所にある薄香漁港。観光客用の駐車場として開放されている漁協の前に車を停め、「あなたへ」ロケ地散策開始。漁協から港のガードレール沿いに歩いていくと、劇中では郵便局だった薄香公民館が。「あなたへ」は、健さん演じる刑務官が亡き妻が遺した局留めの手紙を受け取りに、富山から妻の故郷の薄香まで自家製キャンピングカーで旅をするというお話。

漁港を歩き…

公民館で横道に入る

古い家々が並ぶ通り

奥へ奥へと進む

公民館で横道に入り、古い木造家屋が並ぶ通りを進む。静かで人の姿も無く、時の流れに取り残されたような感覚に陥りそうな場所。そんな細道を奥へ奥へと進んでいくと、古い字体で「冨永写真館」と書かれた看板を掲げる建物に辿り着く。ここは劇中で刑務官の妻の若い頃の写真が展示されている写真館。扉の横にあるショーケースに複数の写真が展示されていたが、どれがそれなのか覚えていなかった…のだが、実はその写真は現在展示されていないらしい。ここは映画のポスターにもなった場所。ポスターの構図を真似て写真を撮ってみたが、ちょっと違っていた。

映画のポスター

「写真館」と読めない…

冨永写真館

写真館のショーケース

ちょっと違うなぁ

この写真館も郵便局と同じく、ロケ撮影のために外観を写真館に改装したもの。元は民家なのだが撮影後も写真館の構えを残してあるので、ロケ地巡りをする観光客にはありがたい。ところで、高倉健主演映画のロケ地巡りといえば、2004年に北海道旅行をしたときに映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地へ立ち寄っている。そこでは撮影のために無人駅に建てられた駅舎のセットがそのまま待合室として使われていた。思い返せば「鉄道員」を観て高倉健の表情の演技力に魅了され、「幸福の黄色いハンカチ」や「ホタル」など高倉健主演の映画をレンタルして観るようになった。「幸福の黄色いハンカチ」のロケ地へも行ってみたいが、広島から北海道夕張市へ行くのはちょっと遠いなぁ…

冨永写真館から公民館まで戻り再び港沿いの道を進んでいくと、劇中で食堂だった民家がある。ネット上の情報では、撮影後ものれんとメニューサンプルのショーケースが残されていたのだが、上映から3年近く経っているからかそれらは撤去されていた。残念… 入り江になった漁港を囲むように続く道をさらに進んでいくと、係留されている漁船の中に劇中で健さんが乗船した「そよかぜ」を発見。至って普通の漁船だ。この漁船で沖に出て妻の遺灰を海に撒くシーンがある。

劇中で食堂だった家

漁船そよかぜ

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漁港をぐるっと周って漁協の対岸あたりまで来ると薄香港フェリー待合所があり、「あなたへ」に関する写真等が展示されているパネル展示会場となっている。健さんの死去に伴い記帳所にもなっていた。

薄香港フェリー待合所

特大イラストパネルと食堂の看板

食堂ののれん

展示会場に入ると観光客らしき人が数人。薄香に着いてから初めてまとまった人の姿を見た。映画上映当時は薄香に多くの観光客が訪れたらしいが、上映から3年近く経つとさすがに訪れる人も少ないよう。展示会場には写真等が壁に貼られていて、室内の広さに対して展示物は少なめ。食堂の看板とのれんがここに展示されていた。そして高倉健と妻役の田中裕子の特大パネル。何故等身大ではなく三頭身…?まぁ、せっかくなので記念撮影。小道具や衣装などが展示されていれば嬉しかったのだが、平戸観光交流センターと同じく物足りない感は否めない。

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展示会場から外に出ると、空はすっかり晴れていた。1時間半ほど前までいた大バエ灯台での空模様が嘘のようだ。日差しが出ると急に暑くなる。一瞬、もう一度大バエ灯台へ行って快晴の下で観光し直そうかと考えたが、一度行った場所へ約30km運転して戻る気にはなれずヤメ。平戸最後の観光、平戸城へ向かう。

平戸城

(ひらどじょう:平戸市岩の上町)

平戸城内を軽く散歩してから入館料510円を払って天守閣へ。残念ながら現存天守ではなく模擬天守で、建物内は資料館。基本歴史にも資料館のたぐいにもあまり関心が無いので、昔のままの現存天守以外の城にはあまり関心が無い。模擬天守である平戸城に入ったのは、天守最上階から景色を眺めるのが目的。ただ、平戸城は2001年に日本一周旅行をした際に観光しそびれた場所であり(駐車場が満車でやめてしまった)、2010年の平戸再訪時は指の怪我で観光しそびれ、実に14年越しの観光ということになる。

平戸城天守閣

天守閣の中は資料館

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天守最上階からは周囲の景色を360°眺望。北〜南東までぐるっと平戸瀬戸という海峡が広がり、北東側に小島が浮いている。一般の観光客は上陸できなさそうな小島の南岸には、石垣の上に建つ小さな神社。何だか興味深い。南東には平戸大橋が見える。真北の眼下には平戸観光交流センター。

天守最上階

平戸観光交流センター(左下)を見下ろす

小島に小さな神社が

平戸大橋

西側の5、600m先には平戸ザビエル記念教会が小さく見える。真北の港の対岸には平戸オランダ商館。2010年に平戸を訪問した時は平戸オランダ商館は復元建造前で、完成図が描かれた看板が敷地に立てられていたのを覚えている。今回の平戸訪問で立ち寄ろうかとも思ったのだが、復元されたもの・模倣されたものにはあまり関心が無いのでヤメ(正直言うと平戸城から平戸オランダ商館まで行くのが面倒くさかったというのが大きい)。

平戸ザビエル記念教会

平戸オランダ商館

天守最上階へ向かう途中、係員が展示物の火縄銃をガラスケースから出して子供に持たせていた。自分も持たせてもらい銃を構えた姿を係員に撮ってもらおうと思ったのだが、時間が掛かりそうなので先に天守最上階へ。ゆっくり景色を眺めた後に火縄銃が展示されてる場所へ戻ると、係員はおらず火縄銃はガラスケースの中に戻っていた。やはり待っていればよかったと後悔…

見奏櫓

見奏櫓の中

天守閣の隣にある見奏櫓にも立ち寄り。中は展示室になっていて、壷やら何やらが展示されていた。これで平戸観光は終わり。14年越しの平戸城観光は案外あっさりとしたものだった。平戸でお気に入りの「寺院と教会の見える風景」へも行ったし、映画「あなたへ」を観てから行きたいと思っていた薄香でロケ地巡りもした。そして因縁の道の駅 生月大橋の再訪も果たした。もう平戸市で他に行き残した場所は無いことを確認し、平戸大橋を渡って平戸島を後にする。

城山公園展望台

(じょうやまこうえんてんぼうだい:松浦市星鹿町)

ながさきサンセットロードは平戸から松浦市の海沿いの国道を東に続き、佐賀県との県境で終わり。ということで、平戸を出て松浦市を進み、その途中にある半島状の陸地にある城山を最後の訪問地とした。半島状の先端へと続く県道に入り、途中から細くくねった山道を上り、山頂にある展望台に着いたのが12:50。

周囲に観光スポットも遊ぶ場所も無いと思われるマイナースポットのような場所で、山道はあまり観光客が来ることを想定していないような狭く不便な道なのだが、山頂には個性的なかたちをした非常に立派な展望台があるのが不思議。らせん状のスロープの中に駐車スペースがあるのもおもしろい。

スロープの中に駐車場

スロープを上って一番上へ

展望台からは周囲の景色をぐるっと一望。辺りに雲はほとんどなく快晴なのだが、遠くに見える島々がずいぶん霞んで見える微妙な視界。まぁ空と海が青いから合格。特別印象的な風景という訳でもなく、ただただ長閑で落ち着く眺め。涼しい風を浴びながらボーっと海を眺めていたくなるような場所。旅の最終地点にはいい場所だ。

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城山観光の後に時間と余力があれば、佐賀県本土から橋で繋がっている長崎県松浦市の二島(鷹島と福島)を周ろうと考えていた。しかし二島に立ち寄ると帰宅が深夜になってしまうし、早く帰って自宅でのんびりしたい気分だったので帰宅の途につく。城山から50kmほど国道を走り高速道路に入り、約370km高速道路をひたすら走る。20代の若い頃と比べて高速道路の長距離走行がしんどいと感じるようになった。もうあまり車で遠方へ行きたくないな、片道200kmくらいまでがいいな、などと考えながら淡々と運転。自宅最寄のICで高速を下りて、ガソリンスタンドとスーパーに寄って19:30帰宅。