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2012年4月19日(木)  巡拝4日目  曇のち雨

参拝札所:12・13・14・15・16番

歩行距離:36.0km

合計距離:95.5km

出費額:¥8,649

合計額:¥18,376

 

携帯電話の目覚ましで4:40起床。肩の痛みと足の筋肉痛が若干あり。昨日納経時間に間に合わなかった焼山寺まで戻るわけだが、参拝を済ませたらまた宿の前を通る事になるので、重いユックを宿の玄関に置かせてもらうことにした。自宅には体重計が無く荷物の重量が分からなかったので、出発前に脱衣所の体重計で量ってみると、リュックが約7kg、山谷袋が約3kg、計約10kgもあったので少し驚く。自分的には両方で7kgくらいだと思っていた。

5:20なべいわ荘を出発。歩き遍路の若い女性も出発するところたっだので、一緒に宿を出る。しかし自分は焼山寺へ戻らなければいけないので、女性とは反対の道へ。先を越されてしまった気分… リュックが無いので体は随分身軽だが、勾配のきつい山道を4km近く登るので楽ではない。早朝なので気温は高くないが、山歩きで体が熱くなる。昨日の遍路転がしでの努力不足で、体力的にも時間的にも大きなロスを招いてしまった。

朝から曇り空

 

第十二番札所焼山寺に6:30到着。お腹が空いたので、自販機で買ったジュースと宿の部屋から持ってきたお菓子で空腹を抑える。これで手持ちの食料は無くなってしまった。出来る事なら朝もちゃんとした食事がしたい。普段の生活では当たり前の食事がいかにありがたいかを改めて実感。

参拝を済ませて納経所が開くのを待つが、7:00を過ぎても開く気配が無い。納経所玄関にあるインターホンを押したら暫くしてやっと住職らしき人が出てきた。閉めるのは延長できないのに開くのは遅いんだ…と愚痴っても仕方ない。

第十二番札所 焼山寺(しょうざんじ) 山門

焼山寺 本堂

焼山寺 大師堂

自分以外にもう1人、納経所が開くのを待つお遍路さんがいた。その人は車で何十回も四国参りをしている人で、見せてもらった納経帳は何度も捺された御朱印で紙の地が見えないくらい真っ赤になっていた(写真を撮らせてもらえばよかった)。 四国参り二回目以降は、同じ納経帳に御朱印だけ捺してもらうことになっている。何十回も四国参りを繰り返すなんて、金も時間も信仰心も無いと出来ない事だ。ちなみにその人の話によると、焼山寺の納経所は毎回時間にルーズらしい…

 

焼山寺からなべいわ荘に戻ってきたのが8:20。宿を出てからちょうど3時間。往復約7.5km。1日に何十キロも歩く四国参りを始めてから距離感が麻痺し始めているが、冷静に考えて歩きで7.5kmは結構な距離だ。それだけの距離を無駄に歩いた事になる。しかしまぁ、昨日十一番で打ち止めして今日の朝から遍路転がしを歩いていたよりは、確実に進んでいるのでまぁいいかと、前向きに考える。遍路歩き最初の難所である遍路転がしが1つの山場で、遍路転がしの辛さに参ってしまい歩き遍路を諦めてしまう人がボチボチいるらしい。

なべいわ荘で飼われている人懐っこい犬と少し遊んでから、第十三番札所に向けて出発。ここからリュックを背負い一気に体が重くなる。やはり7kgのリュックがあるか無いかでは全然違う。改めて荷物は可能な限り軽くする事が重要だと実感。ふと、テントを背負った女性のお遍路さんを思い出す。彼女はあの大きなリュックで無事遍路転がしを越えて、結願するまで歩き続ける事ができるだろうか。

なべいわ荘の犬

なべいわ荘の犬

焼山寺からは山を下っていくだけだと思ったら、宿を出てすぐに未舗装の山道に入り、結構険しい上りが続く。昨日の遍路転がしで山登りは本当にうんざりしているので精神的にも辛い。しかも空腹で力が出ない。地図を見る限り10kmくらい歩かないと店がありそうな町が無い。何も無い山の中ではジュースの自販機すら無い。本当にしんどい…

また険しい山道…

入り組んだ山中を歩いている

遍路小屋

険しい未舗装の山道を何とか越え、それからは舗装された下りの道が続く。途中遍路小屋で休憩。小屋の中にお接待のみかんが置かれていたのでひとついただく。種類はよく分からないが、やたら皮が厚く素手ではとても剥けないので、ナイフで切って食べる。納め札が沢山入ったファイルケースがあったので、みかんのお礼に自分の納め札を入れる。この遍路小屋にはトイレも設置されていた。お遍路とって遍路小屋は本当にありがたい。

みかんのお接待

 

休憩した遍路小屋から3km強歩いたところで集落に入る。食事が出来る店は無いか遍路道を歩きながら探すが、小さな売店らしきものがあるだけ。本当に空腹だからこそ栄養のしっかりとれる食事をしたいので、もう少し我慢して飲食店を探す事にし、空腹に耐えて淡々と歩く。曇り空で景色が映えないこともあり、この日はあまり写真を撮っていない。今思えば、何でもない風景やただの道でも途中途中で写真を撮って、自分が歩いた遍路道の記録をもっと残しておけばよかったと思う。

焼山寺から約13km歩いてやっと食事処がありそうな町に入る。しかし…遍路道沿いに郵便局があったので入り、近くに食事を出す店は無いか尋ねたところ、そういう店は無いとの事。仕方なく飲食店での食事は諦め、食べ物を買える売店は無いか尋ねてもそれもほとんど無いらしく、郵便局のはす向かいにある雑貨屋を勧められた。もう贅沢は言っていられないので、雑貨屋でカップラーメン、パン、トマトを買って、雑貨屋の前に腰を下ろして食べる。手持ちの非常食が尽きていたので補充したかったのだが、カロリーメイトやウィダーインゼリーの類は売られていなかった。正直ここまで食べもの調達に苦労するとは想像もしなかった。普段自宅で生活している時は、歩いて15分以内の範囲で生活に必要なものが全て揃う。四国参りを始めてまだ4日目だが、これまでの当たり前の生活がいかに便利でありがたいかを、否応無く実感させられる。そういう点でも歩き遍路はいい経験になる。

利用した雑貨屋

これが朝食兼昼食 計455円

車の往来が多い県道をひたすら歩く。自分とほぼ同じペースのお遍路さんと途中一緒に会話しながら歩いたりも。そして次の札所のすぐ手前まで来たところでやっとコンビニを発見。非常食とアイスを買って、コンビニ前のベンチに座ってアイスを食べてクールダウン。コンビニ本当にオアシス。この時点でちょうど14:00。予定では十六番札所まで、可能であれば十七番札所まで進みたいと考えていて、時間的に十六番までは確実に間に合いそうなので、十七番札所の目の前にある宿に電話で予約。運良く部屋は空いていた。十六、十七番札所周辺には宿がほとんど無いので最悪野宿も覚悟していた。

歩き遍路で終始宿を利用する人の多くは、宿を取り損なう事の無いよう常に2、3日先までの予約をしている。歩き遍路の多い時期だと特に宿を取るのが困難になるので、早めの予約は必須。中には四国参りを始める前に全ての宿を予約する人もいるらしい。しかし前もって宿を予約してしまうと、その日その日の工程を変更する事ができず、その日の天気や体調で臨機応変に計画を立てることが出来ない。なので自分は基本的に当日午後から予約して、部屋が取れなければ野宿すればいいという考え。宿無しになる不安が無い代わりに行程が決められた遍路参りよりも、行き当たりばったりの方が面白みがある。

 

14:15、第十三番札所大日寺に到着。十二番札所の焼山寺から20.8km。長かった… ただ、道のりは途中から舗装された道路になり、曇り空で日差しも無いので昨日よりは体力的な負担はずっと少ない。景色を楽しむ分には晴れていたほうが良いが、歩き遍路には日差しの強い快晴よりも曇りがちな天気の方が体力の消耗が抑えられて楽。

第十三番札所 大日寺(だいにちじ) 山門

大日寺 本堂

大日寺 大師堂

 

大日寺から2.3km歩いて第十四番札所の常楽寺へ。これまで参拝してきた札所の山門は何処も木造で門の形をしていたが、常楽寺の山門にはそのようなものは無く、境内入口の両端に石柱が建っているだけ。何故だろう。境内の雰囲気も今までで一番質素な感じ。寺も場所によって収入に差があると思われ、そういうのが関係しているのだろうか。十一番から十二番に向かう道のりで一時一緒に歩いていたお遍路さんとここで再会。自分とほぼ同じペースで歩いているお遍路さんとは、札所や道中で何度も会う事があるのでおもしろい。

第十四番札所 常楽寺(じょうらくじ) 山門

常楽寺 本堂

常楽寺 大師堂

常楽寺に着く少し手前から小雨が降り出し、常楽寺での参拝を終えると雨足が強くなる。リュックにレインカバーをかける。山谷袋は撥水仕様なので多少の雨なら問題ない。レインウェアは着るのが面倒なので服装はそのまま。遍路傘に雨避けのビニールが被さっているので、多少の雨なら笠だけで対応できる。

 

常楽寺の次の札所までは僅か0.8km。程よい雨で体の熱気も冷め、足取り軽く先へ進んでいると、痛っ!急に右足首後ろに鋭い痛み。何だと思い足首を見てみると少し赤く腫れている。靴ズレだろうか、皮が擦り剥けてはいないが指で押すと痛い。いい感じで巡拝が進んでいたのに想定外のアクシデント。昨日の遍路転がしでの負荷が今頃現れてきたのだろうか。とりあえず右足首に気を使いながら十五番へ向かうが、途中何度も鋭い痛みが走る。経験した事の無い危険な痛みに不安。まさかアキレス腱…?万が一アキレス腱断裂なんて事になったら、そこで遍路参り終了になってしまう。

 

足首を気遣い不自然な歩き方をしながらも、15:30に第十五番札所国分寺に到着。明らかに変な歩き方だが、人目を気にしている場合ではないほど痛い。何とかならないかと靴の履き方や歩き方を試行錯誤する。そして、靴のかかとを踏んで足首後ろに靴が当たらないようにすれば歩いても痛みが無い事に気付き、右足だけかかとを踏んで歩く事にした。だいぶ歩き辛いが仕方ない。

第十五番札所 国分寺(こくぶんじ) 山門

国分寺 鐘楼堂と本堂

国分寺 大師堂

 

想定外の足首の痛みに見舞われながらも計画通りに進み、第十六番札所観音寺に納経時間内の16:20到着。観音寺でこの日は打ち止め。ここで自転車で巡拝している外国人女性2人組み(ヨーロッパ人?)を見かける。寺に着て自転車を下りると一直線に納経所に向かい、納経を済ませるとまたすぐに自転車に乗って行ってしまった。完全にスタンプラリー感覚のようだ。ひと口に遍路参りと言っても、本当にいろんなスタイルでまわっている人がいる。

第十六番札所 観音寺(かんおんじ) 山門

観音寺 本堂

観音寺 大師堂

 

観音寺から予約した宿までは約2.8km。参拝は終ったので時間を気にすることなくゆっくり歩く。右足のかかとを踏んでいるので歩き辛く、次第に足の裏も痛くなってくる。本当に厄介だ。翌日までに良くなるのか、これ以上歩くのに支障が出ないか、そればかりを心配して歩き、目的地の宿のおんやど松本屋に17:20到着。玄関に入り声を掛けると、宿のご夫婦が出てきて出迎えてくれた。玄関でおかみさんが濡れた荷物を全部タオルで拭いてくれて、ご主人が外で金剛杖の足先を洗ってくれて、いきなり手厚いおもてなしに感激。宿の外観はかなり古い建物のようで中の様子がどうなのか少し不安だったが、部屋はとても綺麗で広く、遍路参りで泊まるには勿体無いくらいのものだった。しかも窓の外には日本庭園風の庭。

おんやど松本屋

宿泊する部屋

部屋で一息ついてから入浴。浴室は一般家庭にあるようなシステムバス。何と洗濯もしてくれるとの事で、脱衣所の籠に脱いだものと一緒に白衣やタオルなどの洗濯物を入れておく。何て素晴らしいおもてなしだ。そして18:30から居間で夕食。出された食事を見て三度目の驚き。とんかつ定食のお盆の隣にお刺身の盛り合わせや茶碗蒸しが載ったお盆があり、ちょっと豪華。とにかくお腹が空いていたので、ご飯を2回お代わりしお茶も何杯も飲んだ。それにしても、手厚いおもてなしに豪華な食事、部屋の広さなどから察するに、結構宿泊料高いんじゃ…と不安になる。電話で予約をする時に金額を聞いていなかった。十七番札所周辺には他に宿が無いのでここに泊まるしかなかったわけだが。ともあれ実際宿泊料は6,800円だった。遍路宿としては平均より少々高いが、内容を考えれば納得できる金額。

部屋の外は日本庭園風の庭

夕食

宿泊客は自分含めて4人。歩きで逆打ちをしている高齢の男性と、交通機関を利用して順打ちしているご夫婦。偶然にもご夫婦の方は、前日宿泊したなべいわ荘でも一緒だったお遍路さん。ご夫婦は予算120万円で主に交通機関を利用し、たまに遍路道を歩いて巡拝しているとの事。逆打ちをしている男性は今回が2度目の遍路歩きということで、役に立つ情報をいろいろと教えてくれた。宿での食事はお遍路同士の情報交換の場にもなるので、とても有意義な時間を過ごせる。それと、ご夫婦の方は15:00頃におんやど松本屋に着き、その時偶然にも、なべいわ荘に泊まった若い女性がおんやど松本屋を横切ったそうだ。別に早さを競っているわけではないのだが、何故か対抗意識が出てしまう。まだまだ先は長いので落ち着いて自分のペースで歩く事が大事だ。

食後は部屋に戻り荷物の整理をしたり爪を切ったり。夕食でお茶を何杯も飲んだのにまだ足りず、部屋でも数杯飲む。そうとう体が水分を欲していたようだ。外の雨は本降りに。さすがに寝袋ひとつで雨の日の野宿は辛い。雨をしのげる軒下に寝袋を敷いたとしても、夜間の寒さで眠れない。宿に宿泊できてよかった。この日の歩行距離は約36km。1日に歩いた最高距離を更新。十分に体を休めるため22:00前に就寝。