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2012年4月20日(金)  巡拝5日目  雨のち曇

参拝札所:17・18・19番

歩行距離:25.0km

合計距離:120.5km

出費額:¥1,065

合計額:¥19,801

 

6:00に部屋の外からおかみさんに声を掛けられ起床。襖を挟んだ隣の部屋からのイビキで夜中に2度ほど目が覚めたが、十分な睡眠はとれたと思う。起きてすぐに朝食。巡拝5日目にして初めてちゃんとした朝食。純和食の朝食を食べるのも久しぶりな気がする。お腹が空いていたのでご飯は2杯お代わりしたいところだったが、朝から食べ過ぎると体が鈍くなるので1杯にしておく。朝一で参拝する札所はすぐ側、と言うか宿の裏に寺があり、食事をする居間の窓から境内が見える。なので納経所が開く直前まで部屋でゆっくりし、6:50出発。

おんやど松本屋の朝食

 

宿を出て20秒くらいで第十二番札所井戸寺に到着。朝から生憎の雨で、レインウェアを着ての参拝。黒いレインウェアと蛍光色のリュックレインカバーのせいで、パッと見はあまりお遍路らしくないが仕方ない。前日に痛めた右足首は相変わらず痛く、しかし1日中かかとを踏んで歩くのは厳しいので、どうしようかと試行錯誤した結果、かかとの下にポケットティッシュを敷いてかかとを少し高くすることで、足首の痛い部分に靴が当たらないようになった。若干歩き辛いがとりあえず様子を見ながら先へ進む。

第十七番札所 井戸寺(いどじ) 山門

井戸寺 本堂

井戸寺 大師堂

 

レインウェアで黒尽くめ

国道192号線を歩く

井戸寺からは暫く国道を歩く。歩いているうちに少しずつかかとのポケットティッシュの位置がズレていき、完全にズレるとまた鋭い痛みが出るので、ある程度ズレてきたらそのつど靴を脱いでティッシュの位置を修正。面倒くさい… それとレインウェアをずっと着ていると内側が蒸れてきてベタベタして気持ち悪い。

ゴミ屋敷発見!

国道は車の往来が激しく信号も多く鬱陶しいので、途中から住宅地を通るルートへ入る。しかし、出勤するサラリーマンや通学中の学生が多く、何だか自分が場違いな感じで少々居心地が悪い。相手の方は毎日のようにお遍路を見ているので何とも思っていないとは思うが。街中では声を掛けられる事は滅多に無い。たまに高齢者が挨拶をしてくれる事はあるが、子供たちはチラッと横目で見て通り過ぎていく。農村部などの郊外と市街地では、お遍路に対する意識もだいぶ違うようだ。

途中歩道にある屋根つきベンチで休憩した時に、蒸れるレインウェアがあまりにも暑苦しくて鬱陶しいので脱ぎ、ジーパンと半袖のTシャツ1枚になる。さほど強い雨では無いので濡れても構わないかなと。とにかくレインウェアは蒸れて暑くで邪魔で仕方なかった。黒いシャツにジーパン姿で相変わらずイマイチお遍路らしくないが、遍路笠に山谷袋、そして金剛杖を持っているのでお遍路と認識は出来る。

眉山ロープウェイ乗り場前にある遍路小屋

ひたすら国道を歩く

住宅地から再び国道に出て雨の中を淡々と歩く。天気が悪いし景色がつまらない市街地の国道だし、右足首も肩も痛いしで気分は下がりっぱなし。国道は平坦で日差しも無いので体力的には比較的楽だが、リュックを背負う肩の痛みが結構ストレスとなる。天気が関係しているのか、井戸寺を出てから自分の前後にお遍路さんの姿は滅多に見かけない。途中眉山ロープウェイ乗り場前にある遍路小屋で休憩。市街地の中にも遍路小屋があるのはありがたい。そういえば「眉山」というタイトルの徳島が舞台の映画を見たことがある。確か山頂からの眺めが良かったような。観光地として少し気になる山ではあるが、この天気では山頂から何も見えないだろうし、第一今は四国参り中であって観光旅行をしている訳ではない。

ふと金剛杖の足先を見ると、硬いアスファルトの上をずっと突いて歩いていたので木の表面がボロボロにめくれ上がっていた。金剛杖は使いやすいようにアスファルトや石に擦り付けて磨耗させる…というような説明が遍路解説書にあったのを思い出し、足先をアスファルトに擦り付けて形を整える。ナイフなどの刃物で削る事は弘法大師を傷つける行為になるのでいけないらしい。第一番札所の売店で購入した金剛杖は軽くて固い木ではない。歩き遍路の道は約九割が舗装された道と言われているので、この先どんどん減っていくと思われる。平坦で舗装された道では杖を突く必要性は無いのかもしれないが、一歩一歩杖をついてコツコツと音を立てて歩いた方が四国参りをしている実感が出る。それに短くなった杖は歩いて四国参りをした証でもある。金剛杖の購入時に新品の状態の長さを測ってあるので、この先どれくらい短くなるのかある意味楽しみ。あまり短くなっては使い辛くなるので困るが。

井戸寺を出発して主に国道を歩き続け、その間ずっと探していた100円ショップをやっと発見。何が欲しかったかというと、主に巾着袋やザックの紐などに付いている、プラスチック製で紐を通す穴が空いていて、ボタンを押して紐を締めたり緩めたりするアレ。「紐ホルダー」とか「コードストッパー」という名前らしい。遍路笠を脱いでまた被る度に顎紐を結ぶのは面倒だし、笠が風に煽られてもズレないようにしっかり結ぶのが難しいので、「アレ」を顎紐に使いたかった。しかし残念ながらアレ単体は売られていなかった。アレの付いた袋等も見当たらなかった。仕方ない… 代わりに何かの役に立ちそうな肩パットを購入。例えば足と靴の間に挟んで痛みを和らげるとか。

11:00頃に雨が止む。長時間雨に濡れて歩いていた割には、シャツもジーンズも大して濡れていない。予想以上に遍路笠が活躍してくれているらしい。自分が購入した笠のサイズは「小」。「大」もあるのだが、笠が大きいと風に煽られやすく危ないとの情報がネット上に多くあったので、小にした。特に歩道が狭かったり歩道が無く路肩を歩くような、車と歩行者が接近する道を歩いている時に、大型車の巻き起こす風に煽られる事があり危険らしい。

 

井戸寺から約16.8km歩いて第十八番札所恩山寺に12:10到着。一度止んだ雨だが恩山寺で参拝中にまた降りだす。恩山寺に着くすぐ手前の住宅地で、ブロック塀に腰を下ろしジュースを飲んで休憩していたら、目の前の家で庭仕事をしていたおじさんに声を掛けられしばらく談話。他のお遍路さんはどうなのか分からないが、自分の場合は中年〜高齢の男性によく声を掛けられる。そして大抵自分の年齢が20代だと思われている。それはさておき、何でもいいから人に声を掛けてもらえる事はいい事だと思う。地元の人達とのふれあいも歩き遍路の醍醐味。バスツアーや自家用車を利用した乗り物遍路にはなかなか機会が無いと思う。

第十八番札所 恩山寺(おんざんじ) 山門

恩山寺 本堂

恩山寺 大師堂

 

恩山寺からさらに4km歩いて第十九番札所立江寺に到着。この辺りで肩の痛みがかなり辛くなる。人によってはたかが7kgのリュックかもしれないが、朝から晩まで背負って歩き続けるのは本当に大変。右足首裏はティッシュのおかげで昨日のような鋭い痛みは無いものの、靴と足の間に異物を入れて歩き続けているので足の裏がかなり疲れてしまった。しかし痛いよりはまだマシだ。無理せずペースを落として歩けば問題ない。立江寺を出る時に雨は止み、部分的に青空が見え始める。

第十九番札所 立江寺(たつえじ) 山門

立江寺 本堂

立江寺 大師堂

 

韓国語!

遍路道にはさまざまな道しるべがあるが、何と韓国語で書かれた道しるべを発見。近年外国人にも四国遍路が注目され、たまに外国人のお遍路さんを見掛けることもある。しかし韓国語の道しるべを貼るほど多くの韓国人が四国参りをしているのだろうか。韓国人は外観を見ただけでは日本人と区別がつかないので分からないが。それにしても、日本人でも歩き遍路をするのはいろいろ大変なのだから、日本の言葉や文字、土地に詳しくない外国人はもっと大変だと思う。

田園風景が広がる遍路道

朝起きてしっかり朝食を食べたので結構腹持ちしたが、14:00辺りから空腹になり始める。しかし歩いている場所は田園と山々の景色が広がる田舎道で、なかなか店は見当たらない。どんどん空腹になる中、遠くに「うどん」と書かれたのれんを発見し、もうここしかないと遍路道を少し外れうどん屋に入店。これを逃したら次は何キロ先に店があるか分からない。遍路地図には遍路道沿いにある全ての店が載っているわけでも無いし、地図に載っていても実際は廃業している店も結構ある。

肉うどんとおにぎりを注文。店内には近所のおじさんが2人いて、話しかけてきたので暫く談話。今日はどうするのかと聞かれたので、21番札所がある山のふもとで宿を取るか野宿しようと考えている事を伝えると、それならこの近くに無料宿があるからそこに泊まればいいと提案してくれる。この時はまだ遍路用の無料宿が存在する事を知らなかったので、どんなものなのか分からず少し不安を感じたが、おじさんが案内してくれると言うのでご好意に甘える事に。食後はうどん屋さんがコーヒーのお接待をしてくれた。そしてお会計の時にうどんの代金しか請求されなかったのでおにぎりも注文した事を告げると、お接待しますと一言。なんだか、本当にありがたい気持ちとこんな自分にお接待をしてくれて申し訳ない気持ちの両方。

案内人のおじさんと犬

善根宿  寿康康寿庵

案内された無料宿はプレハブの、いわゆる善根宿。「寿康康寿庵」という何やらややこしい名前。遍路道にあるが遍路地図には載っていない。うどん屋に立ち寄った関係でこの宿の前を歩く事は無かったが、入口は遍路道から背を向けているので、歩いていても気付かなかったかもしれない。中は結構広く電気水道が通っていて、食器類や何やら物が沢山置いてある。乾燥機らしきものもあるが使用不能のよう。部屋の奥の7、8畳ほどのスペースにゴザが敷かれていて、布団や荷物がゴチャゴチャと積まれている。正直綺麗とは言えないが、これだけちゃんとしたスペースを無料で利用できるなんてありがたい。プレハブの前には小綺麗なトイレもある。おじさんが言うには近くの寺の住職が運営しているとの事。ならば寺へ一言挨拶に行ったほうがよいか尋ねると、坊主が好きで勝手にやってるだけだからそんな事せんでいいっ、との事。なら、まぁいいか。

トイレも利用可

15:30過ぎに寿康康寿庵に着いてしまったので時間を持て遊ぶ。とりあえず室内がホコリっぽいのでホウキで掃いて部屋の掃除。それから宿の周囲を少し歩いてみるが何も無いのですぐ戻る。こういう宿は本当にありがたいが、誰でも利用できるだけに変なお遍路さんと一緒になってしまう可能性もある。お遍路の中には一癖も二癖もある変わった人もいるし、明らかに浮浪者と言える「職業遍路」と言われる人もいる。さすがにそういう人と一夜を過ごすのは厳しい。なので誰も来ないでこのまま1人ならいいなぁ〜と思っていたら、プレハブの前にあるベンチに1人のお遍路さんが腰を下ろした。この宿に気付いているのだろうか、入ってくるのだろうか、と固唾を呑んでいたら…入ってきた!が、普通のお遍路さんだったので胸を撫で下ろす。そのお遍路さんは27歳の広島から来た人で、四国参りをする目的が自分と共通している部分があり、すぐに打ち解ける事が出来た。四国参りをしていると本当に多くの人との出会いがある。

とりあえず布団を敷く。布団の衛生状態は微妙そうだが文句は言えない。自分も風呂に入っていないのだから。無料で雨風凌げる建物の中で温かい布団で寝られるだけでありがたい。テーブルの上に記帳ノートがあったので、宿を利用させてもらったお礼を書き納め札を挟む。それから未記入の納め札の書き溜めをしたり、もう1人のお遍路さんと情報交換をし合ったり、翌日の巡拝計画を立てて過ごす。当初の予定ではもっと先まで進むつもりだったので、翌日はかなり早めに起きて出発することにした。天気予報では翌日から3日間雨。翌朝は未舗装路の山越えもあるので雨は困る。予報が外れることを願い21:40過ぎ就寝。

遍路地図を見て翌日の巡拝計画中