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2012年4月26日(木)  巡拝11日目  曇

参拝札所:27番

歩行距離:32.2km

合計距離:309.3km

出費額:¥9,074

合計額:¥70,431

 

布団に入って眠ろうとしていると、天井から物音が聞こえてきた。”ガサガサ、コトコト”そんな音が暫く続く。屋根裏にネズミか鳥でも住み着いているのだろうか。明らかに何かが動き回っている。それから眠りに就くが、夜中に首の後ろがかゆくて目が覚める。蚊に刺されたかゆみではなく、とにかく得体の知れない激しいかゆみ。枕か布団にダニでもいるのだろうか、そもそもダニに噛まれてこんなに激しいかゆみになるのだろうか。とにかくかゆくてそのままでは眠れない。しかし虫刺され等に効くかゆみ止め薬は持参していないので、残り2枚となった貴重なシップを首の後ろに貼ってみる。するとスーッとシップ薬が効いてかゆみをだいぶごまかす事が出来た。得体の知れない枕と布団で再度寝る気にはなれず、厚着をして畳の上で寝ることに。天井の音といい、この部屋には何かいる…

かゆみ止め代わりにシップ

朝食

ニワトリのやかましい鳴き声で6:00前に起床。首のかゆみで夜中に起こされた事もあり寝起きは最悪… 朝食はこれまでに宿泊した宿の中で最もおかずが少なく、少々見た目も寂しい。明らかに足りないのでご飯を沢山食べて腹を満たす。予約の手違いの件や就寝時の天井の音と首のかゆみといい、どうも自分にはこの宿とは縁がなかったようだ。。

 

7:20に宿を出発し、約5km先の第二十七番札所を目指す。第二十七番札所は、参拝後に来た道を途中まで引き返す「打戻り」の札所で、宿泊した宿がちょうど打戻りのポイントになっている。そのため、重いリュックは宿に置かせてもらい、参拝に必要な山谷袋だけを持って札所へ向かう。打戻りポイントから札所までは山道になっているので、重い荷物を持たなくて済むのはとても助かる。約7kgのリュックがあると無いとでは体への負担が全然違う。体が軽く足取りも軽い、がしかし右足首はまだ痛い。

雨が止んで間もない

舗装された山道

雨が止んで間もないようで道路には水溜りがあり、空模様もまだ怪しい。山道ではあるが舗装された道路で歩き易い。しかし足首が結構痛く無理は出来ない。道の途中で、4日前に宿泊した旅館あづまで一緒だったおじさんに会う。すでに参拝を済ませて引き返すところだった。自分が宿泊した宿よりも手前から、3時起きで出発して一番乗りで札所を参拝してきたらしい。自分も最初の数日は朝食抜きで早起きするガッツもあったが、その勢いもすっかり落ちてしまった。自分の方がずっと若いのだから負けていられない。ともあれ、一度会って見知ったお遍路さんに再び会えるとなんだか嬉しい。少し元気が出た。

 

8:30に第二十七番札所神峯寺に到着。遍路道は昔からの未舗装の道もあったが、雨で地面が濡れて足元が滑りやすくなっている可能性があるので、札所までずっと舗装路を歩いてきた。できるだけ昔ながらの遍路道を歩きたいところだが、やはり安全第一を優先。万が一足を滑らせて転倒し、身体の何処かを怪我でもしたら困る。

第二十七番札所 神峯寺(こうのみねじ) 山門

神峯寺 本堂

境内の石段を上っていくが足首の痛みがかなり厳しく辛い。そういう時に車で四国参りをしている人達を見ると、羨ましいとか何だかずるいとか、心の弱さが気持ちに表れてきて余計にモチベーションが下がる。心の弱さを克服して強くならなければいけない、そのために歩きで四国参りをしているのだからと、自分に言い聞かせる。

神峯寺 大師堂

境内から海が見える

それにしてもどうも少し熱っぽい。前日の朝から少し体調がおかしかったが、やはり溜まった疲れが出てきているのかもしれない。しかしそれでも歩かねばならない。病は気から。気持ちを強く持っていれば微熱くらいすぐに消える。心に活を入れて打戻りを始める。が、上りよりも下りの方が足首に負担がかかりかなり痛い。気を張って痛みに耐えるしかない。

 

打戻りで宿に戻ったのが10:00。足首がかなり痛いし体も熱っぽくてだるい。おまけに眠気も出てきて本当に歩くのがイヤになってしまった。少しの間宿の玄関に座ってボーッとしていたが、いつまでもそうしている訳にもいかないので、重い腰を上げてリュックを背負う。宿から神峯寺までの往復はリュック無しで身軽だっただけに、余計にリュックが重く感じる。かなり重い足取りで歩き始める。

遍路道はまた海沿いの国道55号線。歩き始めても眠気と体のダルさは全く消えず、宿から1時間ほど進んだ所の道の駅で休憩。自分以外にも歩き遍路の人が2人ほど休憩していた。その人達と話をしていたら30分ほど経ったが、それでも体のダルさは消えず。いつまで休憩していても切りが無いので、弱った心と身体に鞭打って再び歩き始める。

また国道55号線を歩く

海沿いの国道を歩いていて、津波に関する標識を頻繁に見かける事に気付く。しかもどれも綺麗で真新しい。東日本大震災で津波による大きな被害が出て、津波に対する関心が高まってから設置されたのだろうか。確かこの辺りは南海トラフ地震の被害想定区域に入っているし、津波が来れば被害は免れない。海抜の低い海岸沿いの地域に住んでいる人達は、常に津波被害への防災意識を持って生活する必要がある。命に関る事なので大変だなと思う。

右足首の痛みが酷く歩くのが本当に辛くなってきた。シップは使い切ってしまったので薬局を探すが、住宅もまばらな国道沿いには店が無い。足の痛みをこらえてギクシャクした足取りで歩き続け、そこそこ大きな町に入る。本当に足が辛いので、スーパー銭湯などの入浴施設で夜まで休み、野宿をしようと考える。とりあえず誰かに薬局と入浴施設の場所を聞きたいのだが人がいない。全く人影が無い。困ってトボトボ歩いていると、高齢のご夫婦のお遍路さんに会う。暫く3人で立ち話しをしていると、カブを運転するおじさんが自分達の前で止まり、声を掛けてくれた。おじさんに聞くと薬局は近くにあるが、入浴施設は多分無いとの事。とりあえず薬局へ行きシップを購入。入浴施設でのんびりするのは諦め、シップを貼ってゆっくり歩き出す。自分に甘えてはいけない。

シップが必需品になってしまった

飲み物を買いにコンビニのスリーエフに入り、パックのジュースをレジに出すと、店員がお接待で500lmのお茶を出してくれた。個人経営の店なら珍しくない事だが、チェーン店のコンビニでお接待をしてくれるのは珍しいと思う。とにかくペットボトルの飲み物は常に必要なものなのでありがたい。

真っ直ぐ続く防波堤沿いを歩く

海の向こうにこれから向かう陸地が見える

降りそうで降らない天気

まだまだ国道55号を歩く

歩いている途中に激しい眠気に襲われる。重いまぶたを何とか開いてフラフラと歩く。15:30をまわり、今夜はどうしようかそろそろ決めねばと、腰を下ろして遍路地図を見て考える。この先で最も近く評判のいい宿(あづまで遍路地図にチェックを入れたもの)は8km先。その少し手前に無料の善根宿もある。出費を抑えるため善根宿に泊まろうかとも思ったが、どうしても入浴したいので宿を予約することに。ここで何と、携帯電話に電話番号を入力している途中に眠ってしまい、膝の上に乗せた地図を地面に落として目を覚ます。よほど疲れていたらしい。

サイクリングロードを歩く

高台から海岸線を一望

遍路接待所

遍路接待所の中

遍路道は国道からサイクリングロードに入る。滅多に人通りの無い海沿いのサイクリングロードを暫く歩いていたら、お遍路のための休憩所を発見。遍路接待所というもので、たまに見かける遍路小屋とは少し違うおもむき。建物の中には実物大遍路人形やいろいろな飾り物があり、自由に飲めるインスタントコーヒーも置かれている。こういう遍路接待所は個人が善意で提供しているものなのだろうか。いずれにせよ、歩き遍路にとってこういうもてなしは本当にありがたい。

高架下を一直線に延びるサイクリングロード

高架下の善根宿

予約した宿までだいぶ近づいてきたところで、最初に利用を考えた善根宿に着く。線路の高架橋の下に小さな小屋が数軒並んでいる。これが無料で利用できるのだからありがたい。天気は曇りでも気温と湿度は高く、かなり汗をかいたのでどうしても入浴がしたくて宿を取ったが、そうでなければここを利用させてもらっていた。

塀の上に座る犬!

実はシップを買った後にまた薬局を探していた。このところ鼻の調子が悪く(アレルギー性鼻炎…)、夜鼻づまりで寝苦しい時があるので点鼻薬を買おうと思っていたのだが、シップと一緒に買うのを忘れていた。道行く人に薬局の場所を聞き、サイクリングロードから国道に出て小さな薬局へ。点鼻薬を購入すると、サービスで鼻の通りがよくなる飴をくれた。四国の人達はお遍路に対して本当に親切で優しい。そういう人達がいるからこそ歩き遍路は頑張れるのだと思う。

点鼻薬とアメ

宿まであと1kmを切った辺りで、よく日に焼けた威勢のいいおじさんに声を掛けられる。何とその人はついさっき通り過ぎた善根宿のオーナーだった。オーナーは善根宿に宿泊する歩き遍路から多くの情報を得ていて、遍路道や無料宿についてかなり詳しく、お勧めのルートや無料宿などを教えてくれた。路上で立ったままで遍路地図を順にめくっていき、教えられた事を書き込んでいく。結構な情報量で暫くやり取りしていたので足と肩が疲れてしまったが、かなり有益な情報を得る事が出来た。こんなにいい人にばったり道端で声を掛けられるなんて本当についている。遍路地図に書かれていない情報や遍路経験者の知識を多く得る事は、より充実した四国参りをすることに繋がる。歩き遍路にとっては道中での情報収集も大切。

 

遍路地図を眺めながら宿を探し歩くが、どうも場所がよく分からない。宿の近くにあるはずのコンビニが見当たらず、もしや行き過ぎたのではないかと心配しつつ先へ進んでいくと、宿の分かりやすい案内看板を発見。国道から細い横道に入り、奥へ進んで行き漁港に出た所に宿はあった。宿の玄関を開けるとおかみさんが出迎えてくれて、迷わずに着けましたか、と。宿の案内看板があったので何とかたどり着けたが、目印にするつもりだったコンビニが無かったので不安だった事を話すと、コンビニは少し前に移転したとの事。他にもずっと前に廃業したコンビニやうどん屋が遍路地図に載ったままらしい。10年以上前に廃業した宿も未だ地図に載っているとか。自分の位置確認や買い物・飲食の場所を探すのに、あまり遍路地図を鵜呑みには出来ないという事か…

宿がある漁港から

民宿 住吉荘

おかみさんに案内された部屋は二間ある広い部屋。今までに宿泊した部屋の中では圧倒的に広い。建物の裏手にあたる窓からは漁港と高知県南西部の陸地が見渡せるいい眺め。しかもちょうど日が沈むところで、空は黄金色に染まっていた。このまま日没まで眺めていたかったが、おかみさんが入浴の準備が出来たことを伝えに来たので浴室へ向かう。

宿泊する部屋

部屋の窓からの眺め

夕食

入浴後に洗濯場へ行き洗濯機を使おうとしたが、2台ある洗濯機両方とも使われていたので、カゴに入れた洗濯物を一旦部屋に持ち帰ろうとしたところ廊下でおかみさんに会い、おかみさんが後で洗濯機に入れて回しておいてくれることになった。お遍路に理解の深い宿ではおかみさんが本当に親切。19:00過ぎに広間で夕食。既に3人の宿泊客が食事をしていた。お遍路は自分だけで、3人は仕事で宿に連泊している土木関係の人達だった。3人と談話をしながらゆっくり食事し、食後に再び洗濯場へ行き洗濯物を乾燥機に入れて部屋に戻る。そして今度は乾いた洗濯物を取りに再々度洗濯場へ行き、やる事全て済ませて落ち着いたのが21:30過ぎ。

廊下で猫の鳴き声が聞こえたので戸を開けると、目の前に一匹の猫。宿の飼い猫だろうか。戸を開けたまま何となく観察していると、猫が部屋に入ってきた。さわろうとしたが避けられ、部屋を少しうろうろして出て行った。もっと猫と遊んでいたかった。

戸を開けると目の前に猫

なんか癒される

部屋に入ってきた!

昨夜の天井の音・首の激しいかゆみ・早朝のニワトリの鳴き声による睡眠不足と、風邪のような熱っぽさと右足首の痛みで、朝からずっと眠くてだるくて歩くのが本当にしんどい1日だった。今日こそはぐっすり寝て体調を整えようと22:00就寝。