トップページ

2012年4月30日(月)  巡拝15日目  雨

参拝札所:37番

歩行距離:55.0km

合計距離:467.2km

出費額:¥6,502

合計額:¥96,620

怪しい空模様

5:00起床。久しぶりのベッドでかなり熟睡できた気分。普段はベッドで寝ているので、民宿・旅館の布団よりもやはりベッドの方がよく眠れるようだ。部屋の窓から外を眺めると、空一面厚い雲に覆われ小雨がパラついている。リュックにレインカバーを被せ、山谷袋に入れている納経帳と遍路地図をジッパー付きビニール袋にしまう。着衣が濡れるのを最小限にするため白衣と手ぬぐいは身に着けず、レインウェアも長時間着ていると中が蒸れて濡れるので身に着けず、ジーパンにシャツ一枚という格好で5:20出発。

 

外はまだ暗く人通りは全く無く、静まり返った夜道を歩き始める。ホテルを出てすぐにファミレスのジョイフル発見。西日本を車中泊旅行した際によく利用していた馴染みの店。少し空腹だったので入店しようか迷ったが、わざわざ早起きしたのに出発早々店でゆっくりするのも何だし、小雨が本降りにならないうちに少しでも先へ進まねばという気持ちがあったので店を素通り。少しは自分に厳しくせねば。

ホテルを出て20分ほど歩いた所で急に雨は本降りになる。慌てて目に入った軒下に避難。暫く雨宿りをしていたら雨足が弱くなったので歩き始める。半袖のシャツ一枚で雨に濡れるのは少々寒いが、歩いているうちに体が温まるだろうとレインウェアは身に着けないまま。しかしまた20分ほど歩いて本降りに。時折強い風も吹きつけ横殴りの雨。あっという間に全身びしょ濡れ。ホテルから2時間半ほど歩いたとろに開店前のレストハウスがあり、玄関の軒下で休憩し菓子パンを食べて腹ごしらえ。しかし腰を下ろしてじっとしていると、濡れた衣服で体はどんどん冷えていく。体温を上げるには歩くしかないので、満足に休憩できないまま再び歩き出す。

時折強い風

悪天候で灰色の景色

雨の時はトンネルが嬉しい

遍路道は国道56号線に続く。途中途中で国道を外れて昔ながらの歩き遍路道があるが、雨の中足場の悪い未舗装の山道を歩くのは危険なので、そのような遍路道には入らず終日国道を歩く事にした。国道は山の中を通っているが、それほどきついアップダウンは無く、体力的な負担はそれほど無い。ただ、遍路以外の人が歩く事の無いような道なので車道と区切られた歩道は少なく、狭い路肩部分を歩くところが多い。そのような道では車は自分の真横をかすめていく。信号も無いし遍路以外の歩行者もないので、車は結構なスピードを出していて交通量も多い。万が一ドライバーが脇見運転や居眠り運転をして路肩に少しでも車がはみ出てきたらはねられてしまう。そう考えると少しこわい。歩道が無く車の交通量が多い道を歩くのは、結構危なくて気を使うのでストレスにもなる。

歩道の無い道で自分の横を車が通り過ぎる時、大抵の車は対向車線側に少し寄って自分との間を広めに取って走ってくれるが、中には稀に、十分な道幅があり対向車もいないにも関らず、わざと自分の横すれすれをかすめていくような車もいる。そういう時は普通車でも風圧がかかるのでゾクッと体に緊張が走る。四国内でもお遍路の事を好ましく思っていない人がいるという話を聞いていたので、そういう人達なのかもしれない。しかし本当に危ないのでやめて欲しい。

歩道の無い道が多い

山間部の国道を歩き続ける

狭い路肩を歩いている時に、トラックやバスなどの大型車が横を通り過ぎると、水しぶきがおもいっきりかかる。顔にもそれなりにかかる。でもどうせ全身ずぶ濡れなのだからと、半分開き直って気にせず歩く。雨は強くなったり弱くなったりを繰り返し、何度か土砂降りのような激しい雨になった時はさすがに歩くのが厳しく、民家の軒下や屋根付きのお遍路休憩所などに避難して雨が弱まるのをじっと待つ。本降りの雨の中を歩くお遍路はいないのか、全く姿を見かけない。

この四国遍路記に道中の写真を掲載するために、歩いている途中途中で遍路道や周囲の風景も撮影しているが、雨の日だと写真を撮るのも楽ではない。雨でレンズがすぐに濡れてしまうので、その度レンズ拭きやタオルで拭き取る。カメラ自体も結構濡れるので、故障しないか心配しながらの撮影。傍から見たらこの雨の中で何やっているんだと思われているに違いない。

突然の大降りに避難

水しぶきを浴びながら歩き続ける

札所まであと4kmほどのところに道の駅があったので立ち寄り、外にある屋根付きベンチに座って休憩。さすがに全身ずぶ濡れの格好で道の駅施設内に入るのは気が引ける。お腹が空いていたので菓子パンを食べて空腹を抑える。時間は10:40分。早朝5:20にホテルを出発してから約5時間半の間に、僅か3回の小休憩(というより雨宿り)で約30kmも歩いてきた。かなりのハイペースに自分で驚く。久しぶりのベッドで熟睡できた事、雨に濡れて体温が上がらないのでエネルギー消費が少ない事、勾配のきついアップダウンが少なく割と歩き易い事などが要因だろうか。強い日差しを浴びて汗をかいて歩く事が、いかにエネルギーを消耗し身体に大きな負荷が掛かっているかが、改めてよく分かった。

 

第三十七番札所 岩本寺(いわもとじ) 山門

岩本寺 本堂

予定では第三十七番札所の岩本寺に、出来れば14:00遅くとも15:00には着くようにしたいと考えていたが、想定外のハイペースで12:40に到着。休憩時間を入れなければ1時間当たり5km強歩いている事になる。岩本寺に着くと同時に雨は止む。GW中だからか、悪天候にも関らず遍路以外の参拝者が多くて驚く。

岩本寺 大師堂

岩本寺 歓喜天(聖天堂)

 

とっさに雨宿りした場所

岩本寺から歩き始めてすぐに突然強い雨が降り出し、とっさに目に留まった軒下に避難。しかしそこは幅が数十センチしかなくあまりにも狭かった。。外は土砂降りの雨で移動することもできず、狭い隙間の中で立ち尽くして暫く外の様子を伺い、雨脚が弱まるまで待つ。いくら長時間雨に濡れて歩いているとはいえ、土砂降りの中を歩くのはさすがに辛い。リュックの中の荷物も心配だし。それに土砂降りの中で車道の路肩を歩いたら、大型車だけでなく普通車にも水飛沫をかけられる。雨は多少強くとも遍路笠で顔はあまり濡れないが、車の水しぶきは顔にも掛かる。あまり本降りの雨の日に無理して歩くものではないのかも知れない。しかし歩き遍路が雨だからと言って歩かなかったら、丸1日宿にこもって無駄に過ごす事になってしまう。それは時間が勿体無いし、自分には甘えに思える。結局本降りだろうが水しぶきを浴びようが歩くしかない。

土砂降りは収まるも雨はずっと本降りが続き、全身ずぶ濡れのまま歩き続ける。途中でお腹が空いたのでコンビニでおにぎりとチキンを買い、コンビニ外の軒下で食べる。全身ずぶ濡れではコンビニに入るのもためらってしまう。。早朝から歩き続けているのでさすがに疲れも出てくるが、休憩のため足を止めてじっとしていると体がどんどん冷えてくるので、すぐに歩き出す。そして何も無い山道を歩いていたらまた土砂降り。しかしすぐ側に雨宿りできる場所が無く、土砂降りの中少し歩いて民家の車庫にやむを得ず非難。車が停めてあって奥には入れないので、入口際に立ち半分雨に濡れた状態でじっと雨脚が弱まるのを待つ。結構辛い…

雨の中ひたすら歩く

遍路宿にも指定されている佐賀温泉

岩本寺から約10km歩いた所にある温泉宿に16:00着。朝から約45kmも歩いてかなり疲れたので、ここに宿泊しようと思ったのだが、運悪く既に満室になっていた。やはりGWの影響だろうか。GWは区切り打ちのお遍路や一般の行楽客で遍路宿の予約が取り辛くなるとは聞いていたが、自分の場合行き当たりばったりの遍路歩きなので数日前から宿を予約する事は出来ない。仕方ないので入浴と洗濯だけして、温泉宿の外にある屋根付きの休憩スペースで野宿をしようと思ったのだが、入浴は出来るが混雑のため洗濯は宿泊客のみと言われてしまう。

いったいどうすればいいかと遍路地図を眺めると、さらに約10km先に遍路宿がある。しかしすでに45kmも歩いて疲れているし、靴の中が完全に濡れた状態で長時間歩いて足の裏がふやけたようで、マメができた時と同じような痛みを感じ始めている。出来ればもう歩きたくないが、宿泊も洗濯もできないのは厳しい。とりあえず10km先の宿に電話してみると、当日になって団体のキャンセルが出て空きがあるとの事なので、思い切って予約。腹をくくってさらに10km歩くしかない。16:30再出発。

降り続ける雨の中無我夢中で歩き続ける。余計な事は考えず、少しでも早く宿に着くためにひたすら歩く。それでもやはり疲れるので立ち止まる。しかし足を止めると体が冷えるのでまたすぐに歩き始める。もう本当にひたすら歩くしかなかった。

宿まであと少しというところで空腹が限界に来てペースが極端に落ちてしまい、屋根のあるバス停に入りコンビニで買っておいたおにぎりを食べる。疲れたし空腹だし寒い、おまけに外はどんどん暗くなる。四国参りを始めて以来一番の窮地かもしれない。

鯉のぼりが遥か先まで

 

宿泊できなかった温泉宿から2時間半かけて10km歩き、予約した宿に19:00到着。早朝に出発してから14時間弱で55kmも歩き、四国遍路で1日に歩いた最長距離となった。よくもそんなに歩いたなと毎度の事ながら自分に感心してしまう。1日中雨に濡れながら歩くのはいいものではないが、強い日差しを浴びて歩くよりもずっと体力の消耗は少ない事がよく分かった。この時期に身体への負荷を抑えつつ出来るだけ沢山歩く事だけを考えると、小雨くらいの天気が一番いいのかもしれない。

民宿内田屋

宿泊する部屋

玄関で主人がタオルと新聞紙を持ってきてくれ、雨でぐっしょりになった靴の中に新聞紙を詰め込み、濡れた荷物や遍路笠を拭いて宿に上がる。部屋に入りリュックの中の荷物を出すと、はやり雨に濡れていた。ただ遍路地図と納経帳は、2日前に雪渓寺の納経所でもらったジッパー付きのビニール袋に入れていたので無事。本当に助かる。荷物の確認を済ませてから入浴。のんびりと湯に浸かって1日の疲れを癒す。脱衣所の鏡で日焼けした首元を見て、まるで色分けしたかのようにシャツのVネックの形になっていて笑ってしまった。かなりかっこ悪い。

首元の日焼け…

おにぎりと

ビスケットだけ…

宿を予約した時間が遅かったので夕食は無し。満室の温泉宿から先は営業している飲食店などは無く、途中コンビニで買って食べていなかったおにぎり1個とビスケットが夕食代わり。宿の外の自販機でコーンポタージュとジュースを買って、おにぎりとコーンポタージュが夕食、ビスケットとジュースが食後のおやつ。とりあえずこれで空腹からは解放された。

入浴・洗濯・食事を済ませて一息ついたのが21:00過ぎ。テレビを見ながら翌日の計画を立てて、22:30就寝。宿の裏手はすぐ海で、部屋に海の波音が結構大きく入ってくるので眠れるか少し心配したが、よほど疲れていたらしく布団に入って直ぐ眠りに落ちた。