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2012年5月4日(金)  巡拝19日目  曇

参拝札所:40番

歩行距離:46.8km

合計距離:640.5km

出費額:¥2,796

合計額:¥117,747

炎のような朝焼け

5:30に日の出

携帯電話の目覚ましの何度目かのスヌーズで4:45起床。夜明け前の起床はさすがに眠い。5:10に宿を出ると空は一面曇り。山道に入る前にコンビニで買い物をして外に出ると、朝焼けが雲に映り込んで空に炎が広がっているような光景。印象的な光景に足を止めて空を見上げていると、パラパラと小雨が降りだす。天気予報では曇りとなっていたが、念のためリュックにレインカバーを被せて山へ向かう。

山道に入ると雨は止む。しかし一昨日まで3日間続いた雨の影響か、未舗装路のあちこちに水溜りやぬかるみがあり歩き辛い。3kmほど歩くと、昨日宿泊を断念した通夜堂へ続く分かれ道に辿り着く。実際通夜堂はどんな感じなのか確認してみたかったが、遍路道を少し外れなければならないのでそのまま先に進む。無用な寄り道は避けたい。

ここから険しい登りが続く

山頂の様子

緩やかな登り道が続き、山頂まであと1,000mの標識まで難なく進む。珍しく大した事の無い山越えだなと思っていたら、あと1,000mの標識から先が急勾配の登り道で一気にペースが落ちる。最後の僅か1kmの道のりでクタクタに。辿り着いた山頂には「茶屋跡」と「大師堂跡」の案内板があり、大師堂跡の建物?がぽつんと建っているだけ。周囲は木々に覆われ外の景色を眺める事は出来ず。山頂が県境になっていて、10日間歩いた高知県から愛媛県に入る。

峠を越えて山を下りて、山あいの農地を歩いて…。相変わらず空模様は冴えない曇りで、遍路道はずっと木々に囲まれ遠景も見えず、周囲の風景を楽しむ事も無く淡々とひたすら歩く。

あえて旧街道を歩く

本当に疲れた…

途中で遍路道は、国道を進む道と昔の遍路道である旧街道に別れていた。案内板には旧街道は「地道ですが歩けます。」と書かれているので、国道より大変なのは明らか。疲れているので普段なら迷わず国道を進むところだが、何故か気分的に昔の遍路道を歩いてみたくなり、地道な旧街道へ入る。20分ほど山道を歩いて町に出た所に休憩所があったので一休み。本当にぐったりで荷物を下ろすより先に座り込む。

山を越えて旧街道を抜けて川に出て、川の土手を黙々と歩く。地図を見るとあと少しで札所なのに、それらしきものは見えて来ずなかなか辿り着けない。しっかり歩いているのに先へ進んでいない感じ。まるで時間の流れが倍に伸びているような気分。体力的にも精神的にもかなり疲れているらしい。

 

第四十番札所の観自在寺に10:50到着。前日に立てた計画では観自在寺に着くのは12:00くらいになるだろうと予測していた。朝出発してからここまで随分しんどかったので、思っていたよりも順調に進んでいた事が分かり元気が出る。

第四十番札所 観自在寺(かんじざいじ) 山門

またシャツ1枚

観自在寺 本堂

観自在寺 大師堂

 

国道の長い上り坂

観自在寺からは国道を歩く。歩道のある道なので歩きやすいが、途中から緩い上り坂がしばらく続く。山越えとまでは行かない丘越え。足の裏のマメも痛いし歩くのがしんどい。しかも強い向かい風がずっと吹いているのでペースは極端に落ちる。時折遍路笠が吹き飛ばされそうなほどの強風が吹くので、笠を脱いでリュックの後にくくりつける。白衣も着ていないので遠目には遍路とは分からない格好。

にゃんだこれ

丘を上っていく途中途中で、一瞬パラっと雨が何度か降る。風が冷たくシャツ1枚では体が冷えてくるので、途中で白衣を着る。20分ほど坂を上り続けて峠越えをし、今度は長い下り坂を進むと海が見え始める。陸側は厚い雲で覆われているが海は青空。海からはさらに強い向かい風が吹きつけ、前に進むのに苦労。疲労と空腹でフラフラな状態で強風に煽られ続けるのはかなり辛い。

今度は長い下り坂

海の上は快晴

いい眺め

ラーメン定食

とにかくお店でイスに座ってご飯を食べたい、手頃な店で…と考えて歩いていると、坂を下りきったところにラーメン屋発見。できれば肉料理をがっつり食べたいところだが、これ以上店を探して歩く気力は無いのでラーメン屋に入店。ご飯とサラダ付きのラーメン定食を注文。時間は14:00。5:00過ぎに旅館を出発してから約9時間経っている。普通に朝食を食べてからの巡拝であれば、もう夕方で早ければ宿に入る頃。しかしまだまだ歩かねばならない。これは遊びでも旅行でもない、修行なのだ。

ラーメン屋から遍路道は国道を外れ、山へと続いていく。事前情報では山道ではなく国道をそのまま歩いた方が楽でいいと勧められていたが、足場が悪くなる雨天でもないのに遍路道を大きく外れて楽な道を選びたくなかったので、遍路地図に従い山へ向かう。疲れているし足のマメも痛いが楽するための四国遍路ではいので、あまり楽な方へと逃げないよう自分に言い聞かせる。楽では意味が無い、辛くなくては意味が無い。精神修行とは、四国遍路とはそういうものなのだ。

海沿いの低地から標高470mまで登らなければならないため、遍路地図を見ただけで楽ではないと分かっていた。ただ、山道は木々に覆われ風を遮ってくれるので強風に煽られる事は無く、鬱陶しい車の往来もないので気分的には楽で、思っていたよりも軽快に足が動く。

山道を歩く

山頂にある柳水大師

四十番から四十一番札所へ

山頂までは思ったよりも短い道のりだったので、それほど苦労せずに山頂にある柳水大師に15:20到着。休憩小屋と小さな祠がぽつんとある。ここも周囲は木々に覆われ外の景色は全く見られない。それほど苦労せずにとは言っても結構疲れたので、休憩小屋で腰を下ろして一休み。山道に入ってからここまで誰ともすれ違わず。やはり皆楽な国道を歩いているのだろうか。柳水大師からさらに進んで峠を越えると清水大師がある。そのすぐ先に景色が大きく開けた場所があり、入り組んだ海岸風景を一望。やはり山登りした時にはこいうい眺めが欲しい。苦労してでも登った甲斐を感じる事ができる。

清水大師

清水大師付近からの眺め

今日こそは野宿しようと決めていたので、特に何処まで歩くかは決めておらずあまり時間も気にしていなかったが、外が暗くなってから野宿する場所を探すのは大変なので、ペースを上げて山を下っていく。いつの間にか足の痛みも疲労感も消えていて妙に足取りが軽い。体が慣れたのか、峠越えして精神的に楽になったからか、単にマヒしただけか… 朝は調子が良くて次第に疲れていく時もあれば、朝は調子が出ないが昼過ぎや夕方からペースが上がる時もあれば、1日中調子が出ないときも終日ずっと調子の良い時もある。その日の体調や遍路道の状態、そして気分的なものでも巡拝のペースは変わってくる。だから歩き遍路の巡拝計画を立てるのは難しい。

滑りやすい下り道

つまずきやすい下り道

歩き易い下り道

まだまだ続く道

17:30過ぎに山を下り、そのまま歩き続けて小さな遍路小屋に18:10到着。遍路小屋で野宿しようかと思ったが、「宿泊はご遠慮下さい」の貼り紙。遍路小屋やお遍路用の休憩所には、このような貼り紙がある場所が結構ある。遍路の格好をした浮浪者、いわゆる職業遍路が何日も同じ場所に居ついてしまう事があるらしく、そのためだと思われ。仕方ないので別の野宿場を探しつつ、空腹が辛くなってきたので店を探しながら先へ進む。

遍路小屋から1時間弱歩いてコンビニがあったので、弁当を買って店外のテーブル席で食べる。これで3日連続夕食はコンビニ弁当。贅沢は言わないが、もう少しちゃんとしたものが食べたい。コンビニの店員に、近くに野宿ができる場所は無いか尋ねると、少し先にあるトンネルを出たところに小屋があると言うので、そこでの野宿を考える。遍路地図を見るとすぐ側にも遍路休憩所があるので、まずそちらの方へ行ってみる。しかしそこは閑静な住宅地の中で、さすがに野宿し辛い場所だったので諦め、コンビニ店員が教えてくれたトンネル出口の小屋で野宿しようと決める。

月明かりの下を歩く

3日続けてコンビニ弁当…

すっかり暗くなってしまった

念のためその小屋について別の人にも聞いてみようと、目に留まったバスターミナルの待合室窓口で尋ねてみると、そのような小屋は見掛けた事が無いとの返答。窓口の人と話をしていたおじさんも話に加わり、やはりトンネルの所に小屋を見た覚えは無いとの事。コンビニ店員の勘違いだろうか、それとも地元の人にもあまり知られていないだけか、いずれにせよ既に20:00をまわっているので、利用可否が不確実な場所へ向かうのはリスクが高い。おじさんが自宅の納屋を使っても構わないと言ってくれたが、車でないと厳しい距離なのでそれも無理。そしてもう1つの提案が、近くの温泉施設で野宿したらどうかとの事。駐車場に屋根付きの休憩所があり、そこでよくお遍路さんが野宿をしているらしい。温泉なら入浴もできて一石二鳥。という事で約2km先の温泉へ向かう。

 

20:45温泉に到着。この日の歩行距離は約47kmと、巡拝15日目の55km次いでこれまでで二番目に歩行距離の長い巡拝。朝出発してからの巡拝時間は約15時間半と最長記録。そして5日連続40km以上歩いている。遍路を始める前は、毎日こんなに歩けるとは思っていなかった。毎日本当によく歩いているなと、自分に感心してしまう。疲れた体を癒すためゆっくり入浴して閉館の22:00まで施設内で過ごし、それから駐車場にある休憩所へ。

屋根付きの小さな休憩所(もしくはバス停だったかも)には1人の先客がいた。25歳の逆打ちで巡拝しているお遍路さん。ずっと野宿で巡拝しているとの事だが、荷物が少し大きめのショルダーバッグ1つと信じられない少なさ。靴は履き古した底の薄いスニーカー。まるで近所の街歩きルック。自分にはとても真似できない。歩き遍路にも本当にいろんな人がいる。その人と談話をしていたら会話が弾み、気付けば23:30。もっと話をしていたかったが翌朝も早起きして頑張るつもりなので寝ることに。休憩所のベンチには1人しか寝られないので、自分は温泉施設出入り口に寝袋を敷く。床は木の板でコンクリの地面よりはマシだが、極薄の寝袋だけでは固くて寝心地が悪い。せめて敷物が欲しい。そして深夜はまだ冷える…

レインウェアを枕代わりに