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2012年5月6日(日)  巡拝21日目  晴

参拝札所:無し

歩行距離:49.5km

合計距離:727.5km

出費額:¥1,071

合計額:¥126,687

朝食

モーニングコールで6:00起床。6:20から朝食。朝食の時に、歩き遍路の宿泊客のみお接待でお弁当を渡される。お弁当があれば空腹になっても店を探し回らずに直ぐ食べる事ができるので助かる。食費も少し浮くし。食後テレビを見ながらゆっくり荷造りして7:30出発。朝から鼻水鼻詰まり、風邪か花粉か分からない。

 

豪華な遍路休憩所

国道を歩く

住宅地の通りを歩いていると、小さな日本庭園風の遍路休憩所に目が留まる。随分と贅沢なつくりの休憩所。疲れていれば利用していたがまだ歩き始めたばかりなので素通り。暫く遍路道は国道上に続いていて、たまに国道と並行する住宅地の道に入ったり出たり。基本は国道。空は晴れているが薄雲が掛かり、昨日のような強い日差しは無く快適。ただ、右足首とふくらはぎに痛みのような疲れのようなものがあるのでペースはゆっくり。

暫く平坦な道が続き、上り道になり始めた所に立つ案内板に目に留まる。この先に約1.1kmのトンネルがあり歩道が狭いと。わざわざ案内板を立てるくらいなので、これまで何度も通過してきたような歩行者に優しくないトンネルだという事は想像できる。車がスピードを出して自分の真横をかすめていくようなトンネルを1kmも歩くのはしんどい。トンネルの迂回路の峠道、というか正規の遍路道もあるのだが、そちらはトンネルを歩くルートの約2.5倍の距離がある上、遍路地図で確認すると標高470mの山越え。トンネルなら一直線に進める所をわざわざ山越えする気にはさすがになれないし、不調な右足へ極力負荷を掛けたくないので結局トンネルを通る事に。

トンネル入口の手前には反射タスキが入った箱が設置されてる。これが設置されている場所すなわち危ないトンネル。歩道というか、車道の白線外側の狭い路肩部分を歩いていく。こもった轟音と共に車が近づいてくる度に緊張が走る。本当にこういうトンネルは歩きたくない。

命のタスキ

ガードレール付きの歩道が欲しい

トンネルを抜けると周囲に山々を見渡す風景が広がっていて、思ったよりも標高の高い所にいることに気付かされる。やや曇っているにしてもやたらと遠くの景色が霞んでいる。時期的に黄砂の影響だろうか。そして途中パラッと小雨が降る。薄雲が掛かっている程度で雨が降るような空模様には見えないが、山の天気は分からない。トンネルから暫く緩い下りが続き、右足に気を配りながらもややペースを上げて歩いていく。

周囲の景色が霞んでいる

先に見える山の山頂付近が色鮮やか

11:00頃には薄雲が晴れ、青空の広がる快晴に。それでもジリジリと厳しい陽射しではなく、昨日と比べるとだいぶ楽。足の痛みにも慣れて(感覚麻痺?)体力的にも余裕があり順調に歩いていると、正面に見える山の山頂付近が何やらピンク色。どうやら花のよう。これはかなり気になる。車旅だったら山の上まで行って確かめてみるところだが、さすがに寄り道であの山の上まで歩いて登るのは無理。カメラでズーム撮影するだけで我慢…

街に入り古い建物が並ぶ通りを歩いていると、空き缶で作った風車があちこちの軒下で回っていることに気づく。そういえば、四国遍路を始めてから度々見かけている気がする。関東では見た記憶が無いので、四国の流行?だろうか。

古い建物が並ぶ通り

空き缶風車をよく見かける

肱川(ひじかわ)

大洲城

街の中を流れる川に架かる橋からは眺望の利いたいい眺め。そして城の天守閣が見える。遍路地図で確認してみると、大洲市の肱川に大洲城。観光客の姿が多いのでメジャーな観光スポットだろうか。毎日ひたすら歩いているとたまには息抜きにのんびりと観光したい気分にもなるが、一度でもそんな事をしたらダラダラと後を引く事になりそうな気がする。今回は観光を楽しむ旅行ではなくあくまでも修行の旅(大げさ)なので、その辺のメリハリははっきりつけたい。

そのまんまだけどいいの?

お接待の弁当で腹ごしらえ

ひたすら国道を歩き、14:00を過ぎた辺りから空腹で気力が低下し始めペースが極端に落ちる。と、「カラオケ喫茶 ドラえもん」という店が目に留まる。あまりにもそのまんまだけどいいのだろうか(著作権的に…)。そのすぐ先の店の外のベンチに座り、お接待でいただいた弁当を食べる。やはりお腹が空いた時に直ぐに食べられるのはいい。そして食事はパンよりもご飯の方が力がつく気がする。空腹時に店が無い時に備え、カロリーメイトとウィダーインゼリー以外にも菓子パンを1、2個常備するようにしている。本当は菓子パンではなくコンビニのおにぎりにしたいところだが、おにぎりは賞味期限が短いのでいつ食べるか分からない非常食として持ち歩くには不向き。

国道を離れ集落を歩く

細い農道を歩く

弁当を食べた場所から遍路道は国道を離れ、民家が数軒並ぶ細道を通って、草木が生い茂る農道に入る。野原のような少し開けた場所に出ると、道にワンボックスカーが停まっていてご夫婦が農作業?をしていて、奥さんと目が合ったので挨拶。ご主人は車の陰にいて気付かれなかった。車を通り過ぎ20mほどしたところで後から「お遍路さーん」と男性の声。振り返るとご主人が小走りでやってきた。

突然何かと思いこちらもご主人の元へ向かうと、「これでジュースでも買ってください」と500玉を差し出される。おそらく奥さんから自分が通った事を聞かされたんだと思われ、それでお接待をするためにわざわざ走って来た事に驚き、ジュースと言われ100円と思いきや500円だった事にも驚き、そして心からお遍路を敬う気持ちに驚く。こういう人が四国遍路の文化を支え、また巡拝者を支えているのだなと毎度思う。人から物をもらう「お接待」という風習に最初は戸惑いながらも、巡拝を続けて何度もお接待を受けているうちに慣れてしまっていたが、自分の事など何も知らない見ず知らずの人が、自分が「お遍路」というだけで厚意で声をかけ何かをくれるという事は本当にありがたいし、素晴らしい風習だと思う。お接待という無償の施しに対しての感謝を忘れてはいけないと改めて思った。

四国のみちを歩く

山あいの国道を歩く

四国遍路の結願までに、経験のためにも野宿は最低でも5、6回はしておきたいと思っていた。折角寝袋を買ってかさばる荷物を増やして持ち歩いている訳だし、荷物の軽量化のためにも使わないなら捨ててしまいたい…というのも本音のひとつ。しかし距離的には全行程の半分を過ぎているのにまだ3回しか野宿をしていない。それと善根宿や通夜堂のような無料の宿ももっと有効利用したいと思っていたが、それに関してはまだ1度しか利用していない。なので野宿か無料宿の利用のどちらかを実行しようと決めていた。

山あいの何も無いところにお遍路無料宿

中にはいろんなものがある

朝出発した宿から約45〜50kmの間に、無料で宿泊できる通夜堂と道の駅が1軒ずつあるので、そのどちらかを利用しようと考えていた。そんな感じで山あいの国道をボチボチ歩いていると、何も無いところにポツンと建つお遍路無料宿があった。中を覗いてみると結構広く、畳に布団もあり快適そう。是非とも利用したいところだが、時間はまだ16:20。打ち止めするにはまだ少し時間が早いし歩く余力もある。お遍路無料宿の中で休憩しながらどうしようか暫く考え、結局この無料宿には泊まらず先へ進むことに。

いつの間にか右足首の痛みは消えていたが、今度は左足の裏が痛くなってくる。靴下を脱いで様子を確認してみると、中指に小さなマメと小指に中くらいのマメがができていたので、安全ピンで水抜きをする。しかし水抜きして歩き出すと余計に痛みを感じるようになり歩き辛い。そして痛みをかばいながら歩いていたら左足首まで痛くなってきた。左足首もあっというまに結構な痛みになってしまい、歩く事がどんどん辛くなる。早く休める場所に辿り着きたい…やっぱりさっきの無料宿で打ち止めにしておけばよかったかなと、少し後悔。

当初からの2つの就寝候補地のひとつである通夜堂が見え、疲れたし足も痛いのでもうここで打ち止めしようと思った。が、かなり大柄な体つきに大きな荷物を背負った、顔中鬚だらけの山男みたいなお遍路さん2人が通夜堂の中へ入って行くのを見て、そのまま素通りしてしまった。2、3人しか横になれなさそうな小さな通夜堂だし、いろいろと厳しいかなと…もう道の駅まで歩くしかない。地図で確認すると約7km先。足が痛い、しかし歩くしかない。お腹も減ったし日も沈んだ、しかし歩くしかない。とにかくあと7km歩くしかない。

日没を過ぎどんどん外は暗くなり…

照明無しでは足元も見えない

19:00を過ぎると外はどんどん暗くなっていき、19:30には先が全く見えないくらい真っ暗になってしまう。山あいの田舎道で外灯も無く、足元もよく見えない。段差などでつまづいたら危ないのでLEDライトで足元を灯して歩く。空腹と疲労と足の痛みでクタクタになりながらも何とか歩き続ける。せめて飯屋で食事をして空腹だけでも満たしたいところだが、飲食店はおろかコンビニ等の売店すら目にすることは無く、ひたすら黙々淡々と歩き続ける。

 

目的地の道の駅に着いたのは20:00。随分遅い到着になってしまったが、何も無い道の駅では寝る以外することも無いので、そういう点では遅い時間まで歩いて距離を稼いだので良しとしよう。しかし1日に1箇所も札所を参拝できないと、どうも消化不良な気持ちが残る。とにかく空腹なので、こうなる事も予測して常備している菓子パン2つと、自販機で買ったカフェオレで空腹を抑える。がんばって1日歩いたシメの食事がこれだけというのも消化不良だ、胃の方ではなく気持ちが。

道の駅に到着

夕食これだけ

玄関マットの上で野宿

寝袋を敷ける手頃な場所を探すが、人目に付かず静かで床が固くない軒下というのが無く、仕方ないので通路脇の玄関マットの上に寝袋を敷く。道の駅には車中泊と思われる数台の車が停まっていて、たまにトイレに行く人が通路を通るが気にしない。通路の直ぐ側に川でもあるのか、水が流れる音がヤケに大きくて少々うるさいが気にしない。寒いのは気になるが山に囲まれた場所なので仕方ない。風が出ていないだけまだマシと思う事にする。寝る準備をしていると老夫婦のお遍路さんが挨拶をしてくれる。車中泊で四国参りをしているらしい。道の駅にいるお遍路が自分ひとりだけでは無いと分かっただけでも、少し気分が楽になる。21:00過ぎに就寝を試みるが、寒さと寝心地の悪さでなかなか寝付けず…