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2012年5月7日(月)  巡拝22日目  曇

参拝札所:44・45番

歩行距離:40.0km

合計距離:767.5km

出費額:¥7,938

合計額:¥134,625

 

横向きで寝ていて腰骨部分が痛くて目が覚めると0:30。極薄寝袋だけでは相変わらず寝心地が悪い。少しでも寝心地を改善しようと、リュックの背面に入っているスポンジを取り出して腰の辺りに敷いてみる。少しはマシになった気もするが、やはり明らかに寝心地が悪い。寝袋の下に敷くマットを買えば寝心地の問題は解決するが、これ以上荷物を増やしたくはない。この寝心地の悪さも修行の一環なのだと思うことにする。しかし眠れないまま1:00を過ぎ、寝るのはもう諦めて歩き出そうかとも考えたが、いくらなんでも深夜に歩くのは何だし、まだ3時間も眠れていないので、何とか眠るよう目をつぶり続け…

そして4:45携帯電話の目覚ましで目を覚ます。何とか少しは眠れたようだが、熟睡した気がしない。結構な空腹だったので、手持ちのカロリーメイトと自販機で買ったコーヒーで空腹を抑える。外は寒く、暖かいコーヒーが体の芯に沁みる。食事も寝床も旅館に宿泊した1日前とは天と地の差。睡眠も食事も満足にできない、こういうのをひもじいと言うのだろうか。改めて普段の当たり前の生活のありがたみを心底感じる。5:30に道の駅を出発。国道の山道を進む。左足裏のマメと足首が痛いのでかなりのローペース。

国道の山道を歩く

未舗装の山道を歩く

7kmほど国道を歩くと、遍路道は未舗装の山道へ入る。左足が辛い… 幸い直ぐに舗装路に戻り、今度は700mのトンネル。照明の間隔が広く、照明から離れると足元がよく見えないくらいに暗い。ちょっと危ない。歩道部分は車道より一段高くなっているので、歩道の無いトンネルよりはマシか。トンネル内には冷たい風が流れていて冷蔵庫の中のように寒い。車の往来は全く無く、シンとして何とも不気味な雰囲気。

長いトンネルを歩く

巡拝7日目から数日間右足の痛みでかなり苦しめられたが、それと同じくらいの痛みが今度は左足に起きている。少しでも痛みを和らげようと足首や足の裏にシップをしているが、あまり効果を実感できない。それでも何もしないよりはいいと思われ。歩いていると足の裏に貼ったシップがずれてくるので、途中で貼りなおす。そんな辛い状態で未舗装の峠道へ。勾配のきつい登りも辛いが、足先に負担のかかる下りの方が指にできたマメが刺激されてもっと辛い。お腹も空いて力が出ず、3.5kmほどの峠道が途方も無く長く感じる。

44番へ

未舗装の峠道に入る

まだまだ道は続く

空腹と足の痛みに耐え何とか峠越えをし、国道の通る町へ出る。とにかくまずは食事がしたくて、遍路道沿いにあるうどん屋に目が留まるが営業していない。すぐ先にもう一軒うどん屋があったがそこも営業していない。どちらも廃業している様子。不景気や人口減少が影響しているのか、遍路道沿いに構える飲食店で営業していない店舗が本当に多い。仕方なく通り掛かったコンビニで弁当を買う。コンビニ弁当やパンではなく、ちゃんとした食事を腹いっぱい食べたい気分。

山に囲まれた町

コンビニの外にあるベンチに腰掛け弁当を食べる。今晩は宿に宿泊して宿の食事が食べたい、それに温かい風呂に入って温かい布団で寝て体を休めたい、ということで弁当を食べてから宿の予約。札所がある町なので国道沿いに5軒の遍路宿があり、2軒目の電話で部屋を取る事ができた。ここから四十四番、四十五番までの遍路道は打戻りなので、宿にリュックを置いて身軽にしてから巡拝するため宿へ直行。20分ほど歩いて11:45に宿に到着。

予約した宿は、遍路宿にしては随分小洒落た感じの建物。1階は食堂になっていて、これまた雰囲気のいい内装。これはちょっと宿泊料が高いのではないかと心配になる。宿を電話で予約する時にいちいち宿泊料は聞いていない。遍路地図に掲載されている遍路宿なら極端に高い宿は無いだろうし、ほとんど当日予約なので値段で選んでいたら部屋など取れない。それにしても、「でんこ」なんて変わった名前の宿だなと思ったが、食堂のトイレを借りた時に宿名の意味がわかった。「でんこ」とは「でんち(チャンチャンコの事)」、つまりでんちを着た子ども達を「でんこ」と呼びます…と、トイレの中に説明書きがあった。

やすらぎの宿でんこ

リュックを宿に置いて第四十四番札所へ向かう。札所は町外れにあり宿から2kmほど。重いリュックが無い分足取りは軽い。途中民家の間に建つ山門が。遍路地図には「大宝寺山門」と書いてある。しかしこれから向かう札所は「大寶寺」。読みは同じだが漢字が違う。地図を見る限り「大宝寺」という寺は無い。少し気になったがそれ以上は気にしない。

町外れの札所へ向かう

民家の間に建つ山門

 

12:20第四十四番札所大寶寺に到着。「大宝寺」の山門とは別に「大寶寺」の山門がちゃんとあった。うっそうと茂った林の中に隠れるように佇む、という感じの札所。大寶寺でやっと、全八十八箇所ある札所の半分まで参拝したことになる。第一番札所霊山寺からの巡拝距離を考えれば折り返し地点は過ぎているが、それよりも感覚的には八十八番まである札所の半分のここまで来て、やっと折り返し地点まで来たという実感が湧く。ここまでの道のり、思い返してみれば長いようであっという間だった。しかしいろいろな事があって、いろいろな事を経験して、いろいろな人との触れ合いがあった。

第四十四番札所 大寶寺(だいほうじ) 山門

大寶寺 本堂

大寶寺 大師堂

 

大寶寺からは山道。13:00頃から小雨が降り始める。暫くして雨は本降りになり、また直ぐに小雨になり…かなり不安定な空模様を心配しながら歩く。重いリュックが無いので最初は随分と楽だったが、それに慣れてしまうと朝から続いている足の痛みが気になり始め、次第にペースは落ちていく。出来れば17:00頃には宿に戻りゆっくり過ごしたいと思っていたが、どうも怪しくなってきた。

大寶寺から未舗装の山道を1kmほど歩いて県道に出る。県道はアップダウンの繰り返しの山道。そんなにきつい勾配は無いが、足の痛みと疲労感がどんどん増していき、気力も落ちてかなりしんどい。遍路道からの景色は単調な山々の眺めだけで、景色を楽しんで気を紛らわす事もできない。途中屋根付きのバス停のベンチに腰掛け休憩していたら、うとうとして少し眠ってしまった。心身共にかなり疲れているらしい。20分ほどバス停で休憩して再び歩き始めるが、体がダルく気力も無く、野宿で寝不足のせいか眠気もあり、本当に疲れ切った状態。歩くのが辛くて仕方ない。そんな状態でトボトボ歩いていたら次の札所に着く予定時刻を過ぎてしまい、焦りも出始める。この調子だと宿に戻る時間が遅くなってしまい、夕食の準備に迷惑を掛けてしまう。とにかく歩くしかない。音を上げたい気持ちと先へ進もうとする気持ちの葛藤。

 

あと20分…

上り坂が続く

心身共にクタクタになりながらも、予定より1時間遅れでようやく札所に到着。…と思ったら、参道入口に着いただけで寺まであと徒歩20分との案内板が。精神的にもかなりしんどい状態で歩き続けてやっと札所に着いたと思っただけに、あと20分の道のりは辛すぎる…しかも急な上り坂が続く。

それにしても、参道入口の坂道にはいろんな案内板があって賑やか。しかしそれを楽しむ余裕は残っていない。行きは写真を撮る気力もなく、参拝を済ませ一段落した帰りに撮影。本当に疲れている時は、カメラを取り出し立ち止まって写真を撮る行為すらしんどい。

重い足取りで上り坂の続く参道を進んで行き、そしてやっと山門に着いた!と思ったが、道はさらに上へと続いている。もう本当に勘弁して…

第四十五番札所 岩屋寺(いわやじ) 山門

山門からさらに上り道が続く参道

参道に並ぶ石仏

山門から10分ほど歩くと、目の前に垂直に切り立った岩壁が見えてくる。大小の窪みがたくさんある特徴的な岩。その岩壁の前に本堂と大師堂が。予定より約1時間半遅れの15:40、第四十五番札所岩屋寺に到着。体力的にも精神的にも本当に厳しい道のりだった。

特徴的な岩壁

岩屋寺 本堂

岩屋寺 大師堂

大師堂の真横にある岩壁に梯子が立てかけられていて、見晴らし台のような場所へ登れるようになっている。もう本当に疲れていたので最初は登る気は無かったのだが、後から後悔しそうなのでやっぱり登ってみる。梯子は垂直に近く、疲れで気が抜けて足を踏み外さぬようかなり注意して登る。ここから落下したら間違いなく四国参り終了… 上まで登ると何やら祀りものが。眺めは周囲の山々が見えるだけだった。

大師堂の真横の岩壁

垂直に近い梯子

梯子の上にあるもの

疲れているのにもうひとつ気になるものが目に留まってしまった。洞窟のような穴の入口。「かなえる不動」と書かれている。中に入ると狭い通路が奥へ続いているがほぼ真っ暗。ライトを照らして奥へ進んで突き当たりまで行って、写真を1枚撮ってすぐ引き返す。もう一刻も早く宿に戻る事しか頭の中に無い。

かなえる不動入口

不動の中は真っ暗

突き当たりの様子

 

早く宿に着いて体を休めたい、温かい湯に浸かって心身の疲れを癒したい、そして何よりちゃんとした食事をしたい。その一心で岩屋寺からの打戻りはペースを上げて黙々と歩く。いつの間にか足の痛みがだいぶ引いていて、1時間20分休憩無しで歩いて7km進む。しかしさすがに疲れて一休み。ペースは悪くないがそれでも宿に着くのは19:00頃になってしまいそうなので、宿に電話してその旨を伝える。それから宿までの5、6kmの道のりはただひたすらしんどかった… 岩屋寺から宿までの打戻りでは、第四十四番札所の大寶寺には寄らないので途中から往路とは別の道。大寶寺から歩いた山道は通らずそのまま県道を進む。

往路との分かれ道のすぐ先にはトンネル。また歩道の無い危険なトンネルで、入口前には反射材の付いたタスキが入っている箱がある。が、蓋を開けると中は空っぽ。おそらく皆岩屋寺からの打戻りで通るため、出口側にタスキが溜まっていると思われ。仕方ないので反射材無しでトンネルへ。リュックには反射材が付いているのだが、宿に置かせてもらっている。疲労と空腹で足元がふらついて車道に出ないよう気をつけてトンネル内を歩く。

歩道の無いトンネル

本当に危険なのだ

 

宿に到着したのは18:50。当初の予定では17:00頃の到着を見込んでいたが、大幅に遅れてしまった。もう本当に疲れ切っていて、1階に置かせてもらっていたリュックを2階の部屋へ持っていくのもしんどい。こんなに酷く疲れたのは何日振りだろうか。そしてとにかく空腹でたまらなかったので、入浴の前に食事の用意をしてもらう。他の客はすでに食事が済んでいるようで、広い食堂には自分1人だけ。宿の到着が遅れて厨房の人に迷惑をかける事になってしまった。

宿泊する部屋

良い雰囲気の食堂

待ちに待った食事

ご飯桶を空にする

夕食は見た目からして食欲をそそる料理。お盆やお皿もお洒落で、ちょっとお高い小料理屋の食事のよう。栄養の偏ったコンビニ弁当や菓子パンとは天と地の差だ。ありがたい食事をしっかり味わいつつ、我慢してきた空腹と食欲を満たすため夢中で口の中へはこんでいく。ご飯は大盛り4杯食べて、ご飯桶を空っぽにしてしまった。こんなにご飯を食べた事は今までに無い。未だかつて無い自分の食欲に驚く。食後直ぐに入浴し、洗濯機と乾燥機を回して荷物整理まで終えて、そして翌日の計画を遍路地図を見て考え、一段落したのがほぼ23:00。ゆっくりとした時間を過ごす間もなくそのまま就寝。本当に疲れた1日だった。ちなみに宿泊費は6,300円と、心配したほど高くなくて安心した。