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2012年5月8日(火)  巡拝23日目  曇

参拝札所:46・47・48・49・50・51番

歩行距離:35.5km

合計距離:803.0km

出費額:¥4,362

合計額:¥138,987

 

朝食

6:20起床、6:30過ぎから朝食。朝食はこれまでに宿泊した宿で出されたものの中で、おそらく一番ボリュームのある食事。朝からこれだけ食べればお腹も心もほっこり。俄然やる気も出る。食後は部屋でテレビを見てゆっくりして、7:50に出発。

 

国道を歩く

天気は昨日と同じようなすっきりしない曇り空だが、涼しくちょうどいい気温。しっかり朝食もとった事だし、昨日よりも張り切って歩こう!と思ったのだが、昨日の疲れがあまり取れていないようで、歩き始めて直ぐに足がだるくなりペースが上がらない。おまけに遍路道の国道は緩い上り坂が続き、少しずつ標高が高くなっていく。それでも歩いているうちに足が慣れてきて、疲労感も次第に薄れていきペースが上がっていく。何でも慣れなんだ、慣れれば何とかなるものなんだ。そう思ったのだが…

1時間半ほど国道を歩いたところで、遍路道は未舗装の山道に入る。山道を入ってすぐに目を惹く看板が。第五十一番札所の近くにある「ふじ屋」という1泊2000円の宿。インターネット・洗濯機・シャワー等が付いてこの値段は安い。ちょうど五十一番まで参拝を済ませる予定だったので、ここに宿泊しようと考える。しかし男女別ドミトリーって何?この時はまだドミトリーの意味を知らなかった。そして山の中の木々に囲まれた遍路道は下りが続く。せっかく調子が良くなってきた足だが、岩や木の根でボコボコな道が続いて足への負担が大きく、次第にペースが落ちていく。遍路地図で道のりを確認してみると、国道を歩いて標高700mの山の上まで来ていて、今度は未舗装の山道を歩いて標高300mまで下りなければならない。疲れた足にこれはしんどい。この山道は旧街道で、昔の人は町から町へ移動する時この道を通っていたらしい。道路が整備され車で何処へでも行ける現代がいかに便利かを実感させられる。

2000円は安い

僅か2kmほどの道のりで標高700mから300mまで下る山道だったため、昨日から調子が悪かった左足首がかなり痛くなってしまい、それをかばいながら歩いていた右足まで痛くなってしまう。両足が痛くてかなり辛い情況に陥り、予定通り第五十一番札所まで行けないのではないかと焦りが出始める。しかしとにかく足が辛い。出来るだけ足に負担がかからないよう、岩や木の根の無い場所や草の上を踏んで歩く。それでもやっぱり足がどうしようもなく痛く、変な歩き方になってしまう。そんな状態でも何とか歩き続けやっと舗装路に出る。しかし…

未舗装の山道

昔は皆ここを歩いた

獣が出て来そう

何だか様子がおかしい。遍路道を示す案内板やシールを全く目にしないし、歩いている道と遍路地図に示されている道と違う気がする。そう思いつつも暫く歩いて、やはり明らかに道を間違えている事に気付く。そういえば途中分かれ道があったがあそこで間違えたか、と。あまりに疲れていてよく確認せずに通り過ぎてしまった。しかしそこまで戻るには1km強の上り坂を歩かなければならない。もう本当に疲れていて無駄に上り道を歩く気力など無く、しばし呆然… 何とかならないかと遍路地図をよく見てみると、そのまま進んでも遍路道と合流できる道があることに気付く。しかも本来歩く遍路道との距離的なロスもほぼ無し。助かった、本当に助かった…

にょろーんと出てきたよ

間違った道を歩く

何とか軌道修正はできたものの、遍路道から大きく外れた道を歩くのは不安なもの。当然道しるべは無く、遍路地図上のここを歩いているはず、いやこの道で本当に合っているだろうか、ちゃんと遍路道に戻れるだろうか…と心配しながら歩く。誰か人に聞こうと思っても、全く人通りが無い。疲労と不安に加えて空腹感も出てきたので、道路の隅に腰を下ろしカロリーメイトをかじる。炭酸飲料で空腹をごまかそうと思ったが自販機も無い。このひもじさ、普段の生活では体験できない。ところで、四国遍路も後半戦に入っているが道を間違えたのはこれが初めてな気がする。

 

道を間違えながらもほぼ予定通り、12:00に第四十六番札所浄瑠璃寺に到着。しかしすでに疲労と足の痛みでクタクタで、計画通り17:00前までに五十一番まで行ける気が全くしない。日数を重ねるうちに足が毎日歩く事に慣れて痛くなくなると思っていたのだが、20日間程度では駄目らしい。重い荷物を背負って毎日数十キロ歩く事が、いかに足に負担のかかる事であるか、改めて実感させられると共に、思った以上に自分が非力である事にも痛感。

第四十六番札所 浄瑠璃寺(じょうるりじ) 山門

浄瑠璃寺 本堂

浄瑠璃寺 大師堂

 

浄瑠璃寺で暫く休憩したい気もあったが、次の札所までは僅か1km程度とすぐ側なので、休憩せずに浄瑠璃寺を出発。しかしやはり足が痛い。特に左足首の痛みが辛く、こんな状態で無理して歩き続けて大丈夫なのかと少し心配になる。

 

浄瑠璃寺から15分ほど歩いて第四十七番札所の八坂寺に到着。さすがにここでは一休み。足が痛い…ただそれだけ。それでも先へ進もうという気持ちだけはある。何故なら、第四十六番札所の浄瑠璃寺から第五十一番札所までの六つの札所は、それぞれ間隔が1km〜4.5km程度とかなり近い。これだけ札所が近くに集合している場所は久しぶりなので、巡拝意欲も上昇。ただ足が痛い…

第四十七番札所 八坂寺(やさかじ) 山門

八坂寺 本堂

八坂寺 大師堂

 

八坂寺から次の札所までは約4.5km。八坂寺で休憩して少しは足の痛みが引いた気がしたので、4.5kmくらい休憩無しで行けるだろうと思ったが、やはり足の痛みが辛く札所の1kmほど手前で休憩。左足首がかなり辛い…歩きたいのに思うように歩けないもどかしさ。それでも一応1km約15分のペースで進んでいるのは、四十六番から平地が続いているお陰か。

しつこいくらいの道しるべ

閑静な住宅地を歩く

 

13:40に第四十八番札所西林寺に到着。足の痛みに苦しめられつつも意外と順調に進んでいる。今日は水曜日で巡拝24日目だよな、と朝から思っていたが、実際は火曜日で巡拝23日目である事にここで気付く。メモ帳に毎日記録は付けているが、それでも日にちも曜日も関係なくただただ毎日歩き続ける日々を送っていると、曜日と日にちの感覚が麻痺してしまう。四国遍路とは俗世間から外れ求道するものである、なんてね。

第四十八番札所 西林寺(さいりんじ) 山門

西林寺 本堂

西林寺 大師堂

 

普通な街中を歩く

西林寺から次の札所も約3kmと近い。遍路道は道後温泉のある松山市内に近づいて行き、景色もマンションや商店を多く見かける街の風景に。大きな街へ入るのは随分久しぶりな気がする。別に市内の何処かに立ち寄ったり観光したりするつもりはないが、何故か気分が高まり疲れた足もキビキビと動く。無意識に普段の生活で慣れ親しんでいるような街が恋しくなっていたのかもしれない。

 

予定よりも少し早い14:50、第四十九番札所浄土寺に到着。辛い左足首の痛みはいつの間にかだいぶ引いて(と言うより感覚がマヒして?)、思ったよりも順調に進んでいる。しかし今度は左足小指の痛みが気になり始めた。常に足の何処かが痛く、その痛みを我慢しながらの巡拝が常になっているこの情況を何とかしたいところだが、痛みが引くまで足を休ませない限りどうにもならない。とにかく予定通り五十一番まで納経を済ませたいので、休憩も程々に先へ進む。一度決めた目標は辛くても達成させる、そういう気持ちを持って巡拝する事も精神修行のうち。

第四十九番札所 浄土寺(じょうどじ) 山門

浄土寺 本堂

浄土寺 大師堂

 

浄土寺から次の札所までは僅か1.7km。札所間が短く1日に何箇所もの札所を参拝していると、実際に歩いた距離は短くても順調に進んでいる感じがして気分も高まるので、足が痛くても結構頑張れる。歩き遍路の四国巡礼は、肉体面だけでなく精神面でも足取りに大きな影響を与えるもの。心身共に修行。

 

第五十番札所の繁多寺に15:30到着。境内はバスの団体参拝客でいっぱい。1つ前の浄土寺でも同じ団体と重なってしまい、参拝や納経がもたついてしまった。それでもかなり順調。当初の計画通り17:00までに、五十一番で納経を済ませる事ができそうな感じになり、気分も一層高まる。バスツアーのお遍路さん達に負けていられない、気合と根性で歩くんだ!

第五十番札所 繁多寺(はんたじ) 山門

繁多寺 本堂

繁多寺 大師堂

 

そして16:30、第五十一番札所の石手寺に到着。午前中は山道で足の痛みに苦しめられ、道も間違えて計画通り五十一番まで参拝するのは絶対に無理だと思っていたが、それでも諦めず前向きに歩き続けてよかった。目標を達成するために最後まで諦めずに努力する事が大切なんだなと改めて思った。何事も簡単に諦めたり無理だと決めてしまうのは良くない。巡拝3日目に歩いた第十一番札所からの遍路転がしで、次の札所まであともう少しというところで諦めてしまった事を思い出す。

参道入口

第五十一番札所 石手寺(いしてじ) 山門

松山市内の道後温泉近くのお寺ということで、屋根付きの参道は仲見世になっていて観光地的な雰囲気。それでも時間が遅いからか参拝客の姿は少なく、仲見世のほとんどが店じまいをしているところだった。参道を進んだ先にある鐘楼堂は「パワースポットその一」らしい。ますます観光地っぽい。参拝中に他のパワースポットは目にしなかった。

観光地っぽい

修行だよ!

境内の様子

石手寺 本堂

石手寺 大師堂

納経所が閉まる時間が迫っていたので先に納経を済ませ、ベンチに腰掛け一休みしてから参拝。石手寺に着く少し手前から、大きな弘法大師像?が見えた気がしたが境内からは見えない。少し気になるが探し歩く気力は無いのでまぁいいやと。しかし境内で他に気になるものが目に留まってしまった。「地底マントラ」という穴の入口。入口の横には「マントラ仏の生命の流れ案内」と書かれた案内板が。何だかマイナーで趣旨のはっきりしないテーマパークにありそうな雰囲気。しかし気になって仕方ないのでサクッと覗いてみる事に。

地底マントラ入口

マントラの通路

マントラの中間あたり

マントラの中は洞窟のようになっていて、長い通路が奥まで続いている。とりあえず突き当たりまで行ってみないと気が済まないので、先へ先へと進むがまだまだ続いている。そして突き当りではなく出口があって外に出てしまう。国道が通る参道側とは打って変わって、1本の細道があるだけで何も無い寂しい感じの場所…

マントラ出口

と思ったら、道路の向かいに何やら怪しい物体が。閻魔大王のような像が乗った門がある。門の上部には英文字の看板、しかも壊れている。何かいかにも不人気で廃墟になったテーマパーク的な雰囲気。実際はどうなのか分からないが、門の先へ進んで確認する元気など無いので、マントラを引き返し境内に戻る。そして午前中に道中で目に留まった「ふじ屋」に電話して予約を入れ、宿のある道後温泉方面へ向かう。

怪しすぎる…

 

道後温泉駅

坊ちゃん列車

松山市内を走る路面電車の駅、道後温泉駅にたどり着く。駅の横には坊ちゃん列車が停まっていた。これ、夏目漱石の小説「坊ちゃん」で、主人公が乗った「坊ちゃん列車」を復元したもの。SLに形を似せたディーゼル機関車。半年前に車中泊旅行で四国一周をして松山に立ち寄った時に、大通りをこれが走っているのを目にして驚いた事が記憶に新しい。それにしても、夏目漱石の坊ちゃんがどうしてそんなに名作として扱われるのか、一度読んだ事はあるが文学に縁の無い自分には分からない。

 

駅から住宅地の細道に入って直ぐのところに宿はあった。半世紀くらい前に建てられたような平屋建ての民家に見えるが、どうやらここで間違いない。看板もあるし、辺りを見回しても他に宿らしきものもなく… この手の宿泊施設は利用した事が無いので玄関前で一瞬戸惑ったが、これもいい経験になるだろうと玄関の戸を開ける。するとオカッパ頭の何だか自由そうなにーちゃんが出てきて、二段ベッドがふたつある8畳ほどの部屋に案内される。こういう共同宿泊施設をドミトリーと言うらしい。とりあえず2000円で空調の効いた部屋の布団で寝られるのだから、これで十分ありがたい。薄い寝袋で野宿をし、寒くて寝心地の悪い不自由な思いを経験したので尚更そう感じる。部屋には先客が1人、中年男性のお遍路さん。

旅の宿 ふじ屋

ドミトリーの室内

時間は17:30を過ぎ、昼は菓子パンを食べただけで食事らしい食事をしていなかったのでかなり空腹。なので部屋に荷物を置いて食事をしに外へ出る。道後温泉駅前からアーケード商店街が続いているので入ってみる。薬局があったのでとりあえずシップを買っておく。シップは足が痛くなった時の必需品になってしまった。本来の用途以外にも、足の裏にできたマメに貼ってクッション代わりとしても使える。シップは切らせられない。

道後温泉駅前

道後温泉

アーケードを進んでいくが意外と飲食店は少なく、道後温泉の目の前に出てしまう。実は道後温泉にも2000円で素泊まりできるのだが、何だか精神修行の遍路旅にはそぐわない気がするし、庶民的な宿での宿泊を経験しておきたかったので、あえてふじ屋を選んだ。そういう点でふじ屋は大当たりと言える(笑)。それと道後温泉での入浴は半年前の旅行でしていて、自分には湯が熱くてゆっくり入浴できなかったので、入浴だけというのもパス。アーケードを引き返す。

本当は手頃なご当地グルメ的なものを食べたかったが、商店街にはそれらしい店は見当たらず、アーケードを出て店を捜し歩くのも面倒なので、目に留まったラーメン屋に入る。旅館や民宿に宿泊した時に出される食事はありがたいものなんだなと、改めて実感。定食っぽいものを食べたかったので、ラーメン・じゃこかつセットというものを注文。

食事を済ませ宿に戻ると、オカッパの従業員ともう1人、宿の経営者が居間にいた。経営者も割りと若くて、何となくイチロー似の自由そうな感じの人。居間で2人と遍路話や雑談をしていると、先客のお遍路さんが入ってきて情報提供タイムの始まり。その人は先達さん(四国八十八ヶ所霊場会公認の遍路先導経験豊富な案内人)なのだが歩き遍路の経験は無いらしく、遍路参りそのものよりも情報収集が趣味との事。おかげで宿や遍路道についての情報をたくさんもらうことができた。やはり遍路知識豊富な人から情報をもらうのが一番。

居間

それからもう1人、お遍路ではない普通の宿泊客がチェックイン。居間や寝室を行き来して宿の人や宿泊客といろいろと話をして、何だか友達の家に泊まりに来ているような感覚になってくる。アットホームな雰囲気でとても楽しい。2人の宿泊客がどちらも感じの良い人でラッキーだった。

2人の宿泊客が食事などで外へ出てからシャワーを浴び、自分の宿泊スペースである二段ベッドの上段でゴロゴロしながら、遍路地図を眺めて翌日の計画を立てる。両足裏にマメができていて左足首にはまだ痛みがあり、それが翌日にどう影響するのか心配しつつ、23:00就寝。