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2012年5月9日(水)  巡拝24日目  曇のち晴

参拝札所:52・53番

歩行距離:43.7km

合計距離:846.7km

出費額:¥6,863

合計額:¥145,850

 

4:30起床。大きないびきで夜中に一度目が覚めたが、しっかり熟睡することができた。他の宿泊客を起こさないようにそっと寝室を出て居間へ行き、着替えをして荷物をまとめて5:00出発。外は曇り空で小雨がパラついていたがすぐに止む。気温は高く生暖かい。道後温泉駅に出てアーケード商店街を歩く。全ての店が閉まっていて人通りが全く無く、外灯だけが灯されたアーケードを歩くのは変な感じ。アーケードを出て遍路道に合流。

誰もいない商店街

街中を歩く

何となく予想はしていたが、市街地と郊外や田舎とではお遍路に対する温度差があるようだ。街だと人とすれ違っても挨拶されたり声を掛けれらる事は滅多に無い。目が合うと大抵の人が目をそらす。遍路姿の自分が周りの人に横目でジロジロ見られているような気がして、何だか肩身が狭く居心地が良くない。なのでこちらからも声を掛けられない。四国参りで歩く道は、風景も人柄も穏やかな田舎道の方がいい。

宿を出て1時間半ほど歩いたところで朝食。出来れば安いファミレスか牛丼屋で定食を食べたかったが、そのような店が見当たらず空腹が限界に来たのでコンビニへ。そして定食代わりに弁当ではなくパスタを購入。宿の食事や外のうどん屋など、どうしても和食ばかりになるのでたまには洋食も食べたい。それはそうとして、コンビニで食べ物を買って外で食べるのは出来るだけ避けたいもの。コンビニ外のベンチや駐車場の片隅に腰を下ろして1人でこそこそと食べるのは、虚しいというか疎外感があるというか、あまりいいものではない。

ちょっと足りない

朝食を食べたコンビニ辺りから街の風景は途切れ、田園風景のある落ち着いた町並みになっていく。何だかホッとした気分。と、便意を催してあと2kmほどで着く札所まで我慢できそうに無いと思い、通りがかった小さな神社に運良くトイレがあったので入る。しかし和式。足を酷使する歩き遍路とって和式便器は疲れる。普段洋式しか使わない自分には特にしんどい。

街を抜け出して田園風景を歩く

山門手前に建つ一ノ門

札所まで1kmを切ったところに、「一ノ門」という質素な門が道路に建っている。一ノ門からは数百メートル先にある山門が見える。一ノ門をくぐって山門へ向けて歩いていると、飲料の自動販売機と民家の壁に貼られた貼り紙に目が留まる。いろいろな思いを背負って巡礼しているお遍路へ向けた、格言のようなものだろうか。どちらも文章は短く簡単なものだが、とても深く重みを感じる。

とりあえず生きないとね

がんばった自分を褒めよう

 

第五十二番札所 太山寺(たいさんじ) 山門

第五十二番札所太山寺に7:40到着。と言っても正確には山門に到着。本堂までは山門から続く長い坂道を上っていかなければならない。しかも途中にかなり勾配のきつい場所があり、疲れた足には結構辛い。もう勘弁してっ、というくらいの急勾配。これも修行のための道なのかっ、と勝手に解釈し納得して頑張る。山門から本堂までは4、500mくらいだろうか。随分と大きな寺。

境内の様子

大きい寺なので観光地としても有名なのか、たまたま団体客と重なっただけか、境内には多くの参拝客。本堂と大師堂での参拝を済ませ、納経所へ行くため山門から上ってきた急坂を3、400mほど戻る。本当に広くて立派な寺だ。いったいどんだけ儲かっているんだ、なんて雑念を持ってはいけない。

太山寺 本堂

太山寺 大師堂

 

太山寺から2.3km歩いて第五十三番札所の円明寺に到着。とりあえず出だしは順調ではあるが、モチベーションは上がらず気力が無い状態で、精神的にしんどい。毎日毎日歩き続けて24日目、歩く事に飽きてしまっていても不思議ではない。それでもまだまだ毎日歩かなければならない。正に精神修行。

第五十三番札所 円明寺(えんみょうじ) 山門

円明寺 本堂

円明寺 大師堂

 

円明寺を出て少し歩いた所で、また格言が書かれた貼り紙を発見。書かれている内容については十分解っているつもりだが、それを実行したり実感する事はなかなか難しい。しかし本当にいい格言集だ。他にも沢山あって本になっていたりするなら読んでみたい。

思い切って四国遍路という新しい事をやっているよ

松山市街を完全に離れ、緑色の風景が広がる町を歩いていると、すれ違う人から声を掛けられるようになる。やはり街の中と外では全然違う。多くの人がいろいろな言葉を掛けてくれるが、一番多いのは「ご苦労様です」。確かにいろいろ苦労しているが、特に信仰心も無く好きでやっているだけなので、逆に恐縮してしまう。でも一言でもそういう励ましの言葉をもらえると、がんばろう!って思える。言葉の力は大きい。

郊外の住宅地を歩く

海沿いを歩く

円明寺から3kmほど歩いて海に出る。磯の匂いが心地よく感じる。暫く山間部ばかり歩いていたので、青い海のある風景が新鮮で気分も高まる。しかし2kmほど歩いて道は海から離れてしまい意気消沈。軽くなった足もまた重くなる。人の体は心に左右されやすい事を改めて実感。この場合は自分の心がヤワなだけなのだが…

お接待

閑静な住宅地の中を歩いていると、自転車に乗ったヤクルトレディに声を掛けられ、冷えたヤクルトをお接待してくれた。温かな心遣いに本当に感謝。空腹になり、手頃な飯屋は無いかと辺りを見回しながら歩くがなかなか店が無い。コンビニは避けたいし、ラーメンうどんの麺類意外がいい、と考えていたところでマクドナルド発見。たまにはファーストフードもいいかと入店。マックはかなり久しぶりなので、ジャンクフードなハンバーガーとポテトが妙においしく感じる。しかし遍路姿でハンバーガーって、自分で言うのも何だが時代が変わったものだ。

たまにはいいね

午後から快晴に

マックを出たのが13:00早朝はどんよりとしていた曇り空は次第に晴れて行き、昼には強い日差しが射す快晴に。晴れた青空は気持ちがいいが暑さはうっとおしい。そんな中もの凄く勾配のきつい上り坂に差し掛かる。しかも長い。立ち止まったら後ろに転げ落ちてしまいそうなほどの急坂。汗だくになって息を荒げて必死に前に進む。しんどい…

急坂を上る遍路の影

坂を上りきると今度は長い下り坂。暑さと足の痛みでクタクタ。坂を下りきって国道に出たところに地蔵堂があったので、お堂の日陰に腰を下ろし一休み。すると近所のおじさんに声を掛けられ少し談話。自分が野宿もしている事を話すと、周辺で野宿できる場所をいくつか教えてくれた。しかしながら入浴出来る場所は無いらしい。汗を沢山かいたので入浴したい。いずれにせよ打ち止めするにはまだ早い。おじさんが去ってからもまだ休憩していると、2日前に道中で言葉を交わしたお遍路さんに声を掛けられ談話。ほぼ同じペースで巡礼していたようだ。自分も負けていられないと歩き出そうとしたら、今度はおじいさんに声を掛けられ長いお話を聞くことに。目を背けられ避けられているようだった松山市街とは全然違う。人に声を掛けてもらえるという事は、とてもありがたい事だと改めて感じた。

快晴になり気持ちのいい風景

海沿いの国道を淡々と歩く

遍路道は再び海沿いに。快晴になり青い空と海の風景が気持ちいい。何だか元気が出てきて足取りが軽くなりペースも上がり…とはいかない。とにかく陽射しが強くて暑い。歩き遍路にとって、体力と水分を奪う強い日差しは本当に厄介。真夏なんか絶対に無理そう…

これが無ければ気付かない

暑くて疲れたので、何処か休憩できる場所はないか辺りを見回しながら歩いていると、道路脇に「お接待処 ぶじカエル」と書かれた案内板が。何処にあるのかと見回すと、案内板のすぐ手前に幅1メートルほどの小さなスペースが。とても狭いし道路脇の塀から一歩奥まったところにあるので、案内板が無ければ気付く人は少ないと思われ。お接待処には小さなテーブルとベンチ。

お接待処 ぶじカエル

陶器のお守り

テーブルにはお接待の陶器製手作りお守りがいくつか置かれている。その中のひとつにカエルの形をしたものが。ぶじカエル…無事に四国遍路をして家に帰れるように、という願掛けね。折角なので1ついただき(カエルはちょい生々しい感じなので可愛い地蔵の絵が掘られたものにした)、記帳ノートにお礼を書いて木箱に納め札を入れる。そしてベンチに腰を下ろし少し休憩してから出発。時間は15:30過ぎ。まだまだ歩く。

これで無事に帰る

ぶじカエルから歩き出して直ぐに、うしろから車にクラクションを鳴らされ振り返ると、車は自分の横で停車。運転していたのはお遍路さんで、よかったら次の札所まで乗っていかないかとのお誘いだった。その人は車で逆打ちで四国参りをしていて、一つ前の札所でうっかり納経帳に納経してもらうのを忘れてしまい、札所へ戻る途中との事。ありがたいが自分は全て歩きで巡礼している事を話し丁重にお断りした。それならばと、先ほどコンビニに寄って買ったばかりのお茶とお饅頭を渡される。折角なのでありがたく頂く。お遍路さんからお接待を受けてしまった。

お遍路さんにお接待?を受ける

黙々と国道を歩いていると、前方に1人のお遍路さんの姿。しかし後姿からして普通のお遍路さんとは雰囲気が明らかに違う。何となく職業遍路的な感じ… しかし見た目で人を判断するのは良くない。こちらの方がペースが少し速く、次第に距離が縮まり直ぐ後まで来たところで、そのお遍路さんは立ち止まり歩道脇でいきなり立小便を始めた!確かに歩行者はほとんど無いが車の通りは普通にあるし、物影に入るでも無く公然と昼間の路上で立小便はマズイでしょっ!…見なかった事にしよう、そうだ気付いてない事にしよう。目が合わないように微妙に車道側に顔を背けて足早に通り過ぎる。そして距離を引き離そうと歩くペースを上げる。少しして後ろを振り返ると思ったよりも引き離していない。向こうも結構ペースを上げて歩いているようだ。追いつかれたら声を掛けられそうな気がした。それは困る、絶対に困る。仕方なくさらにペースを上げて歩く。疲れているのに何でこんなに早く歩かなくてはいけないんだ…そしてピンチになると疲れていてもこんなにペースを上げられるのかと驚く。

製油所のある海岸沿いを歩く

泊まるつもりでいた通夜堂を仕方なく通過

ハイペースで歩き続け、後方に人の姿が無くなって一安心。道中で得た情報で、これから宿泊するのに丁度いい場所に通夜堂があり、その通夜堂に続く横道の入口に着く。しかし先ほどの立小便遍路も同じ通夜堂に泊まろうと考えていると予測。16:30をまわっているし時間的にも可能性が高い、きっとそうに違いない。仕方なく通夜堂へ続く横道には入らず国道を直進。無料宿を利用し損ねる結果になってしまった。宿泊施設が数軒ある町までさらに10km強歩くハメに。

足首の痛みが結構あり、必要以上に曲げると激痛。可能な限り足首を動かさないように歩き続け、18:00頃に宿の予約。たまにはベッドで寝たいと思いビジネスホテルにした。かなり空腹だったのでチェックインする前に食事を済ませようと、タイミングよくあったファミレスに入店。とにかく肉が食べたかったので安いステーキセットを注文。メニューの写真より肉が随分小さい気がしたが、遍路がそんな小さな事を気にしてはいけない。食後はスーパーに立ち寄り、入浴後につまむお菓子と飲み物を買って宿へ。

ジョイフルで夕食

 

ビジネスホテル来島

宿泊する部屋

予約した宿に到着したのは19:10。しかし自分が思っていた外観とは随分違っていた。これはビジネスホテルと言うより民宿に近い感じ。もしやと思いつつ案内された部屋に入ると、やはり和室に布団。しかも風呂トイレ別。これ完全に民宿じゃん… 一般的なビジネスホテルなら大抵備え付けられている冷蔵庫も無いので、スーパーで買った飲み物を冷やしておく事も出来ず。想定外だ。

日焼けでこんがり

気を取り直して入浴と洗濯を済ませ、21:00前に一段落。足の痛みや厳しい陽射しに苦戦しながらも、何だかんだで40km超歩いてしまった。ここまで24日間で約850km歩いてきて、1日平均は35km強。本当によく歩いているなと自分に感心。そして改めて自分の腕を見るとかなり日焼けしている。心身共に少しはたくましくなった気もする。22:30就寝。