トップページ

2012年5月16日(水)  巡拝31日目  曇のち晴

参拝札所:81・82・83番

歩行距離:29.5km

合計距離:1,079.7km

出費額:¥2,871

合計額:¥174,075

 

旅館の朝食

6:00に起床し直ぐに朝食を済ませ、6:40に旅館を出る。雨は止み、昨日は雲に隠れていた山々ははっきりと姿が見える。とりあえず山登りができるまでには天気が回復したが、まだ曇っていて雨が降る可能性もあるので安心はできない。

朝の空模様

旅館から住宅地の中を歩いて山道に入る。曇ってはいるが湿度が高いのか、山登りを始めて直ぐに汗が出てくる。未舗装の山道は足場の悪い険しい道を想像していたが、それなりに整備されていて歩きやすい。と言っても昨日の雨で濡れているので、落ち葉や岩場は滑りやすく注意が必要。旅館の女将さんの話では、雨天時には沢のように雨水が流れることもあるらしいので、やはり昨日は無理して登らないで正解だった。

山道を登る

雲で霞んで遠くの眺めはさっぱり

山道からは時々外の景色を一望できるが、生憎の空模様で白く霞んだ風景なのが残念。ただ、陽が射さず快適な気温で山登りできるので、体力的な負担が少なくて済むのは非常に助かる。しかし汗が結構出るのが鬱陶しい。2kmほど未舗装の山道を歩いたところで舗装された車道に出て、そこから札所までの約3kmの道のりは舗装路を歩く。思っていたよりも大したことの無い山道に拍子抜け。

札所のすぐ手前まで来たところに、白峰パークセンターという観光案内所がある。時間が早いので案内所はまだ開いていなかったが、屋上が展望台になっているので上がってみる。展望台からは本来ならば絶景が見られそうな感じだが、生憎の天気でさっぱりな眺め。曇りで陽射しが無いと体力的な面では助かるが、こういう時にいい景色が見られないのは損な気分になる。わがままな考えだが、いずれにせよ天気は自分ではどうにもできないので仕方のない事。

白峰パークセンター

白峰パークセンター展望台からの眺め

 

第八十一番札所 白峰寺(しろみねじ) 山門

石灯籠に小さな招き猫がいっぱい

旅館から約2時間歩いて8:40に第八十一番札所の白峰寺に到着。山門をくぐって参道を先へ進んでいくと、また門がありその先に拝殿が見えたが、本堂でも大師堂でもないので素通り。この遍路記で各札所の写真の掲載は、基本的には山門・本堂・大師堂のみだが、他にも境内には鐘楼堂やいくつかのお堂が建っていたり、五重塔がある札所もある。それら全てを参拝していたらキリが無いし、全てを写真に撮ってここに掲載するのもキリが無いので。。

白峰寺 本堂

白峰寺 大師堂

 

白峰寺から続く山道

自衛隊演習場の横を通る

薄もやの中をあるく

白峰寺からは未舗装の山道が続く。落ち葉で敷き詰められた場所が多く、足元が非常に滑りやすい。足元を確認しながら慎重に歩く。巡拝17日目の金剛福寺の石段で転んだ時は本当に危なかった。運が悪ければ腕を骨折していたかも知れない。ちょっとした油断や気の緩みが怪我を招く。3.5kmほど未舗装路を歩いたところで車道に出て、また直ぐに未舗装路。相変わらず地面は滑りやすい状態で気が抜けない。

有難くあるく

 

第八十二番札所 根香寺(ねごろじ) 山門

山門にある巨大な藁草履

 

第八十二番札所根香寺に10:40到着。朝の曇り空はすっかり晴れて日差しがまぶしい。山門には大きな藁草履が。昔はゴム底の靴など無いので誰もが藁草履を履いて巡拝していた事を考えてみても、現代の四国遍路は歩きでも昔と比べると随分楽なんだなと思う。道も大部分が舗装され歩きやすくなっているし。

風情漂う参道の石段

根香寺 本堂

根香寺 大師堂

 

根香寺から山を下っていくと気温が上昇。標高300m前後の差でも高地のほうが涼しい。それにしても猛烈な暑さ。これでは靴底の減りも早くなるのではないかと思ったところで、これまで杖の減り具合は時々長さを計って記録していたが、靴底の減り具合はチェックしていなかった事に気付く。そこで今更ながら靴底を改めて確認してみると、だいぶ減ってはいるが凹凸が完全に無くなるほどツルツルにはなっていない。Web上の個人遍路記の中には、途中で完全にツルツルになって巡礼中に靴を買い換えたという記事もいくつかあった。出発前は自分の靴は結願まで靴底が持つか心配もしたが、どうやらその点での靴選びは間違っていなかったようだ。

山を下る

擦り減った靴底

英語の道しるべ

遍路道では多くの道しるべを目にするが、その中には英語で書かれた道しるべもある。自転車と徒歩の二種類の道しるべがあり、1,200kmの道のりを自転車なら20日間、徒歩なら45日間となっている。平均して徒歩で45日間かかるところを、残り100km程度という時点で巡拝31日目なのはかなり早いペースなのかもしれない。早ければいいというものではないが、初めて歩き遍路を経験する者としてはかなりの健脚ペースだと思う。途中何度も足裏のマメや足首の痛みに苦しめられたが… それにしても本当に暑くてたまらない。暑さが大きな負荷になって結構しんどい。と、小奇麗な建物のお遍路休憩所を発見。少し涼ませてもらおうと扉に手をかけるが、鍵が掛かっていて入れない。どうやらインターホンを押して呼び出す必要があるようなのだが、何だかお接待を催促しているみたいでイヤなので、休憩所の利用は諦め先へ進む。

入れなかった休憩所

某飲食店のお接待冷蔵庫

入れなかった休憩所から1時間弱歩いたところで、またお接待所を発見。今度は普通の飲食店で、外に冷蔵庫が置かれていて自由に利用できるようになっている。治安が良く民度の高い日本だからできる事だと思う。ありがたく冷えた缶コーヒーとお煎餅を頂き、店に顔を出し店主にしっかりお礼を伝える。

住宅地ですれ違ったおばさん2人組みに声を掛けられ、2人それぞれからチラシを渡される。2人は教会の信者ようで、布教活動をしているようだ。渡されたチラシにチラッと目を通してみると、中にいい言葉があった。「人間は一人では磨かれない」。自分はこの四国遍路で多くの人と出会って、少しは人間が磨かれただろうか。

 

第八十三番札所 一宮寺(いちのみやじ) 山門

山門の地面にとんぼ

14:40、住宅密集地の中にある第八十三番札所一宮寺に到着。山門の建つ地面には小石?を並べて描かれた小さなとんぼが沢山あり、何だかほのぼのした雰囲気。暑さに加え結構空腹になっていたので、自販機で炭酸ジュースを買って暑さと空腹を少しだけごまかす。次の札所までは約20kmあり納経時間には間に合わないので、ここで打ち止めにして境内で暫く休憩。

一宮寺 本堂

一宮寺 大師堂

 

時間はまだあるのでできるだけ次の札所の近くまで進みたいところだが、この先遍路道は高松市内に入り、人通りの多い日中に大きな街を遍路姿で歩くのは少々抵抗があるのと(松山市内を歩いた時の市民の視線を思い出した…)、一宮寺の近くに500円で泊まれる善根宿があるという情報を入手していたので、これを利用しない手は無いという事で決まり。宿の電話番号も教えてもらっていたので早速電話し、宿へ向かう。

遍路道を歩いて宿へ向かう

 

これが目印

一戸建ての善根宿

一宮寺から3.5kmほど歩いて善根宿に到着。遍路道から一歩外れた細道にある善根宿は、某工場の事務所として使われている古い一戸建ての家。電話に出たのは工場の社長さんだったようだがすでに退社したらしく、居合わせた従業員が宿の案内をしてくれた。他に宿泊客はおらず自分ひとり。1階は事務所として使われているリビングにキッチン、それに浴室とトイレ。2階は畳が敷かれた和室があり布団が用意されている。これはかなり快適な善根宿だ。しかも500円と聞かされていた利用料を支払おうとしたところ、お金は結構です、との事。本当にびっくりだ。いくら四国遍路に理解があると言っても、これだけの設備を見ず知らずの人間に、管理者も居ない状態で提供するなんてなかなか出来るものではない。本当に四国の人達のお遍路への無償の奉仕には驚かされる。

 

かなり空腹だったので食料を確保するために宿を出る。宿のすぐ側にスーパーマーケットのような売店があったので入ってみるが、どうも食べたいものが無い。今までのひもじい経験を考えれば贅沢な話だが、思いっきり腹が減っている時ほどおいしいものを食べたい。できれば出来合いの弁当などではなく飯屋で食事がしたかったので、宿から500mほど歩いて何らかの店がありそうな大通りに出る。そしてすき屋が目に留まり入店。まぐろ丼特盛と豚汁を注文。これで十分贅沢。

まぐろ丼特盛と豚汁

久しぶりのネットカフェ

すき屋のすぐ側にネットカフェがあったので、時間潰しを兼ねて入店。自宅PCのメールチェックやHPのアクセス状況の確認などをしてから、適当にネット上を徘徊。間もなく四国遍路は結願するので遍路情報の収集はせず。1時間ネットカフェで過ごして、帰りにドンキホーテに立ち寄り靴の消臭スプレーを購入。1000km歩いて靴がヘタってきたからか、この頃靴の匂いが気になるようになっていた。お遍路と言えども、一般人も利用する飲食店やコンビニなどの店も利用するので、最低限の身だしなみは必要。

 

善根宿に戻ったのは18:00過ぎ。ちょうどその時リビングの電話が鳴り出す。事務所として使われているので仕事関係の電話だろうと思い受話器は取らず。しかし鳴り止んでまだすぐに鳴り出す。気になるが無関係の人間が会社の電話に出るのは気が引ける。しかし少ししてまた電話が鳴る。もしかして宿泊している自分に掛けているのではと思い受話器を取ると、この善根宿を探しているお遍路さんだった。すぐ側まで来ているようだったので電話越しに道案内をし、玄関前で待っていると程なくしてお遍路さん到着。京都から来た26歳の若いお遍路さんで、一身上の理由で仕事を辞め自分探しで四国遍路をしているとの事。

京都のお遍路さんとこれまでのお互いの遍路旅についての談話の中で、驚きの経験を聞かされる。とある善根宿で食事をご馳走になった時、どうも食事が痛んでいるようで味が少しおかしかったのだが、折角の好意に何も言う事ができず完食し、その翌日に体調を崩し救急車で病院に運ばれ2日間入院する羽目になったらしい。ちょっとゾッとする話だ。食べ物には本当に気をつけないといけない。

適当に入浴と洗濯を済ませ、翌日は高松市内を人通りの少ない早朝に歩きたいので21:00就寝。