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その5  3日目朝〜昼

 

5:30に人の声で目を覚ます。寝袋と快適な気温のお陰で8時間半もぐっすり眠れた。外が朝焼けになっていたのでもしやと思い外に出ると、水平線から朝日が出た直後だった。空は雲ひとつ無い快晴。もう少し早く起きていれば水平線から顔を出す綺麗な日の出風景を見られていた。西郷岬は日の出スポットだという事は知っていたが、西郷岬公園の隣が夕日丘公園で「夕日」というのに惑わされ、すっかり忘れていた。もの凄く大きな失敗をした気分…まぁ、十分綺麗な朝日を見ることができたので良しとしよう。

西郷岬から眺める朝日

旅行3日目は朝一で島前の中ノ島に渡って昼過ぎまで島内観光をし、その後に翌日観光する西ノ島に渡る。朝一に確認した隠岐の島の天気予報は、午前中が曇りで15:00から雨。とりあえず朝一は快晴でまたしても天気予報は外れたが、時間と共に天気が崩れる可能性はある。せめて中ノ島の観光が終わるまでは快晴でいて欲しいと願いつつ、西郷港へ移動。

このフェリーで中ノ島へ

フェリーに鬼太郎のイラスト

西郷港ターミナルの妖怪オブジェ

西郷港に6:40到着し、まずは6個入りの菓子パンを全部食べる。これで朝食用に買ったパンは残り1袋になった。中ノ島行きのフェリーは8:30出航なので時間を持て余す事になり、とりあえず西郷港をぶらぶら。乗船するフェリーには鬼太郎とネズミ男のイラストが。そしてターミナルの前に鬼太郎とネズミ男の妖怪オブジェを発見。隠岐の島は水木一郎の妖怪で島興しにかなり力を入れているよう。

7:30に開いた乗船窓口で手続きを済ませ、自販機でペットボトルのお茶を購入。最近腹周りの脂肪が気になり出したので、”脂肪の吸収を抑え糖の吸収を穏やかにする”といううたい文句のお茶を選んだが、自販機から出てきたお茶を手に取った時に小さな衝撃を受ける。自販機のサンプルは隣の500mlペットボトルより少し小さいくらいの大きさなのに、出てきたお茶はもっと小さいじゃないかっ!と。しかしサンプルペットボトルの手前に貼られた小さな広告を見ると、同じサイズの写真が載っていた。この広告にサンプルペットボトルが隠れないように位置を高くしてあるという事か。しかし紛らわしい、作為的なものを感じる。

中ノ島の菱浦港行き

真ん中のやつが…

思ったより小さかった

8:30にフェリー出航。2日前に七類港から乗船したフェリーほど混雑していなく、二等客室の絨毯敷き床に十分なスペースがあった。しかしせっかく外は快晴なので、絨毯に腰を下ろさず後部デッキに出る。そして遠ざかっていく島後を眺めて別れを惜しむ。2日間の滞在だったが予想外の快晴に恵まれ、十二分に島後観光を楽しむことができた。2日前の七類港では悪天候での隠岐の島観光を覚悟し、雨天・曇天を受け入れそれなりに楽しもうと前向き…と言うより開き直っていたが、この2日間の島後観光を振り返ってみてもしも悪天候だったらと考えるとゾッとする。

フェリーに車を載せる

さようなら島後

島後の南岸風景

松島

フェリーの揺れは2日前以上に大きく、デッキ上を真っすぐ歩けず少々危険を感じるほど。揺れで相変わらず写真も撮り辛い上、強風でデッキの端には波しぶきが掛かり、カメラもメガネも一瞬でレンズが潮まみれになってしまう。それでもめげずにカメラを構える。島後南岸沖を西に進むフェリーからは島後の海岸風景や点在する小島が見られ、写真では全く伝わらないが青々とした大海原のパノラマ風景に囲まれとても気持ちがいい。ただ揺れが凄い。

中ノ島の一部かな?

二股島

目に留まった岩や小さな島を何気に撮影し、後からそれらについて調べてみるとどれもちゃんと名前が付いていた。ひと口に隠岐の島と言っても、島前・島後の四島以外にも沢山の島が点在している。

中ノ島北岸沖に入る

小森島

冠島

三郎岩

菱浦港

9:40に中ノ島の菱浦港に到着。15:00過ぎにはここからまたフェリーに乗船し西ノ島へ向かうので、中ノ島を観光できるのは5時間ほど。比較的小さな島で観光スポットも限られるので、効率よく周っていけば十分間に合う時間。ただ、中ノ島では入浴もする事になっているので時間を無駄にはできない。という事で、中ノ島北西にある菱浦港からまずは島の南端にある木路ヶ崎へ向かう。

中ノ島南部から眺める西ノ島

島の南側まで進むと所々で西側海岸線を見渡せるようになり、中ノ島の西隣にある西ノ島もよく見える。曇りの天気予報に反して空はまだ快晴だが、遠くの景色が随分と霞んで見えるのは黄砂の影響だろうか。木路ヶ崎の突端まで近づいたところで、道は車一台がやっと通れる幅しかない狭小道路に。こういう細道は対向車が来たら本当に面倒くさいので極力避けたいところだが、他に道は無いので進むしかない。対向車が来ない事を祈りつつ木路ヶ崎突端にある灯台へ向かう。

ここから灯台まで狭小道路が続く

狭小道路の途中からの眺め

牛放牧中

木路ヶ埼灯台

(きろがさきとうだい)

幸い対向車と鉢合わせすることなく灯台に到着。木路ヶ崎にある木路ヶ埼灯台。灯台は至ってシンプルなデザインのものだが、その手前の広場に描かれているコンパスのイラストがインパクト大で印象的な場所になっている。コンパスの中心にはハートがズラリと輪をつくっている。いったいどんなコンセプトで描かれたのやら。

木路ヶ埼灯台

これがやたらと目立つ

木路ヶ埼灯台が建つ広場からは北西側に西ノ島、南側に知夫里島の陸地が見える。特別景色がいい場所でもなく、灯台が特徴的という訳でもなく、中ノ島では菱浦港から一番遠い場所で利便性も悪い。それだけに訪れる観光客も少ないと思われ。それでも何だかとても訪れた事に満足感を得られる場所。基本的には多くの観光客で賑わう有名スポットよりも、この木路ヶ崎のように静かでのんびりできるマイナースポットの方が個人的に満足できる事が多い。あと快晴である事も大事。

まだ天気はいいぞ

灯台広場からの眺め

こんなことやってみた

自分以外誰もいないし誰も来なさそうなので、コンパス絵の中心にマイカーを停めて写真を撮ってみたり。何か車雑誌に載ってそうな絵面になった。それから広場の隅にある東屋で軽い食事。雑炊にツナコーン、そして柿ピー。この際食べ合わせは気にしない、空腹が満たされればいいのだ。それに旅先でこんな素朴で雑な食事をしていると、より非日常的な旅をしている実感が湧いていいじゃないか?…たまには。木路ヶ崎には30分ほど居たが最後まで誰も来なかった。

広場の隅にある東屋

これは朝食になるのかな

清水寺

(せいすいじ)

木路ヶ崎から中ノ島の北東岸にある明屋海岸へ向けて進みつつ、途中で清水寺に立ち寄り。普通なら「きよみずでら」と読んでしまうが「せいすいじ」。日本名水百選に選ばれている湧水「天川の水」がある。

天川の水

石仏が2体

天川の水についての説明書きを要約すると、昔々隠岐行脚でここを訪れた僧侶が、洞窟から流れ出ている湧水に霊気を感じ、ここにお堂を建てて菩薩を祀り、清水寺と名づけた…という感じの内容。正直この手の場所とその歴史的背景などにはあまり関心が無いが、中ノ島は観光スポットが限られるのでついでに立ち寄ってみた。際立った観光スポットではないが、なかなか雰囲気のいい落ち着いた場所でゆっくりできる。そういう点では先に観光した木路ヶ埼灯台と共通しているかもしれない。

龍の口から天川の水

石段を上がれば清水寺社殿

清水寺向かいの段々畑からの眺め

せっかくなので天川の水を汲んで行こうと、空のペットボトルを取りに車に戻ると、スモークフィルムを貼ってある後部ドアの窓にびっしり砂が付着している事に気づく。ボディーは砂汚れが目立ち難い色なのでここまで気づかなかった。やはり景色が随分霞んでいるのは黄砂が原因のよう。風通しのいい海沿いは相変わらず強い風が吹いているが、海沿いから一歩奥に入った清水寺には風が無く、その代わり海沿いよりも暑い。

車の窓に黄砂がびっしり

湧水を汲む

明屋海岸

(あきやかいがん)

個人的に中ノ島観光のメインだったのが、最初に立ち寄った木路ヶ崎と島の北東にある明屋海岸。明屋海岸はハート型の穴が開いた「ハート岩」が目当て。ほぼ計画通りの12:00に明海岸に到着すると、想定外の綺麗な海岸風景に気分は上昇。海水の透明度が非常に高く、鮮やかなエメラルドグリーンの色が広がっている。そんな場所にも関わらず観光客の姿は一組だけ。GW中でもこれだけ観光客の姿が少ないのは、本土から距離のある小さな離島ならではだと思う。

<< SCROLL    キャンプ場から眺める明屋海岸 パノラマ写真180°    SCROLL >>

それにしても海が綺麗。まるで南国の島の海岸風景を思わせるような色をしているが、ここは日本海。駐車場やその下にある芝生の広がるキャンプ場からハート岩が見えるが、角度的に穴はハート型に見えない。なのでキャンプ場から西へ延びる遊歩道を歩いてハート岩へ向かう。

とにかく海が綺麗

この角度からだとハート型に見えない

石が敷き詰まった海岸に沿って続く遊歩道がなかなかいい雰囲気で、海の眺めもとてもいい。そして何より、こんなに素敵な海岸に自分以外の人の姿は無く静かで、綺麗な風景と落ち着いた雰囲気にとても癒される。

遊歩道を進む

遊歩道を振り返る

<< SCROLL    遊歩道から眺める明屋海岸 パノラマ写真180°    SCROLL >>

遊歩道はハート岩の目の前まで続いていると思いきや、特徴的な断崖の手前で行き止まりになっていた。水際の石の上を歩いて何とかハート岩まで行けないかとも思ったが、これ以上進むのはお止め下さい、と行き止まりの立て看板に書いていあるので止めておく。無理は怪我の元。九州旅行中に岩場で転倒して手指を怪我した悲劇が思い浮かんだ。

特徴的な断崖

遊歩道はここまで

確かにハート型に見える

軽そうなので背負ってみた

行き止まりのほんの少し手前辺りからハート岩の穴がハート型に見え、とりあえず満足。まぁ、正直ハート岩はあっても無くてもいいおまけ。とにかく海が綺麗で景色が良く、静かで落ち着ける明屋海岸が本当に気に入った。ここまでの隠岐の島観光の中でも特にお気に入りの場所となった。

金光寺山

(きんこうじさん)

中ノ島で眺望のきく展望スポットの山という事で、明屋海岸から近い金光寺山に立ち寄り。車で山頂の少し手前まで上ることができ、駐車場から歩いて直ぐの所に展望スポットがある。展望スポットからの眺めは海が少々遠くに見え、黄砂の影響もあってずいぶんと霞んでいた。周囲の木々で景色の一部が隠れているのもマイナス。絶景を期待していただけに残念。

展望スポット

展望スポットからの眺め

休憩所

山道を進む

展望スポットの直ぐ先には休憩所があり、こちらも海を見渡す事ができるが展望スポットとあまり変わらず。きっと山頂まで登ればもっといい眺めがあるだろうと、期待を膨らませ山頂へ続く遊歩道を歩いていく。が、たどり着いた山頂は木々が生い茂っていて外の景色がほとんど見えず、好展望地ではなかった。背の高い木々に囲まれた一角にお堂があった。

山頂のお堂

山頂にこんなものが

皇室逢拝所からの眺め

山頂の片隅に「皇室逢拝所」と刻まれた石碑が立っていて、そこからは草木の間から海が見える。しかし相変わらず景色は霞んでいて眺めは良くない。ちなみに、「遥拝(ようはい)」とは遠く離れた所から神仏などをはるかに拝む事…という意味なので、皇居を向いているのかもしれない。

13:00過ぎに金光寺山を下りて中ノ島観光は終わり。乗船予約してある西ノ島行きフェリーの出航時間は15:15。中ノ島では短い滞在中に入浴もするつもりだったので、計画通り十分な入浴時間を確保する事ができた。自分が調べた限りでは、隠岐の島四島で日帰り入浴できる施設は2箇所だけ。ひとつは旅行2日目に利用した島後の隠岐温泉五箇、もうひとつが中ノ島にある海土町保健福祉センターひまわり。なので中ノ島での入浴を逃すと旅行中の入浴はもうできない。

海土町保健福祉センターひまわり

ひまわりの入浴施設の営業時間は13:00〜21:00までで年中無休(盆・正月を除く)と、事前に利用情報を調べていた。しかし、いざ訪れてみると広い駐車場は空でひと気も無く、これは営業していないと直ぐに確信。一応施設入口に向かうもやはり休館していた。貼り紙によるとGW期間中丸々休み。盆と正月以外は年中無休なんじゃないの…盆と正月が休みの時点で年中無休じゃないけど。

うそつき…

フェリーの出航まで1時間半ほど時間が空いてしまったので、これから何処か観光スポットを調べて移動するか、それとも中ノ島で一番印象に残った明海岸へ戻るか考える。しかし、そもそも出航の30分前には菱浦港へ戻り乗船手続きを済ませないといけないので、菱浦港から距離がある場所に移動してゆっくり観光する余裕は無い。持参してきた隠岐の島の地図を見ると菱浦港の直ぐ側にレインボービーチというものがあるので、そこで時間を潰す事にした。

レインボービーチ

13:40にレインボービーチ到着。海水浴場となっている砂浜はシーズンオフで行楽客の姿は無し。きれいでこじんまりとした砂浜だなと思ったが、中ノ島にある海水浴場の中では一番広い砂浜らしい。とりあえず車から降りて砂浜に出て散歩。砂浜の隣の高台にある何かの施設のテラスまで階段が続いているので上ってみたり。きれいな砂浜海岸だが周囲の風景は普通だった。

車を停めた路肩の駐車スペースに黒尽くめのバイクが1台。ナンバープレートを見ると岡山、自分が住む隣県からの旅行者のよう。バイクには大量の荷物が積まれているので、テント等のキャンプ道具がぎっしりと詰め込まれていると想像。キャンプ泊のバイク一人旅ってのも男らしくていいなと思う。しかしバイクの長距離・長時間運転は車よりもずっと疲れるだろうし、雨に降られると自分も濡れるし運転に気を使うしで大変そう。それにキャンプ泊だとテント設営時に雨に降られても大変だし、荷物が多くなるので旅行前の準備や帰宅後の後片付けに手間が掛かりそうだし。そもそも自分は軽装主義なのであまり荷物を持ちたくないし、それ以前にバイクの免許が無いし… そう考えるとやはり自分には車中泊という旅のスタイルが一番合っているのかもしれない。

かっこいいバイクだ

これしょっぱいんだよ

港に戻るまでまだ時間があり、小腹が減ったので車の中で軽い食事をとる。買ったことを後悔したSPAMがまだひとつ残っていて、だからと言って捨てるのは勿体無いのでここで食べる。四国遍路を経験して食べ物のありがたみを改めてかみ締めた身としては、たかが缶詰ひとつでも無駄にはできない。それにしてもしょっぱい、塩分過多。