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その6  3日目昼〜夜

 

14:00過ぎに菱浦港へ戻る。乗船手続きのためフェリーターミナルの窓口へ行くと、予約してある15:15発西ノ島別府港行きのフェリーよりも15分早く出航する別のフェリーを勧められ、別の建物の窓口へ案内される。これまで利用してきたフェリーは本土と隠岐の島の各島を運航する隠岐汽船のものだが、菱浦港で勧められたのは島前三島のみを運航する隠岐観光の島前内航船。隠岐汽船のフリー切符で隠岐観光のフェリーも利用できるので便利。

整理券をワイパーに挟む

隠岐汽船の車両待機レーンに停めた車を島前内航船の待機レーンへ移動し、窓口で受け取った整理券をワイパーに挟んで乗船まで待機。売店で飲み物とお菓子を買って(塩分過多なので甘いものを身体が欲していた)、建物の上にあるデッキでフェリーが来るまで休憩。

デッキで休憩

出航時間の5分前にフェリーが到着し、定刻通り15:00出航。小型フェリーなので乗客と車の乗降が早く、スムーズに乗船できる点でも島前内航船を利用して正解だった。中ノ島の菱浦港から西ノ島の別府港までの乗船時間は僅か15分。別府港に到着したら早速最初の目的地に向けて車を走らせる。

島前内航船は小型のフェリー

西ノ島へ向けて出航

西ノ島の町が見えてきた

別府港に到着

西ノ島は東西で2つの島に分かれているような形になっていて、東側は中ノ島と同じくらいの大きさで西側が知夫里島より少し大きいくらい。つまり島前三島の中で一番大きな島であり、隠岐四島の中で島後に次いで大きい。西ノ島の西側にはスケールの大きい断崖風景が広がる国賀海岸があり、隠岐の島観光のハイライトのひとつとも言える。しかし中ノ島では終始青空だったのが西ノ島に着いてから薄雲が掛かり始め、天気予報通りいよいよ天気は下り坂に向かう予感。

焼火神社

(たくひじんじゃ)

西ノ島最初の目的地は、東側の南端に位置する焼火神社。道幅の狭い山道を暫く車で進み、焼火神社の参道入口に到着。駐車場には車が3台止っていて、ちょうど参道から複数人の観光客が戻って来たところだった。駐車場の3台はその人達のもののようで、つまり参道入口から焼火神社拝殿・本殿までの道のりには誰もいないという事になり、焼火神社散策を独り占めできる。タイミングがいい時に来たなと思うと同時に、途中で怪我や事故に遭って身動きできなくなっても周りに人がいないから大変だなと、ふと思った。山や海岸などの自然散策で自分以外誰もいないのはよくある事だが、よくよく考えれば万が一の助けもいないという事になる。まぁ今の時代は誰もが携帯電話を持っているので電話で助けを求める事はできるが。電波が届いていれば…

焼火神社の参道入口

山道を進む

参道の山道を歩いていくと青銅製の重々しい鳥居が建っていて、焼火神社と展望台への道の分岐点になっている。展望台までは930mで、英語の案内板には展望台までが40分、焼火神社までが5分と書かれてある。ここからさらに40分歩くのは少々面倒くさいし、空は曇りつつありきれいな景色が見られるか分からないので、展望台は保留にして先に鳥居をくぐって焼火神社へ向かう。

分岐点にある鳥居

まずは焼火神社へ

石段を隠すように生い茂る草木

鳥居から山道を進んでいくと途中に石段が続く横道がある。まるでひと目をはばかるように草木に覆われた石段の道は、この世ではない場所への入口のような…って、ホラー映画やアニメの見過ぎかもしれない。しかし石段を上り切ったところには朽ちた祠があり、やはりおどろおどろしい雰囲気がある。祠は放棄されてしまったものなのか、中規模な地震があったら崩れてしまいそうな状態。失礼な事だがこういう朽ちた社殿には何らかの”いわく”があると勝手に想像し、気安く写真を撮る事さえ躊躇するような畏怖の念を持ってしまう。まぁ結局写真は撮るけど。

石段を上る

朽ちた祠

朽ちた祠から山道に戻った直ぐ先には立派な石垣。城跡かと思ったがそうではなく、何かの建物が建っていた。石垣に沿って進んだ先に外の景色が開けた場所があり、島前三島で南に位置する知夫里島を眺望。しかし別府港に着いた時よりも空に広がる雲は厚くなり、完全な曇り空になってしまった。

突如立派な石垣が現れる

知夫里島を眺める

石垣の建物の横を通る

春紅葉みつけた

参道入口から約20分で焼火神社拝殿と本殿に到着。多くの神社の本殿は拝殿の後ろに隠れるように建っているが、焼火神社の本殿は拝殿の横にあり、しかも山肌の岩にめり込むように建っている。基本的に神社仏閣に関心の薄い自分だが、この本殿には興味をそそられる。

山肌にめりこむ本殿

焼火神社の拝殿と本殿

この穴は洞窟?

本殿から拝殿を見下ろす

本殿の隣にある祠

拝殿よりも一段高い場所にある本殿の側まで、山肌の岩場を上って行けるようになっている。本殿の大穴の隣には小さな穴が空いていて、小さな祠と仏像が置かれている。岩場の道は湧き水の影響なのか濡れていたので、足を滑らせ転倒しないようかなり神経を使った。本殿手前の地面も濡れてぬかるみになっていたため、靴が汚れてしまった。晴れていればこの後に鳥居が建つ分岐点から展望台に向かったかもしれないが、すっかり曇り空になってしまったのでそのまま下山。

船引運河

(ふなびきうんが)

焼火神社のある西ノ島東側から西側へと移動。別々の島のように分かれている東西を結ぶ橋は2箇所あり、焼火神社からだと南にある国道のバイパスを渡った方が早いが、西ノ島の象徴とされる船引運河がある北の道路へ。全長340m、幅12mの狭く素朴な運河は観光スポットとしては弱いが、地元の人にとって重要な航路だという事は想像できる。

橋から運河の南を眺める

橋から運河の北を眺める

イカ寄せの浜

(いかよせのはま)

イカ寄せの浜

国賀海岸へ向けて西に移動しつつ、通り掛かったついでに立ち寄ったイカ寄せの浜。浜辺の浅瀬に建つ鳥居の周りにイカを獲る人の絵が立てられている。昔ここにイカの群れが毎年押し寄せたという伝説があるが、平成18年には数十年ぶりにイカの群れが寄せたのでただの伝説ではないらしい。浜の片隅にはイカが押し寄せてくるのを見張っていた小屋がある。船引運河と同様に観光スポットとしての印象は正直弱い。まぁついでに立ち寄っただけだから。

素手で獲るんだ

イカの見張り小屋

赤尾スカイライン

(あかおすかいらいん)

夕日見物するため国賀海岸のほぼ中央にある赤尾展望所へ向かう。展望所まで続く赤尾スカイラインは快適に運転できる片側一車線のワインディングロード。赤尾展望所の少し手前に見晴らしのいい場所があったので車を停める。そこからは国賀海岸の特徴的な断崖風景を一望。しかし本来は絶景の風景も曇り空と霞んだ視界でパッとしない眺め。本当に残念だ。そして相変わらず風が強い、おまけに寒い。

赤尾スカイライン

赤尾スカイラインから眺める国賀海岸

国賀海岸の中でも特に見所である「天上界」と呼ばれる奇岩群がある海岸が見える。天上界の右手には通天橋という断崖の空洞がある。ここは隠岐の島の中でも特にインパクトのある風景なので、翌日の国賀海岸観光は是非とも快晴の空の下で行ないたいところ。しかし残念な事に翌日の天気予報は朝から雨。再び予報が外れてくれる事を祈るしかない。

天上界

赤尾展望所

(あかおてんぼうじょ)

赤尾展望所駐車場

展望台

赤尾展望所に17:30到着。曇り空をバックに広い駐車場にポツンと1台佇むマイカーが何だか寂しい。展望所はぐるっと柵に囲まれていて、その外では馬が放牧されている。駐車場の直ぐ先にある木造の展望台は爆風で真っ直ぐ立っているのも大変なほど。展望台から写真を撮る時は両肘を手すりにしっかり突いて手を固定し、風で身体が動かないようグッとりきんでシャッターを押さないとブレの無い写真を撮るのは難しい。

展望台より南側の眺め

展望台より北側の眺め

展望台からは南北に続く国賀海岸を一望。ここからも天上界がよく見える。ここからの風景こそ快晴の下で眺めたかっただけに、本当にこの天気が恨めしい。翌日の天気も期待できないし、旅行日数の関係で(GWに休日出勤させる悪い会社のせいで)隠岐四島のうち知夫里島だけ観光できなかった事もあるので、来年以降に再度隠岐の島旅行をしようという考えが出てきた。フェリー代が高いのがネックだけど…

赤尾展望所からも天上界がよく見える

赤尾展望所は夕景スポットでもあり、ここから水平線に沈む夕日を眺める予定だった。しかし到底夕日が見られる空模様ではないので赤尾展望所を出ようと思ったが、もしかしたらそのうち雲の隙間から夕日が顔を出すかもしれないと思い、一応日没時間まで待つことに。わずかな可能性とあまたの運に賭ける…何てね。実はこの後は食事と睡眠しかすることがないので、それまでの時間潰しを兼ねての夕日待ち。

外は風で身体が冷えるので駐車場に止めた車に戻ると、風で車がグラグラと揺れている事に気づく。それだけ風が強い。車内で待機を始めて直ぐに車が1台やって来たが、車内から外の様子をうかがっただけで直ぐに引き返して行った。おそらく夕景目的で来て曇りだったので諦めたのだと思われ。それからまた1台、また1台と時間を置いて計4台車が来たが、いずれも展望台へ行ったと思ったら直ぐ車に戻り引き返して行った。そして最初に来た車が再び展望所に来て、今度は自分と同じく車内で暫く待っていたが、やはり夕景見物を諦めたようで引き返して行った。

車内で1時間近く待機しても空の様子は変わらず、自分もいい加減諦めようかと思った18:30過ぎ、雲間から夕日が顔を出し水平線上が薄っすらと赤く染まり始める。西側の空は一面雲に覆われているように見えていたが、夕焼けが始まり水平線上はほとんど雲が無いと判る。これならもしかしたら日没が見られるかもしれないと期待が膨らむ。雲間から姿を現した太陽はまた直ぐに雲に隠れたが、水平線の直ぐ上まで太陽が下りた所で再び姿を現すと信じて車内待機続行。

奇跡的に雲間から太陽が一時的に顔を出す

展望台から眺める日没直前の夕景

失敗写真だけどこれいい

そして18:50、予想通り水平線の直ぐ上に太陽が再び姿を現す。諦めずに1時間強車内で待ち続けた甲斐があった。展望台に上がり爆風と寒さに耐えながらの夕景見物。くっきりと丸い形をした夕日が見られたのは期待以上。そして夕日は水平線に沈んで19:05日没。まさかこの曇り空の中でこんなにはっきりと夕日を見られるとは思わなかったし、水平線に沈む日没風景を見られるとも思わなかったので大満足。やはり何事も最後まで諦めてはいけない。

展望所から赤尾スカイラインを引き返している途中で牛の群れに遭遇。牛達は皆じっと路上で佇み動く気配なし。このままではいつまでも通れないのでクラクションを鳴らしてみるも、牛はピクリともせず。クラクションを長押ししてもヘッドライトを点滅しても効果無し、どの牛も全く動かない。仕方ないので徐行で車を進めて牛に接近。そして牛の目の前まで来たところでやっとノソノソと動き出し、道が空いて牛の群れを通過。牛が車に突進してこなくてよかった…

牛に道路を塞がれていた

じっと佇み動かない

西ノ島南端にある鬼舞展望所へ向かう。鬼舞展望所は日の出スポットなので、車中泊をして翌朝に日の出見物をする予定でいた。天気予報と実際の空模様を見る限り日の出が見られる可能性は低いが、赤尾展望所での日没のように奇跡的に見られるかもしれないし。

鬼舞展望所駐車場に到着

鬼舞展望所駐車場に19:20到着。翌朝に日の出見物をする丘が駐車場の直ぐ先にあるが、駐車場を出た所に今度は馬の群れがいる。駐車場で夕食を食べる前に丘へ上ってみようと思っていたが、馬の群れの中を歩くのは危険な気がするので止めておく。という事で、後は夕食を済ませて寝るだけ。しかし高台にあり風通しのよい鬼舞展望所も強風が吹きつけ、外で火を使ったり食事をするのは厳しい状態。本当に隠岐の島はどこに行っても強風が吹いている。

鬼舞展望所ではとても外で食事ができないので別の場所へ移動しようかとも考えたが、やっぱり面倒くさいのでバーナーでの湯沸しだけ何とか外でやって食事は車内でする事にした。外で風を凌げる場所は駐車場にある公衆トイレだけだが、湯を沸かすだけとは言えさすがにトイレの中ではやりたくないので、トイレ外の風下側の地面で湯を沸かす。傍から見たらシュールな光景に違いない。

トイレの外で湯を沸かす

本日の夕食

隠岐の島旅行最後の夕食メニューはチリトマトヌードル・カレーメシ・缶詰の豆・チョコレート菓子。チリトマトヌードルは塩辛くて少々失敗、前日に食べたカレーヌードルの方が塩気を感じなくてよかった。やむを得ず塩分過多になりがちな食事をする場合でカップヌードルを食べるなら、カレーヌードルが一番いいと思う。それから缶詰の豆は味気無かったが、塩分過多な食事の中では逆においしく感じた。薄味であっさりしたものがとてもおいしい。そして菱浦港の売店で買ったチョコレート菓子が食後のデザート。口の中が塩気に満たされた後に食べる甘いものはとてもおいしい。食後はスマホで時間を潰し、21:00頃に就寝…のつもりだったが、風の音が大きくかなり耳障りな上、車はグラグラと揺れっぱなしでとても安眠できる状態ではなかった。

何とか眠ろうと努力してみるも、就寝時に余計な音があるとなかなか寝付けない神経質な性格なのでどうしても眠れず。まるで吹雪いている雪山に設営されたテントにいる気分、そんな経験はもちろん無いけど。このままではいつまでも眠れないので、風を遮る場所を探しに鬼舞展望所駐車場から車を出す。そして1.5kmほど道を戻ったところの路肩スペースにいい感じの木陰を発見。車を木陰に寄せると風が一切当たらなくなり、風の音もだいぶ小さくなり無事寝られる環境を確保。22:00就寝。

風を凌げる木陰に移動