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その3  2日目

 

車中泊時の防寒用に、富士登山用に購入しておいた上着と重ね着するズボンを着用し、ブランケットを羽織って寝ていたのだがそれでも少し寒く、何度か目を覚ましその度にヒーターを点けて室内が暖まったら消すを繰り返す。そしてケータイの目覚ましで4:30起床。まだ眠くて動く気がしないので、目覚ましを再セットして二度寝、4:50に再び目覚ましで起きる。まだ眠い…日の出見物は諦めて寝てしまおうかとも思ったが、カロリーメイトをかじって何とか目を覚まし、車のエンジンをかける。

日の出を見た後は大島北端にある大島灯台に寄ろうと思っていた。灯台はぶらっとハウスから近いので、日の出浜へ行く前に道の確認だけすることに。しかし灯台へ続く細道の入口には、「一般の方は灯台内に入る事が出来ません」というような案内板が。これは灯台の建物内に入れないという意味なのか、灯台敷地内に入れないという意味なのか、灯台の周辺には近づけないのか、よく分からない。よく分からないので灯台へ行くのはヤメ。

岡田港から見えた大島灯台

岡田港まで戻ってきて大島一周達成。そして目的地である岡田港隣の日の出浜は…朝焼けの方角からして日の出は見られそうに無い。仕方ないので大島一周道路に戻り時計回りに進み、水平線から出る日の出を見られそうな場所を探す。が、日の出時間の6:03までもうあまり時間が無い。仕方ないので日の出浜の隣にある秋の浜へ。

秋の浜

(あきのはま)

残念ながら秋の浜からでも水平線から太陽が出るのを見ることは出来ない位置だった。まぁしょうがない。前日夜に思いついた事で、予め日の出スポットを調べておいたわけでもないし。岸辺の陸地の後ろから顔を出す日の出を見られただけでもよしとしよう。早朝の段階で風は出ているものの前日ほどではない。これなら問題なく三原山登山が出来るだろうということで、前日夕方にも行った三原山頂口へ再度向かう。

三原山

(みはらやま)

6:40三原山頂口に到着。時間が早いので駐車場に車は1台もなく人もいない。案内所や土産屋も閉まっている。前日よりは風は弱いとはいえ、朝の山の上は寒いので防寒装備をして登山開始。山頂へ続く遊歩道の入口に登山道の案内図があった。山頂までは2.2km、45分の道のり。1時間は掛かると思っていたが意外と近い。火口一周が2.5kmで同じく45分。これならゆっくり歩いても3時間もあれば行って帰って来られる。ということでお鉢巡りまですることにした。

富士箱根伊豆国立公園 三原山内遊歩道案内図

三原山頂口から山頂まで続く遊歩道は舗装されていた。てっきり未舗装路で富士山の登山道のような道だと思っていたので拍子抜け。まぁ楽な方がいい。遊歩道を歩き始めてすぐに、向かいからスウェット姿の1人の男性が歩いてきたので軽く挨拶。手ぶらだし駐車場に車も無かったので、近所に住んでいる人の散歩だろうか。空模様は日の出を眺めた時は全面的にほぼ快晴だったのだが、いつの間にか東側に雲が広がっていた。

ここが登山道のスタート地点

内輪山に向かって延びる遊歩道

黒い溶岩流の「砂漠」の中を続く遊歩道は、山頂口から暫くはほぼ平坦な道。道の途中には1986年11月19日に噴火した際に流れた溶岩の先端部がある。説明書きによれば、溶岩の流れる速さは伊豆大島火山では、一般に人が歩く速さよりも遅いらしい。それでも周囲の所々にはコンクリート製の避難所が設置されている。しかしこんな簡易的なものでは、溶岩が流れてきたらあっという間に中まで入ってくるような気がするのだが…

1986年溶岩流先端部

これで本当に助かるのだろうか…

緩やかな道を20分ほど歩き、砂漠の中心にある内輪山の目の前まで来たところで本格的な上り道に。と言ってもやはり舗装された道なので歩き易い。三原山はとても気軽に登山を楽しめる山だった。この辺りから東側の空模様がかなり怪しくなり始める。淀んだ雲が広範囲に広がり太陽は隠れてしまう。雨が降りだしてもおかしくない空模様に。折りたたみ傘は車に置いてきてしまった。

柵から出なければ楽な道

少し急なのぼり坂に

眺めはかなり良い

天気を心配しつつも無事山頂に到着。実際にかかった時間は35分程度。雲で太陽が隠れ日が射さないので気温は低いが、風は大して出ていないので思ったほどの寒さではない。人の姿も無くこの日一番の登頂者(遊歩道ですれ違った人はきっと観光客ではないから数に含まないっ)ということになる。

三原神社の鳥居

三原神社社殿

山頂に着くとすぐ右手に鳥居が建っていて、鳥居の先の階段を下りていくと三原神社の小さな境内と社殿がある。この三原神社は過去2回の三原山噴火の際、溶岩が社殿を避けるように流れ焼けずに済んだそうだ。溶岩の塊は社殿の後ろすんでの所で止まっている。そんな訳で厄除けの神社として注目されているらしいが、暫く厄病神が憑いていると思うほどに厄ばかりこうむっているので、ここに来たのを機に自分もこんなふうに厄を回避したいものだ。

山頂からの眺めは非常に眺望の効いた広い景色を眺める事が出来るのだが、太陽が雲に隠れて三原山周辺の景色は明るくない。西側は快晴で遠くに広がる海は綺麗な水色をしている。風が出ていて雲も流れているので、そのうち雲が晴れて日が射すことに期待する。

三原神社から眺める西側の眺め

三原神社から山頂を先に進むと小さな展望台がある。しかし3階部分の展望台に上っても火口は見えない。西側の眺めは三原神社とほとんど変わらないし、あまり意味が無い気がするこの展望台は…1階にトイレがあるのは助かるが。

展望台

展望台からは火口が見えない

火口壁から出る噴気

火口見学道

三原山噴火口の一周、お鉢巡りをする前に、展望台から延びている火口見学道へ。三原神社や展望台がある山頂西側は、道が火口から離れているので見えない。そのために西側からでも火口を見られるようにつくられた道だと思われるのだが、終点の見晴台からは火口外周と火口壁の一部が見える程度だった。どうも展望台といい火口見学道といい、もう一歩感が否めない。

火口見学道終点からの眺め

太陽は一瞬雲から出て日が射したと思ったら、またすぐに雲に隠れ周囲の景色は暗くなってしまう。なんか惜しい。とりあえず雨の心配は無さそうなのと、前日の裏砂漠のように強風で先に進めない、という事はないので良しとしよう。ということでお鉢巡り開始。山頂までの遊歩道は舗装路だったが、火口道は足場の悪い未舗装路。今回はトレッキングシューズではなく、総合的に考えてアウトドアシューズを履いてきたので、少々歩き辛いが問題は無い。一周2.5kmの道のりを反時計回りに歩き始める。

この手の山道は七度の富士登山ですっかり慣れているので、なんということもなく淡々と先へ進む。山頂南端辺りまで来ると伊豆諸島の島々が前日よりもよく見え、四島ほど確認できる。一番はっきり見えるのは大島から一番近い利島。あとは鵜渡根島・新島・式根島だろうか。伊豆諸島のある南側も雲が広がっている。これで空全面が快晴ならば、もっと眺望がきいていただろうに。

歩いてきた道を振り返る

伊豆諸島が見える南の風景

伊豆諸島の四島が見える

歩き始めて20分ほどで火口の全景を一望できる場所に着く。これはなかなかの絶景。火口の後ろには綺麗な水平線も見えいい眺め。東側に広がっていた雲はだいぶまばらになり、太陽が顔を出し山頂に日が射し景色も明るくなった。火口道から火口淵まで少し離れているのが惜しい。もっと間近から見られたらさぞ迫力があるだろう。ともあれ、三原山の火口を見たければお鉢巡りをしてここまで来る必要がある。先に見学した火口見学道ではあまりにも物足りない。

三原山山頂中央火孔を一望

火口の底から出る噴気

説明書きがあり、「三原山山頂中央火孔」というのが正式名称らしい。中央火孔は直径300〜350m、深さ200mのお椀のような形をしていて、1986年の噴火の時には火孔の中は溶岩で一杯になったが、1年後の噴火でへこんでこのような形になったとの事。今でも火口の底や火口壁からは白い噴気が出ている。噴気はほとんどが水蒸気で有毒な火山ガスは出ていないらしい。

引き続きお鉢巡り。自分以外人の姿は無く、間違いなく今この三原山山頂には自分しかいない、という情況に少し満足感。ただ万が一道から転落しても誰も助けを呼んでくれないので事故は絶対に起こせない。そういう点から考えるとあまり人のいない時に山登りをするのはリスクがあると言える。事故さえ気をつければ静かで景色を独占している気分になれてとても気持ちがいい。

多分東側の眺め

火口を一周する道

火口道から離れた山頂中央火孔

利島

三原山の火口は1つではなかった。「1986年B2火口」という名前が付いた火口。山頂北側の火口道の外にある。説明書きによれば、1986年11月21日に起きた割れ目噴火というヤツで、南東から北西の向きに約1kmの長さに並ぶ8つの火口から噴火したらしく、この火口はその8つの火口の南側から2番目の火口。

1986年B2火口 少し強引に写真2枚合成…

約55分かけてお鉢巡り終了。案内図よりも10分ほど時間がかかったのは、景色を見ながらゆっくり歩いていたからだろうか。とりあえず、微妙な天気ではあったがそこそこ景色も楽しめたので満足。登山道を引き返し、山頂口に着く少し手前辺りから3組ほどの登山客とすれ違った。時間を見れば9:30。三原山登山は火口一周しても往復3時間前後で出来る手軽な登山コースなので、特に早起きして登る必要も無い。むしろ太陽が十分高く昇ってからの方が、日当たりもよく景色もよく見えるかもしれない。

旅行2日目は三原山登山で観光は終わり。しかし帰りの船の出発時間は15:20で、まだ5時間強の時間がある。とりあえず、朝起きてカロリーメイトとウィダーインゼリーしか腹に入れていないので空腹。ちゃんとした食事をするため、山を下りて前日入浴した御神火温泉がある元町へ。町中を車でうろうろして店を探すのも面倒なので、また温泉の食堂で済まそうと行ってみるが、食堂は11:00からの営業でまだ準備中だった。随分ゆっくりだな… なので温泉へ行く途中で目にした中華料理屋へ戻る。がしかしっ、中華料理屋も準備中だった… 伊豆大島の飲食店は営業開始が遅いのだろうか。他に無いかと営業中のラーメン屋を見つけたが麺は食べたくない、ご飯が食べたい。そうだ、大島の道の駅的存在なぶらっとハウスに行けばきっと何かある、と期待して行ってみる。が…野菜や果物等の生鮮食品の直売が主で、あとはソフトクリームを売っているくらいだった。車中泊した時に外から店内を覗いてテーブルが置かれている部屋があったので、てっきり食事が出る店なのかと思った… もう他に店を探し回る気力も無くなったので、岡田港まで戻って待合所の食堂で食べる事に。

レンタカーの返却時にガソリンを満タンにしておかなければならないので、指定されている岡田港最寄のガソリンスタンドで給油。120km弱しか走らなかったので給油量は少ない、はずなのにその割には請求されたガソリン代が高いと思いレシートを見てみると、リッター185円!高っ!!離島は高いと分かっていたがそれにしても高い。1年前に旅行した種子島でさえ177円だった(給油しなかったけど)。今までの人生で一番高いガソリンだよ間違いなく。

10:20岡田港に到着し、待合所の食堂へ。ご飯が食べたかったので\700のカレーを注文。カレーを食べながらふと考えた。10:50発の竹芝行きの高速船があるので、席が空いていたらそちらの船で直ぐに帰ろうかと。ただ15:20発の船の乗船券は購入済みなのでキャンセル料が掛かってしまうかもしれない。それに出発まで20分を切っているので、今からレンタカーサービスに電話して車の返却を済ませ、乗船券の手続きも済ませるのは厳しい…ということで、やはり15:20まで待つ事に。

待合所の裏手にいた猫

気持ちよく寝てる

待合所の中を覗く猫

乗船まで4時間以上時間があるので、岡田港周辺を散策しようと歩き始めて案内所の裏手へ行くと猫が。何やら人がつくった発泡スチロール製の「猫小屋」の中へ入っていったので、中を覗いてみると生まれて間もない子猫が数匹。びっくりするくらい小さい。他にも待合所の周りには猫が数匹。猫を観察しているうちに待合所正面まで戻ってきてしまう。やっぱり歩いて散策するのは面倒なので、待合所前に停めてあるレンタカー乗り、返却時間の12:00まで車内で仮眠。

ケータイの目覚ましで起きてレンタカーサービスに電話すると、もうキズのチェックは済ませてあるのでそのまま車を置いておいて結構です、と。自分が車内で寝ている間にチェックしていたらしい。ぐっすりお休みになっていたそうだ。しかしレンタカーとはいえ、キーを挿したまま車を放置なんて他じゃありえない。小さな離島だから出来ること。12:00からは港の適当なところに腰をかけ文庫本を読んでいたのだが、冷たい風が出てきたので待合所に入り、2階の休憩室の畳に寝転び15:00頃まで睡眠。そして10分遅れで到着したジェット船に乗り、15:30竹芝へ向けて出航。

17:10竹芝に到着。三原山を中心に荒涼とした景色が広がる伊豆大島から、隙間無く建物で埋め尽くされた都心の風景に舞い戻った。何処も人で溢れ賑やかで、建物の影で生活をしているようなこの街があまり好きではないが、かと言って伊豆大島や種子島のような離島で暮らしていく生活力は自分には無い。それに、自然や空の広い景色を求め、それに癒しや価値観を感じるのは、こういう街に住んでいるからなのかもしれない。竹芝から都心の風景を見渡してみてそう感じた。

竹芝桟橋

竹芝から見える東京スカイツリー

ともあれ、竹芝からもよく見える東京スカイツリーには一度上ってみたい。都心の観光スポットに無関心な自分でも、さすがに世界一のタワーには興味がある。しかし当分は予約制で、その予約を取るのも困難な情況なのでいつ行けるやら…