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瀬戸内しまなみ海道縦断サイクリング(2014年9月)

広島県の尾道市と愛媛県の今治市を結ぶ瀬戸内しまなみ海道はサイクリングロードとしても有名。日本で初めて海峡を横断できる自転車道で、無数の島々が浮かぶ瀬戸内の風景を楽しみながらサイクリングでき、サイクリストの聖地になっている。全長約70kmあるサイクリングコースの各所にレンタサイクルターミナルがあり、誰でも気軽にサイクリングを楽しむことができる。

しまなみ海道縦断サイクリングを決行したのは2014年9月。2012年8月に東京から広島に移住してから、しまなみ海道を自転車で縦断してみたいとずっと考えていたが、20歳以降日常生活で自転車に一切乗らなくなり(16年間まともに自転車に乗っていなかった!)普段全く運動もしないので、体力的に70km走り切れるか不安があり実行保留が2年も続いていた。そんなある日たまたま身近にしまなみ海道サイクリングに興味のある人を数人見つけ、その人らといよいよ実行することとなった。事前に少しでも体を自転車に慣らせておこうと、実行日の一週間ほど前に自宅に一応備えてある自転車(安くて重くてギア無しのシティサイクル)である程度走ってみたが、すぐに太ももの筋肉とお尻が痛くなり余計に不安になる。しかしサイクリング前に自転車に乗ったのはその1回のみで、結局体力づくりも何もしないまま当日を迎える。

自転車はレンタサイクルを利用。レンタサイクルは借りた場所とは別の場所のターミナルに乗り捨てできるので、往路は自転車で縦断して復路は公共交通機関で戻るということができて便利。今回は尾道側から出発して今治まで南下していく縦断。尾道側で最北のレンタサイクルターミナルは本土の尾道港にあり、直ぐ側にJR尾道駅があるので尾道までJR利用なら尾道港のターミナルが便利。ただ、尾道港から隣の向島まではフェリーに自転車を載せて移動するだけなので、尾道までマイカー利用なら向島の「尾道市民センターむかいしま」にあるターミナルで自転車を借りる方がいい。今回はマイカー利用なので尾道市民センターむかいしまでレンタル。ちなみに尾道本土と向島を繋ぐしまなみ海道の新尾道大橋は、自動車専用道路なのでサイクリングコースにはなっていない。また、新尾道大橋の隣にある一般道の尾道大橋は、歩道がかなり狭く自転車の通行に不向き。

尾道市民センターむかいしま

レンタサイクルターミナルで貸し出ししている自転車で乗り捨て可能なものは、マウンテンバイク、クロスバイク、シティサイクル等の一般的な自転車。電動アシスト自転車やタンデム自転車などは乗り捨て不可。乗り捨て可の自転車はレンタル料が1日500円。加えて1000円の保証料が必要で、借りたターミナルに返却すれば保証料が全額返却されるが、乗り捨ての場合には保証料は返却されない。市民センターの建物内にレンタサイクルの受付所があり、料金を支払い簡単な説明を受けてから自転車選び。

しまなみ海道縦断にかかる時間は本気ライダーで3時間、早い人で4〜5時間、体力に自信のある人で5〜6時間、初心者やゆっくり走って10時間程度との事。それだけの時間をかけて70kmも走るので自転車選びは重要。どのタイプの自転車を選ぶか悩むところだが、長距離を走るなら転がり抵抗の少ない細いタイヤと7段変速ギアを備えたクロスバイクが絶対有利。しかしクロスバイクはサドルが細く硬く、お尻の肉が薄い自分には絶対に向かないと思ったので、サドルのクッションが分厚いシティサイクルを選択。ただし変速ギアは3段しかなく自転車の重量は重めなので、クロスバイクよりも体力的負担は確実に大きい。

レンタサイクルターミナル

4人でチャレンジ

しまなみ海道縦断サイクリングは年齢に幅のある4人でチャレンジ。下は19歳から25、30、そして36歳の自分が最年長。しかも若い2人がクロスバイクで30代の2人がシティサイクルという、年長者ほど不利なかたちでのチャレンジとなってしまった。ちなみに自分の服装は、ポロシャツ・ハーフパンツ・ジョギングシューズというラフな格好。強い日差しを想定して帽子と日焼け止めスプレーも用意。

目指すは約70km先の今治市本土にあるレンタサイクルターミナルの「サンライズ糸山」。…だったのだが、今治に着いたらホテルに1泊することになり、予約したホテルはサンライズ糸山から約20kmも先。サイクリングコース周辺にはレンタサイクルを乗り捨てできる宿泊施設が複数箇所あり、予約したホテルも乗り捨て可能な宿泊施設。なのでホテルまで自転車で行こう!という事になったのだが、そうなると走行距離は約90kmにもなる。本当にそんなに走れるのか検討もつかないま、9:15に尾道市民センターを出発。

まずは因島大橋を目指す

これは岩子島へ渡る向島大橋

サイクリングコースは車道の路側帯に青いラインが引かれているので、基本的にライン上を走っていけば迷うことなく進んでいくことができる。自分のように普段自転車に全く乗らない人にとっては、車道の路側帯を自転車で走ることは安全面の不安や自動車の通行の妨げになるようで少々抵抗を感じてしまうが、サイクリングロードに指定されている青いライン上だと安心して走れる。

緩やかな道が続く

今治まで70km

因島大橋

橋を通り過ぎた先で左折

尾道市民センターから4kmほど走ると海外沿いの道路に出る。青空の下海を眺めながらのサイクリングは最高に気持ちいい!いい景色なので自転車を停めて写真を撮っていると、あっという間に仲間との距離が開いてしまい急いで追いかける。これを2回やったら酷く疲れてしまい、以降は自転車を漕ぎながらの撮影のみ。信号の無い快走路を何度もストップ・アンド・ゴーするのはいろいろとしんどい。

見落として真っ直ぐ行かないように

因島大橋まで続く上り坂

自転車歩行車道は車道の下

最初に渡る橋、因島大橋の下を通った少し先で左折し、高さ約50mの橋に上がるために1km強の長い坂道を上る。大きなリュックをカゴに入れたシティサイクルでは結構しんどい上り坂。自転車を漕ぎ慣れていない太ももが悲鳴を上げる。しまなみ海道縦断サイクリングでは6つの橋を渡るが、その度に海岸沿いから橋まで上り坂を走らなければならない。

因島大橋の自転車歩行車道

一直線の橋を快走

因島大橋の自転車歩行車道は車道の下にあり、両側面は金網が張られているので開放感は少ない。それでも高さ50mある橋から海を見渡しながらのサイクリングは気持ちがいい。全長1270mの橋は中心に向かって微妙な上り勾配があり、橋までの坂道で疲れた足にはそれすら負担に感じる。橋を渡り切った先には料金所が。通常しまなみ海道を自転車で渡るのは有料(橋によって50円〜200円と異なる)だが、たまたま自転車通行が無料の期間中だったので料金所で止らずに済んだ。

因島大橋からの眺め

料金所を通って生口島へ

橋を下りて因島に上陸すると、海に向かって延びる長い下り坂。つらい上り坂の後に下り坂を一気に駆け下りるのは正に爽快。そうして海岸沿いの道路に出るも、直ぐに内陸に向かってまた上り坂。スピードを出して一気に上ろうとするが途中で失速。地面に足を着いてしまいたいのをこらえて何とか上り切る。太ももが辛い…

長い坂道を駆け下りる

そしてまた上り坂…

最初からペースを上げて走ると後が持たないので、日常の自転車の速度くらいのペースを保って走る。ただし、ホテルの夕食に間に合うよう70kmプラスαの道のりを走り切らないといけないので、観光スポットに立ち寄ったりちょくちょく自転車を止めて景色を楽しんだりする暇は無い。とにかくひたすら走り、ペダルを漕ぎながら風景を楽しむ。

坂を越えて平坦な道を進む

ペダルを漕ぎながら風景を楽しむ

尾道市民センターを出発して約1時間、15kmほど走ったところで最初の休憩。コンビニに自転車を停め、軽い食事をとりながらここまでの進み具合を確認し、今治の到着時間を予測。どうやらここまでのペースは悪くないが、太ももが結構きているのでペースを維持できるか不安を感じる。20分ほど身体を休めてから出発。

コンビニで休憩

サイクリングマップで進み具合を確認

休憩したコンビニの先にまた上り坂があり、坂を越えて再び海岸沿いの道路に出る。尾道市民センターを出発してから後輪の空気が少ないように感じていたので、休憩や空気補充ができる「しまなみサイクルオアシス」に立ち寄り、空気の補充と小休憩。しまなみサイクルオアシスになっている場所はコンビニ・飲食店・宿泊施設などさまざまで、サイクリングコース沿いに複数点在している。このような施設が充実しているのもしまなみ海道の特徴。

サイクルオアシスになっているコンビニ

空気を多めに入れる

これが目印

生口橋へ向かう

荷物のリュックが少々重く、背負うと疲れそうで出発から自転車のカゴに入れていたが、それだとハンドルが重くなり運転しづらいので背負う事に。結果リュックを背負っても意外と気にならず、ハンドルが軽くなった分走りやすくなった。軽い荷物ならカゴに入れても問題ないが、ある程度の重さがある荷物は背負ったほうが負担が少ない。サイクルオアシスで態勢を整え2つ目の橋の生口橋へ向かう。

口橋へ続く上り坂

まだまだ続く上り坂

1つ前の因島大橋と同じく、橋の上まで1km強の上り坂が続く。後輪の空気補充とリュックを背負いハンドルが軽くなった事でほんの少し楽になった気もするが、やはり橋の上まで坂を上るのはしんどい。まだ後4つも橋を渡らなければならないことを考えると少し気が重くなる。橋へ上る坂道はしまなみサイクリングの難所。

生口橋を渡る

生口橋からの眺め

全長790mある生口橋の自転車歩行車道は車道の脇にある。車道の下を通る因島大橋は開放感が無かっただけに、生口橋は視界が広く開放感があって気分がいい。生口橋も中心に向かって微妙に上り勾配があるが、因島大橋ほどには感じない。長い上り坂を頑張って進み、きれいな瀬戸内の風景を眺めながら橋を渡り、そして海沿いの道路まで坂を駆け下りて生口島へ。生口島のサイクリングコースは島の西海岸沿いの道路をずっと走る。

料金所を抜けて生口島へ

辛い上り坂の後は楽な下り坂が待っている

生口島の海岸線道路を走る

順調に快走

途中でメンバーの1人の自転車のチェーンがギアから外れるというアクシデント。道具を使わず簡単に直すことができ事なきを得た。万が一パンクなど自転車が走行不能になるようなアクシデントが起きた場合、レンタサイクルターミナルに連絡すれば出張修理に来てくれるらしい。他にも自転車のトラブルに対応してくれる法人や自転車店があるので、事前に連絡先を確認しておけばより安心してサイクリングを楽しめる。

ジェラート専門店ドルチェ

休憩を兼ねて生口島で人気のジェラート専門店、ドルチェに立ち寄り。自分は一番人気の「デコみかん&伯方の塩 ダブルコーン」を注文。冷たいアイスで日差しと自転車の運転で熱くなった体をクールダウン。ドルチェに着いたのは11:15で、尾道市民センターからの走行距離は約25km。1時間で10km強のペースは悪くなく、とりあえずは順調と言える。今治本土のレンタサイクルターミナルサンライズ糸山まではあと45kmなので、このままのペースなら16:00前には到着できる。しかし宿泊するホテルまでで考えるとプラス20km。あと65kmと考えるととてつもなく長く感じる…

テラスでジェラート

デコみかん&伯方の塩

アイスでクールダウン

向島から因島、生口島と、6つある島の3つめまで順調に進んできているが、残り3つの島を走って今治市本土へ入らなければならないのでまだまだ道のりは長い。そんな中クロスバイクに乗る若手2人がお尻の痛みを訴えるようになる。やはりスポーツタイプの自転車に乗り慣れていないと、細くてクッション性の低いサドルはお尻が直ぐ痛くなるようだ。自分が選んだシティサイクルのサドルはクッション性が高いので、幸いお尻の痛みはまだない。ただし変速ギアが3段しかなく坂道を上るのがしんどい。上り坂に強いクロスバイクを選ぶか、お尻に優しいシティサイクルを選ぶか、難しい選択だ。

少しだけ海岸を離れる

お尻が痛くて立ち漕ぎ

すぐにまた海岸沿いへ

ヤシの木が並ぶ西海岸の道路

多々羅大橋

平坦な海岸沿いの道路を快走し、大三島へ渡るため多々羅大橋へ。ここも橋の上まで1km強の上り坂が続く。太ももの筋肉が悲鳴を上げるのに耐えペダルを漕ぐ足を動かし続ける。いっそ自転車を下りて歩いたほうが楽だとも思うが、それでは他のメンバーにも自分にも負けた事になるようでイヤなので頑張る。この辺りから上り坂での4人のペースに差が出るようになってくる。一番若い者が一番速く一番年長な自分が一番遅いという、超えられない年齢の壁…もとい運動不足の現実。しかし他人のペースを気にする余裕は無い。もはや自分との戦い。

橋の上へ続く坂道

坂を上りきって橋へ