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その3  3日目朝〜昼

 

毎度の事ながら寒さで夜中に目が覚める。就寝時は寒くなかったので厚着もせず何も羽織らずにいたので、車に常備してあるフードパーカーと暖パンを重ね着し、ブランケットを羽織って再度眠る。しかしそれでもまた途中寒さで目が覚めたので、ヒーターを点けて車内を十分に暖めてから消してまた眠る。そして4:50ケータイの目覚ましで起床。日の出鑑賞をするため漁火公園へ移動…とその前に、前日早朝にパンクを確認し空気を入れた左後輪の空気圧を確認。手で強く押してみても凹むことはなく、見た目も空気漏れしている感じはない。どうやらパンクの穴はかなり小さいようだ。これなら旅を終えて自宅に帰るまで持ちそうな感じ。対馬滞在中に何処かでパンク修理をしてもらうのは時間が勿体無いし、とりあえず自宅までは放置する事に決めた。

漁火公園

(いさりびこうえん:厳原町東里)

対馬の日の出鑑賞スポットを検索して出てきたのが漁火公園。島の東岸なら大抵の場所で日の出を見られるだろうと思ったが、旅の行程上たまたま場所的にも良かったので漁火公園にした。夜間のイカ釣り漁でイカを集めるために灯す漁船の明かりがよく見える公園らしい。と言うことは、対馬はイカが名産ということだろうか。ちなみに今回の旅ではご当地グルメは一切無し!

漁火公園の展望台

公園駐車場から遊歩道を海側へ歩いていくと、日の出を眺めるのにちょうどいい展望台が。周囲の景色は特別印象的でもないが、海岸より結構高い位置にあるので海が広く見えてなかなかよい感じ。しかし肝心の空模様は、太陽の出る東側に雲が広がり、日の出時刻に水平線から太陽が顔を出すのは見られそうにもない様子でガッカリ。半ば諦めムードで日の出時刻を待つ。すると…

水平線の上に灰色掛かっていたものは雲ではなかったようで、5:33に鮮やかな朝日が水平線から顔を出し始める。太陽が水平線から離れる時には、ほんの僅かにだるま朝日のようになった。これは文句なしに綺麗な日の出だ。水平線とその上にある雲までの距離は太陽1.5個分くらいの幅しかなく、太陽が完全に姿を現したと思ったら直ぐに雲の後ろへ。それでも本当に満足できる日の出鑑賞だった。

海の向こうの一部に雲が広がっているものの、朝の時点では対馬は快晴。しかし天気予報は晴れのち曇りで、ところにより傘が必要になるかもしれないとの事。対馬観光2日目は前日の半分ほどの距離しか移動しないので、天気が崩れる前に速めに観光を済ませたいと思いつつ、駐車場に停めた車の中で菓子パンを食べて軽く腹ごしらえをして漁火公園を出発。

万松院

(ばんしょういん:厳原町西里)

時間に余裕があり気が向いたらついでに立ち寄ろうと考えていた万松院に、漁火公園から直ぐで大した時間のロスにもならないので気が向いて立ち寄り。厳原港の隣にある対馬最大の市街地区の奥にある寺院で、百雁木(ひゃくがんぎ)という132段の石段があり、それだけ見物してみたかった。万松院に着き正面右手にある石橋の先から百雁木は延びていたが、石橋と百雁木の間にある門は閉ざされていて通ることができない。反対の左手側に行くと万松院の入場口があり、敷地内に入るには想定外の有料。が、それ以前に拝観時間は1時間半も先の8:00からだった。目的は百雁木だけだし、一応門越しに見られたのでこれでいいということにし、万松院を後にする。

ここからは入れない

百雁木

6:45の太陽

対馬観光2日目は浅茅湾より南側の陸地を一周。厳原市街から東側の道路を南下していく。市街から割と新しい片道一車線の道路が続くが、途中から中央線の無い狭い道路になり島の南端まで続く。車の往来は前日に通った対馬北部の林道などよりもさらに少ない。

こんな感じの道が15kmほど続く

たまにトンネル

対馬南端の海沿いまで出ると道路は片側一車線になり、目的地の豆酘崎が見え始める。対馬の最南端は神崎という岬なのだが、神崎まで道路は通っていなく、岬先端までの整備された歩道も無い観光地化されていない場所。豆酘崎は対馬南西端にあり、2kmほど細長く突き出た岬の先端部に建つ灯台まで車で行けるようになっている。灯台周辺には戦争遺跡も残されていて、対馬南端部で唯一?の主だった観光スポット。

豆酘崎

豆酘崎先端に建つ灯台が見える

豆酘埼灯台

豆酘崎

(つつさき:厳原町豆酘)

豆酘崎の駐車場から続く階段を上りきったところが岬突端の丘の上で、豆酘埼灯台が建っている。小ぶりな灯台で、踊り場の下に小窓があるのが少し変わっている以外、特別な印象も感じない灯台。周囲は木々に囲まれていてあまり海は見渡せず、海を背にした灯台の風景も見られないので、観光スポットとしての印象は弱い。

あの窓は小部屋でもあるのかな

灯台の一段下には倉庫らしきものの跡が。倉庫の上部であり灯台の少し手前に砲台跡があったのだが、随分と小ぶりなもので、雑草や枯れ枝などで荒れていて見栄えしなかったので写真は撮らなかった。そしてここにも尺取虫がうようよ。服についていないか確認すると…虫が潰れた跡と思われる緑色のシミが1ヶ所。一瞬気分が萎える。

倉庫らしき跡

この辺りにも尺取虫がいっぱい…

豆酘崎突端へ続く道

豆酘崎突端の様子

豆酘崎突端まで出ると海を一望。切り立った断崖の上を遊歩道が延びていて、岬突端部をぐるりと一周できるようになっている。豆酘崎最南端からの眺めは、東に対馬最南端の神崎が見える意外島などは見えず質素な眺め。そして空には全体的に薄雲が掛かり、前日のような快晴の青々とした景色が見られず少し残念。時間はまだ8:00を過ぎたばかりなので、もっと日が上がれば景色も明るく鮮やかになるだろうと希望的観測を持ちつつ、やはり天気予報通りどんどん曇っていくのではないかと心配になる。

豆酘崎から眺める神崎

豆酘崎突端の遊歩道

遊歩道を時計回りに一周。遊歩道西側には弾薬庫跡が。駐車場に戻り、ダッシュボードの収納に常備してある車内清掃用のウェットタオルを取り出し、服に付いた緑色のシミをゴシゴシと拭いてみたがイマイチ落ちず…少々潔癖症で神経質なので気になる。この程度のチマチマした事をいちいち気にせずもっとワイルドにならねば。

遊歩道西側からの眺め

弾薬庫跡

豆酘崎から対馬南部の西側道路を北上。豆酘崎から10kmほど進んだところで、道路の外れに目立つ色をした祠のようなものが建っていたので寄ってみる。海岸の一角にひっそりと佇むそれは赤と黄で塗られていて、何となく韓国をイメージさせる。実際韓国の宗教的建造物にこういう色合いのものがあるかは分からないが、なんとなく韓国っぽい気がする。しかし鳥居があるので日本の祠なのだろうか。

海岸に佇む赤黄の祠

色が日本の祠らしくない

さらに北へ進みとある集落に入ると、見慣れない倉庫のような建物がいくつも建ち並ぶ場所が。平屋建てで横に長く、高床式のようになっている。窓がひとつも無いので倉庫か何かと思われ。これまで日本各地を旅してきた中で目にした記憶は無いので、対馬特有のものだろうと考え、その答えは1時間後に明らかになる。

倉庫らしき高床式の建物

今でも使われているのだろうか

さらに北へ進み林道に入る。対馬は本当に海沿いの道路が少なく、車で移動中は離島を旅している気分が薄い。それに漁火公園を出てから観光らしい観光は豆酘崎くらいで、おまけに天気もスッキリしなくて気分が上がらない。午後には山登りの予定があり、山頂からの眺めがなかなかの絶景らしいので、是非とも快晴の下で登りたかった。ただ、帰りのフェリーは翌日の15:00発で予約していて、翌日は基本予備日として空けてあるので、このあと天気が思わしくない状態ならば、山登りは翌日に延期できるので助かる。しかしそれも翌日晴れてくれればの事なので気楽にはなれない。

景色が単調な林道を走る

林道を走っていると道路脇の小さな橋とその奥に建つ鳥居が目に留まり、何となく興味を持ったので立ち寄り。橋を渡ると鳥居が3つ並ぶ短い参道があり、その先に小さな拝殿。地図に載らないような小さな神社。こういう寄り道もたまにはいい。

目に留まった橋

身長と同じ鳥居…なんてね

豊和多都美神社

椎根の石屋根

(しいねのいしやね:厳原町椎根)

林道を抜けて椎根という集落に入り、豆酘崎の次の目的手地である椎根の石屋根に到着。石屋根の高床式倉庫なのだが、パッと見はさほどインパクトのあるものでもない。しかし屋根部分をよく見てみると確かに珍しい。板状の薄い石が何枚も重ねられている。石屋根の家があるのは日本で対馬だけらしく、かなり貴重なもので県の有形文化財に指定されている。右の写真の石屋根倉庫は畑の中にぽつんと1棟だけ建っているものだが、ネットやパンフレット等に掲載されている石屋根は大抵この倉庫。特に貴重なものなのか、それとも壁に椎根の石屋根についての説明書きが掲示されているからだろうか。

一番目にする石屋根倉庫

その説明書きを要約すると…石屋根倉庫は起源は明らかでないが古い伝統を持ち、冬季の強い季節風や雨露から食料を守るために考え出されたもので、火事による損害を防ぐために民家から隔離して建てられ、穀物を中心とする食料や日用生活用品の保管に使われていた…という感じ。ちなみに、椎根の石屋根に到着した時に10人ほどの観光客らしき団体と入れ違った。まとまった観光客を目にするのは前日の韓国展望所以来。GW中であることを忘れてしまいそうなほどに人が少ない対馬。

椎根には数件の石屋根が残されている

板状の石がたくさん重ねられている

石屋根の倉庫にはこのようなプレートが

畑に1棟建つ石屋根のそぐ側に、高床式倉庫が数件並ぶ通りがある。が、それらのほとんどは瓦屋根。元は石屋根だったのが老朽などの理由で瓦に変えられたと思われ。対馬に残る石屋根は50棟程度で、そのうち椎根にあるのは5棟ほどらしい。ここで少し前に見かけた高床式の倉庫らしきものを思い出す。写真を椎根の石屋根と見比べてみると、やはり建物の造りが全く同じ。あそこも元々は石屋根の倉庫だったと思われ。強風で屋根が飛ばされるのを防ぐ策として石屋根が造られたとの事だが、それほど猛烈な強風が吹くのだろうか。それとも昔の家の屋根は強風に耐えられるほど造りがしっかりしていなかったのだろうか。

高床式倉庫が並ぶ

最初の石屋根倉庫へ戻ると、畑の中にこそこそと何やら動く物体。あのかわいい動物はイタチ…ではないか。畑の中を暫くうろうろした後、民家の敷地に入っていた。後から調べてみたところ、ツシマテンという対馬にのみ分布するイタチ科のテンで、国指定の天然記念物になっているらしい。テンという動物に全く馴染みが無いので分からなかった。ちなみに対馬に生息する動物の代表であるツシマヤマネコは、絶滅危惧種なだけに島内滞在中一度も目にしなかった。

早朝に菓子パンを食べただけなので空腹だったが、石屋根倉庫の周囲に食事ができる店や弁当を売っている売店はなさそうなので、こういう時のために買い置きしてある菓子パンと自販機で買ったジュースで空腹を満たす、いや満たされはしないので誤魔化すと言ったほうが正しい。つまり早朝に目を覚ましてからまともな食事をしていない。まぁ自由気ままな車中泊の一人旅なのだから細かいことは気にしない。服の緑色のシミは気になるけど。空腹を抑えて次の目的地へ向けて出発。