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その5  3日目昼〜夜

 

世間は土・日・月と三連休。それでも昼になっても海沿いの国道は空いていて、時折見える綺麗な海岸風景を見ながら快走。本当に気持ちがいい。車窓から青い空と海の風景を眺めながらのドライブは最高だ。今回は車中泊旅で複数の観光地をまわっていくので、あまり1ヵ所にのんびりとはしていられないのが惜しい。角島・元乃隅稲成神社・千畳敷と本当にいい場所で気に入ったので、山口県の日本海側へはまた別の機会に、今度は細かい計画など立てずにのんびりとドライブしたいと思った。

ホルンフェルス大断層

(ほるんふぇるすだいだんそう:山口県萩市)

遊歩道入り口

海岸へ下りていく遊歩道

横縞模様が特徴的なホルンフェルス大断層の駐車場に13:00到着。角島から東へ向けて日本海縦断を始めてから、道路も観光スポットもずっと空いていたのだが、ここの駐車場はほぼ満車で少々面食らう。駐車場内には土産物屋?もあるし、結構知名度の高い観光スポットなのかもしれない。

特徴的な岩壁

岩盤

駐車場から遊歩道を歩いて海岸まで下りていくと、切り立った断崖の上に出る。断崖のぎりぎりまで寄って下を見下ろすと、結構な高さに足がすくむ。柵など無いので足を滑らせたら真っ逆さまだ。断崖の上からは特徴的な岩壁や岩壁の広がる海岸風景を一望。岩壁に強く打ち寄せる波の音が気持ちいい。そして夏ではないかと思うような暑さ。日本海というとどうしても寒いイメージをもってしまうが、10月後半でも暑いときは暑いようだ。

ホルンフェルス大断層

薄い黒と黄色がかった灰色

波打ち際の岩盤まで下りて振り替えると、断崖の切り立った岩壁がホルンフェルス大断層になっている。「ホルンフェルス」とは「角石」という意味で、割ると角ばった破面で割れることからその名が付いたらしい。黒灰ストライプの岩壁は確かに特徴的ではあるが、「大断層」というほど大きなものでもなく、想像していたほど迫力はなかった。それと地質的には「断層」ではなく「断崖」らしい。ホルンフェルスそのものは、個人的にはそれほどのものでもないと感じたが、海岸としてのロケーションは非常によく、ここもなかなかいい場所だと思った。

唐音の蛇岩

(からおとのへびいわ:島根県益田市)

山口県から島根県に入り、「唐音の蛇岩」というのがある岩場へ立ち寄り。すれ違いが困難な細道を1.5kmほど走り、駐車場に車を停め、人気の無い遊歩道を歩いて目的地の岩場へ。観光スポットとしては人気の無い場所だろうと予測はしていたが、本当に観光客の姿は全く無く、岩場に着いても釣りを楽しむ2人組みしか目にしない時点で確信した。

唐音の蛇岩がある岩場を見下ろす

岩場へ続く遊歩道

唐音の蛇岩

ここは最初から期待をしていた観光スポットではなく、時間があればほんのついでに立ち寄ろうと考えていた程度の場所。で、予想通り唐音の蛇岩は期待するべきものではなかった。ゴツゴツとした岩場の1ヵ所が、何かに削り取られたように一直線の窪みができている。知らない人が見たら人工的に削られた道か何かだと思うかもしれない。地質的には珍しく価値のあるものなのかもしれないが、観光スポットとしての印象は非常に弱い。

人生は旅なんだよ、旅も人生なんだよー

唐音の蛇岩はさて置き、岩場からの周囲の眺めは悪くなく、少し岩場を歩き回ってみようかとも思ったのだが、岩場はかなりゴツゴツしていて非常に歩きにくい。車の中にトレッキングシューズを常備しているのだが革靴で来てしまった。こんなところで派手に転んだら間違いなく大怪我…なので無駄に歩き回らず引き返す。正直ここは立ち寄る必要が無かった… 代わりに山口県萩市の青ヶ島でクルージングを楽しんでおけばよかった、などと思っても遅い。綿密な計画を立てた旅でもうまくいかないことは多い。「人生は旅である」っていうじゃないか。人生も旅もいつもうまくはいかないんだ、だからいいのさ。

道の駅 ゆうひパーク三隅からの眺め

唐音の蛇岩を出発してすぐに小腹が減ったので、「道の駅 ゆうひパーク三隅」に車を停める。海岸を見渡せる広場があり、ベンチに腰掛けコンビニで買った菓子パンとジュースで空腹を満たす。考えてみれば、観光に夢中でまともに食事をしていない。さらに考えてみれば、前週の1日目も日没を過ぎるまでまともに食事をしていなかった。本当に相変わらずだなと思う。でも、食事をそっちのけにするくらい何かに夢中になれるっていいことだと思う、たぶん。食事を済ませたところで、道の駅 ゆうひパーク三隅についてのアンケートを頼まれる。かわいいお姉さんだったのでゆっくりアンケート用紙に記入をしていき、少し雑談。

ゆうひパーク三隅から見える素朴な海岸風景の中に、海岸に沿って続く1本の線路。ここを電車が通ればいい絵になるのではないかと思い、少し待ってみるが電車は来なかった。1時間に1本程度しか走らないと思われ。少しゆっくりしてからゆうひパーク三隅を出発し、途中でまた海沿いの道の駅があり、いい眺めはあるかと立ち寄ってみる。ゆうひパーク三隅と名前の似通った「道の駅 ゆうひパーク浜田」。どちらも夕日がよく見える道の駅なのだろう。しかし夕日鑑賞は先の石見畳ヶ浦でするので道の駅には留まらない。そして、ゆうひパーク浜田からの風景が期待したものではなかったので早々に車を出す。

道の駅 ゆうひパーク浜田からの眺め

石見畳ヶ浦

(いわみたたみがうら:島根県浜田市)

16:20、石見畳ヶ浦駐車場に到着。狭い駐車場に車は1台も停まっていなく、辺りはしんとしていて物寂しげな雰囲気。もしやここも唐音の蛇岩みたいな場所なのか、と心配になる。駐車場の隣に石見畳ヶ浦へ通じるトンネルと案内板がある。案内板を見ると、石見畳ヶ浦の「石」の読みが「いし」ではなくて「いわ」となっている。何故だろう。

入り口のトンネル

洞窟の中に出る

トンネルに入るとザザーッという大きな波の音。冒険心が膨らみ奥へ進んでいくと洞窟の中に出る。天井がボコボコと特徴的なかたちをしている。洞窟には海岸と繋がるふたつの穴があり、そこから洞窟の中に波が押し寄せ大きな音を響かせていた。穴のひとつからは猫島という岩が見える。洞窟からさらにトンネルは続く。

洞窟の中

洞窟から外を覗く

さらに続くトンネル

トンネルを出ると、千畳敷と名のつく岩場の海岸に出る。この日2ヵ所目の「千畳敷」。本当に千畳敷と名のつく場所は多い。石見畳ヶ浦の千畳敷の地面にはボコボコと丸い岩が無数にある。中にはきのこのような形をしたものも。これはなかなか珍しい光景だ。通ってきたトンネルの方を振り返ると、まるで海に浮かぶ小島のようなかたちをした岩山がドーンと目の前に。駐車場側と千畳敷側では全く違う景色で、トンネルを通って別次元に来たような気分。とりあえず唐音の蛇岩の二の舞ではなく、見所のある場所で安心した。

千畳敷

きのこみたいなかたち

この日の観光は石見畳ヶ浦で終わりで、ここで夕景鑑賞をする事にしていたので日没まで待つことに。といってもまだ日の入り時刻まで1時間近く時間があったので、とりあえず散策。石見畳ヶ浦は南北に延びていて、トンネルのある南から北へ向けて歩く。千畳敷は南側にあり石見畳ヶ浦の中間辺りに馬の背という地層の盛り上がったところがある。地質に関心の無い自分にはただの岩場にしか見えない。それにしても、千畳敷だけでなく馬の背と名のつく場所も各地で見かける。富士山の剣ヶ峰や蔵王お釜の峰などにも馬の背と名がつけられている。他には不動滝という名が多くの滝につけられていたりするし、この手の名前はいつどのようにして広まったのか、ちょっと気になる。

猫島

馬の背

石見畳ヶ浦は「かおり風景100選」というのに選ばれている。安らぎや元気を与えてくれる素晴らしい景色があり、そんな景色を体全体で感じることができる香りがある…そんな場所が選ばれるらしい。何だか随分あいまい、というか選考基準がはっきりしない100選な気がする。石見畳ヶ浦は特徴的な岩場と磯の香りで選ばれたようだが、訪問時に磯の香りがしていたかは覚えていない。

日没30分前の太陽

めがね橋

石見畳ヶ浦北側にあるめがね橋まで行ってみるも、「めがね」と名をつけるほど弧のあるわけでもなく、ごく普通な感じのコンクリート製の橋。しかも老朽しているらしく鉄パイプの補強が組まれ、見栄えが悪かった。石見畳ヶ浦は千畳敷の広がる南側の方が楽しめる。

適当な場所で腰を下ろし、夕日を眺めつつ日没まで小説を読んで時間を潰す。考えてみれば前週の1日目も同じように、人気の無い海岸に腰掛け日没を待っていた。何だか変な感じ。17:45に太陽が完全に水平線に消えるのを見届けてから腰を上げる。

温泉津温泉

(ゆのつおんせん:島根県太田市)

石見畳ヶ浦で観光を終え、入浴のために立ち寄った温泉津温泉。温泉津温泉は日本の温泉街の中で唯一「重要伝統的建造物郡保存地区」に指定されていてる。古い町並みが残る温泉街はメインストリートでも道幅が狭く、すれ違いが困難なところが多い。温泉街に着いたのは18:50。帰り客と重なってしまったようで、狭い路地に続々と対向車が来て面倒なことに。建物の壁ギリギリに車を寄せて停車し、対向車の列を通過させる。そしてまた直ぐに対向車が複数台。なかなか先に進めない…

何とか目的の入浴施設、薬師湯に到着。温泉街の中で日帰り入浴できる外湯は2箇所のようで、特徴的な外観と隣にお洒落なカフェがあり、車20台分の駐車場がるという薬師湯に決めていた。幸い駐車場に1台分の空きがあったが、縦に3台並ぶ駐車場なので、奥の車を出すときは手前の車も移動しなければ出られない。駐車場前の通りが狭いので余計に面倒そうだ。まぁ車の移動は入浴施設の人がやってくれるだろうからいいさと、そこに停める。

薬師湯

薬師湯となりのカフェ

カフェ内のギャラリー

薬師湯の隣にある木造洋館のカフェで食事をしてから入浴したかったのだが、カフェの営業は終わっていた。温泉に着く前に何処かで夕食を済まそうと思ったのだが適当な店が見つからず、店内で落ち着いて食事をしたかったのでコンビニは避けていたら温泉街に着いてしまった。食事だけが目的ではなく、カフェは大正ロマン溢れるお洒落な建物で、アンティークな調度品も沢山展示されているとのことで楽しみにしていただけに残念。室内照明のついた中を覗いてみると、絵画が沢山飾られたギャラリーになっていた。

空腹のまま薬師湯正面の男湯入り口をくぐる。入り口は男女別になっているが、入れば同じ廊下に出る。入浴料は350円と安いが、浴場にシャンプーや石鹸は無いとのことで、番台で携帯用シャンプー・ボディーソープのセット(200円)を購入。それと車のキーを番台さんに渡す。うっかりキーを渡すのを忘れたら、自分が入浴している間に自分の車の後ろに停めてある車が出られなくなるので大変だ。男湯ののれんをくぐって脱衣所へ。薬師湯の施設内に関しては事前にチェックしておらず、浴場についても何も知らないまま脱衣所と浴場を仕切る扉を開けた瞬間、一瞬目が点になった。浴場狭っ!そして何だこの浴槽はっ!

風情ある薬師湯入り口

今まで入ったことのある入浴施設の中で恐らく一番狭い浴場に驚き、おそらく今まで見たことの無いタイプの浴槽にも驚く。6人も入ればいっぱいになってしまう小さな浴槽なのだが、何と形容したらいいのだろう、言葉が思いつかない。とにかく独特で歴史を感じさせる。入浴客が数人いたので写真を撮りたくても撮れなかった。とにかくそこらへんの温泉とは一味違う。日本温泉協会から最高評価の認定書を受けた温泉で、全国に12ヵ所しかない「オール5」の評価の温泉…らしく、一見の価値ありな温泉なのは間違いない。ただ、狭い浴場には次々と入浴客が出入りするので、いつものようにのんびりと湯に浸かっていられず、早々に入浴を終える。どうせ空腹なので長時間の入浴はしんどいし。。ドライヤーは脱衣場に設置されていないが、番台で貸してもらえる。ただ、脱衣所のコンセントがある場所に鏡はなかった。

2階に上がると窓辺のラウンジや和室の休憩室、マッサージルームなどがある。とても落ち着いた雰囲気のある空間。階段の踊り場にはアンティーク家具などが置かれていたりしてレトロ感たっぷり。3階まで上ると無料のコーヒーメーカーが設置されていて、先の扉を開けるとそこは屋上。ベンチとテーブルが置かれていて、オープンカフェのような感じ。空いていればこの温泉施設はかなりくつろげる場所だ。浴場と浴槽は狭いけど。入浴後のくつろぎよりも空腹を満たす食事が必要な当人は、施設内で休憩はせずに薬師湯を出る。

窓辺のラウンジ

階段踊り場

薬師湯屋上

車は縦3列の駐車場の一番奥に移動されていたので、番台の人に前の車を一旦道路に出してもらう。こういう時に万が一、入浴施設の人が客の車に傷をつけてしまった場合、事故処理はどうなるのだろうと素朴な疑問が頭に浮かんだ。再び狭い道を通って温泉街を出るまでの間に、ちょっと気になる建物が目に留まったりしたが、車を停める場所が無いので仕方なく素通り。何処かに車を停めてから少し散策しようかとも思ったが、暗くてよく見えないだろうし空腹なので諦める。

温泉津温泉の近くには石見銀山という、世界遺産の鉱山遺跡があり、「石見銀山遺跡とその文化的景観」の一部として温泉津温泉も世界遺産に登録されている。当初の計画では、前週の旅行2日目の午前中に温泉津温泉街の古い町並みを散策し、それから石見銀山の観光をしようと考えていた。しかし旅行2日目の雨天中止により計画を大幅に修正した結果、温泉津温泉は日没後の到着で入浴のみとし、石見銀山の観光は丸々ボツとなった。いろいろな都合上そうなってしまったが、石見銀山と温泉津温泉街の観光はいずれ日帰りドライブで行うと思った。

温泉街から国道に出ると、対向車のライトに照らされたフロントガラスが白っぽく曇って見づらい。朝からずっと海沿いを走っていたので、潮風の塩分が付着したのだろうか。瀬戸内海は何度もドライブしているがそのような事は無かった、と思う。瀬戸内海は波が穏やかなので、潮風もあまり吹かないのかもしれない。いやそれ以前にこれはただの汚れかもしれない。滅多に窓拭きしないし…ウィンドウウォッシャー液とワイパーで曇りを取る。窓の隅に溜まった汚れを後で拭き取らないとなぁ、などと考えながら、食事できる店を探しつつ車を東へ向けて走らせる。コンビニ…の弁当はイヤだし店内で食べたい。モスバーガー…ファーストフードはイヤだし米が食べたい。ファミレス…いつものジョイフル、ここでいい。温泉津温泉から1時間半近く車を走らせやっと食事にありつく。そして就寝地に決めていた道の駅に着いたのは22:00。前週に利用した「道の駅 大社ご縁広場」。三連休が関係しているのか、広い道の駅は車中泊と思われる車で半分くらい埋まっている。エンジン音や人の声で結構賑やか。耳栓とアイマスクをして22:30就寝。