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2012年4月17日(火)  巡拝2日目  晴

参拝札所:2・3・4・5・6・7・8番

歩行距離:24.1km

合計距離:25.9km

出費額:¥2,170

合計額:¥2,170

 

寒さで2:00頃に目を覚ます。深夜は冷え込みが増してかなり寒い。最低限持参してきた衣類を重ね着しても全然寒く、寝袋の中で体を丸めても気休めにもならない。そして硬い地面で腰や足の骨が出た部分が痛い。まともに睡眠が取れないまま6:30起床。朝もまだ寒い、そして空腹。どうやら風邪は引いていない。荷物をまとめて7:00少し前に道の駅を出発。前日夕方に見かけたテントは女性が片付けていた。

7:00過ぎに第二番札所の極楽寺に到着。一番乗りかは分からないが境内に人影無し。これは好都合、昨日できなかった読経をひと目を気にせず出来る。それでも初めてなので声に出して経を読み上げるのは気恥ずかしいものがある。本堂と大師堂の参拝を終えたところで、道の駅で見かけたテントで野宿をしていた女性が参拝に来たので、軽く挨拶。白衣を着たお遍路さんだった。年齢は自分と同じか少し上くらいだろうか、線が細く綺麗な顔立ちの人だった。しかし本堂の階段下に置かれた女性のリュックを見てビックリ。自分のリュックよりもずっと大きい。男でもこれを背負って歩き遍路をするのはかなり大変だと思う。後から荷物の重さで参ってしまわないか少し心配。

第二番札所 極楽寺(ごくらくじ) 山門

極楽寺 本堂

極楽寺 大師堂

極楽寺の納経所で頭に巻く手ぬぐいを購入。遍路笠の頭の受け部分がゴツゴツするので。汗が頭から流れるのを防ぐのにも役立つ。前日と打って変わって2日目は朝から快晴で日差しが強く、極楽寺の参拝を終えた頃には結構暑くなっていた。

 

道しるべを頼りに先へ進む

遍路日和

極楽寺から第三番札所の金泉寺へ向けて遍路道を進む。遍路地図と路上の道しるべを頼りに、青空の下長閑な田舎道を歩いていると、四国遍路という大きな挑戦を始めたのだといよいよ実感が涌いてくる。向かいから歩いてくる逆打ちのお遍路さんと挨拶。2012年は閏年なので逆打ちのお遍路さんが多い年。閏年に逆打ちをすると功徳がある、弘法大師に会えるとされている。

大昔の標石

金泉寺へ

 

極楽寺から40分ほどで第三番札所の金泉寺に到着。二番から三番までの道のりは約2.6km。金泉寺も人影がなく、参拝を終えて寺を出るまでの間に来たお遍路さんは5人程度。遍路参りを始める前は、どの寺も常に白衣姿のお遍路さんが何人もいるようなイメージを持っていたが、そうではなかった。山門を出たところでビラを配るおじさんに声をかけられる。第七番札所の近くにある温泉旅館の営業だった。まだ今日の宿泊場所が決まっていないなら是非いかがですかと勧められたが、野宿をするのでと断った。本当は宿に泊まるか野宿をするか、まだ何も考えていなかった。今日も行き当たりばったりでいいかと楽観的だったので、意外と前日夜の睡眠不足には堪えていないようだ。

第三番札所 金泉寺(こんせんじ) 山門

金泉寺 本堂

金泉寺 大師堂

 

金泉寺の山門を出て直ぐに、商店から出てきた店主?のおじさんに声をかけられる。そして威勢のいいおじさんの人生における哲学的な長い説法が始まる。これが本当に長い…立ったままじっと聞いているとリュックの重さで肩がだんだん痛くなってくる。しかしこれも修行、ありがたい事なのだと最後まで聞く。ありがたい説法を受けている間に、第二番札所で挨拶を交わしたテントの女性に抜かれてしまった。結構小難しい話だったが、要約すると「自分に自信を持って生きろ」という事を伝えたかったのだと思う。

昔からの遍路道

いろんな道しるべがある

金泉寺から歩き始めて少したところで、お遍路休憩所で腰を下ろしているテントの女性を見かける。やはりテントの完全野宿装備の重さに堪えているのだろうか。声をかけて少し話をしてみたいところだが、四国参りをしているのに下心のあるヤツと思われそうなので止め、そのまま先へ進む。

長閑な景色を楽しむ

ハイキング気分

重いリュックに慣れず肩が痛くなり、あぜ道に建つ小屋で腰を下ろして一休みしようとした所に、タイミングよく農作業をしていたらしいおじさんがやってきて声をかけられる。そしてまた長いお話が始まる。言葉になまりがあり少々聞き取り辛いが、ありがたいと思いながら最後まで話を聞く。ここに日本一の奉公娘がいて、とても苦労してかわいそうな人だった…とか、官直人も四国参りでここを通った、他にも有名人が結構ここを通っている…とか、老人は多くの知識を持っていてどんな事に対しても考える人…とか、いろいろな話を聞かされた。いや本当にありがたい。そして話を聞いているうちにまたテントの女性に追い抜かれる。

 

10:20第四番札所の大日寺に到着。第三番札所からは約5.0kmと少々距離が長くなり、暑い中山道の長い上り坂を歩いてきたのでクタクタ、肩も痛い。おまけに前日昼頃に高松駅でうどんを食べて以来、まともに食事をしていないので空腹でフラフラ。夜は寒くて睡眠もロクにとれてないし、何だかのっけから行き当たりばったりが過ぎる。本当にこの調子で八十八箇所まわれるのか少し不安になる。

第四番札所 大日寺(だいにちじ) 山門

大日寺 本堂

大日寺 大師堂

 

第五番札所の地蔵寺は大日寺から約2km。第一番札所の霊山寺から第十番札所までは各札所間の距離が近く、険しい山道も無いのでテンポよく札所を巡拝できる。五番まで来ると少しは参拝に慣れてきて、白衣と遍路笠にも違和感を感じなくなる。ただ読経はまだ恥ずかしいが。地蔵寺で空腹がかなり厳しくなる。三番から四番に向かう途中にうどん屋があったが、もう少し先で食べようと入店しなかった事を後悔する。遍路道は店の少ない農地や山間部に多いので、タイミングを逃すとなかなか食事にありつけなくなってしまう。車なら数キロ先の店もすぐだが、歩きではそうはいかない。その辺も考えて行動しなければいけない。

第五番札所 地蔵寺(じぞうじ) 山門

地蔵寺 本堂

地蔵寺 大師堂

 

うどん屋で昼食

地蔵寺を出て暫く歩いたところでようやく飯屋を発見。遍路道の1つ隣を通る国道にうどん屋があった。出来れば肉料理をガッツリ食べたかったが、空腹が限界でこれ以上店を探す余裕は無い。遍路姿で初めて一般の店に入るので気詰まりしたが、入店するとお遍路さんが数名いたので安心した。歩き遍路は体力が資本。しっかり栄養をつけたかったので、うどん以外にハンバーグとサラダのセットも注文。しかし食べすぎは禁物。体が重くなって歩くのがダルくなるし、急に便意をもよおしても近くにトイレがあるとは限らない。歩き遍路はいろいろと気を使うことが多い。

車の往来が多い国道の歩道を歩いていたら、前方から自転車に乗ったおばあさんが向かって来て、自分の十数メートル手前で自転車を降りてじっと立っていた。そして自分がおばあさんの立つ場所まで来たところで、自分に一礼し「少ないけどお接待させて下さい」と、100円玉を差し出してくれた。これが初めて受けるお接待。ありがたく受け取り、お礼に納め札を受け取っていただく。するとおばあさんは自分に手を合わせて短い経を唱えた。とても信心深い方のようだった。この100円はとても大きく重みのあるものに感じた。そして見知らぬ自分にお接待をしてくれる相手の気持ちを大切にしなければいけないと深く思った。胸がいっぱいになって涙が出そうになった。

意外と自分を撮る機会が無いので自分撮り

 

五番から約5.3kmの第六番札所安楽寺に13:00過ぎ到着。安楽寺で初めて、バスで移動するお遍路ツアーの団体と出くわす。結構な大人数で、中年のおばちゃんがメインでかなり賑やか。しかもおばちゃん達は境内のベンチを占領。すると寺の住職らしき人が出てきて、歩き遍路に席をを譲るよう強い口調で注意していた。何につけてもマナーの無い団体客ほど迷惑なものは無い。遍路ツアーは大人数で参拝所を占領してしまい、他の巡拝者の参拝の妨げとなる事もあるので、正直なところ歩き遍路にとっては最も遭遇したくないお遍路さん達。

第六番札所 安楽寺(あんらくじ) 山門

安楽寺 本堂

安楽寺 大師堂

参拝を終えたところで、テントの女性のお遍路さんと再会。自分が何処かで追い抜いていたようだ。「早いですね〜」と言われたが、そんなに大きな荷物を背負っているあなたの方が早いですよ。

 

安楽寺から第七番札所の十楽寺までは約1.2kmとすぐ側。それでもたまらない暑さに疲れ気味。境内の自販機でコーラを買ってがぶ飲み。暑さの中一日中外を歩くのだから水分はしっかり摂らないと熱中症になりかねない。暫く日陰で涼んでいたいところだが、休憩もほどほどに次の札所へ向かう。今回はただの旅行ではない、観光気分のアウトドアでもない、ある意味自分を試すための修行である。時間的・金銭的・体力的に余裕を持たせては意味が無い。不便・苦労・辛い思いをするために四国参りをしているのだからと自分に言い聞かせる。

第七番札所 十楽寺(じゅうらくじ) 山門

十楽寺 本堂

十楽寺 大師堂

 

静かな住宅地を歩いていると、突然後ろから大声で「こんにちは!」と小学生くらいの子供に声を掛けられ思いっきり驚く。思わずこちらも大きな声で返す。四国ではお遍路さんと挨拶をする習慣があり、特に小さな子供とお年よりは相手のほうからよく挨拶をしてくれる(勿論全員ではなく、こちらから挨拶をしても返事の無い事もある)。笑顔で「こんにちは」、「ご苦労様です」、「がんばってください」と声を掛けられると、その一言が大きな力になる。四国参りをまだ始めたばかりだが、お遍路の文化は本当に素晴らしいと感じた。

足をくじいた橋の上から

とある橋の右側の歩道に入ったところ、左側の方が眺めがいいので左へ移ろうとガードレールをまたいだ時に、右足首を軽くくじいてしまった。結構な痛み。余計な事をしたと後悔… ただでさえ暑さと疲労でペースが落ちているのに、余計にペースが落ちる。15:00を過ぎても西日がジリジリと暑く体力を奪う。

遍路地図を見て第八番札所の少し手前に温泉施設があるのに気付く。そこで、次の第八番札所で打ち止めにしてその温泉で食事と入浴を済ませ、前日に続き野宿をすることに決める。前日は悪天候だったが今日は快晴なので夜間もそんなに寒くならないだろうと判断。営業時間や飲食店の有無を確認するため、遍路道から外れて温泉へ立ち寄ってから八番札所へ。

 

温泉から第八番札所までの道が結構急な上り坂で、おまけに1km近く続いていてかなりキツく、巡拝2日目一番の難所となった。とにかく暑い、荷物が重い、くじいた足が痛い… 第八番札所熊谷寺の参拝を終えたのが16:00。次の第九番札所までは約2.4kmなので、このまま向かえば納経所が閉まる17:00までに間に合うが、九番札所の周辺には宿も入浴施設も無い。かと言って十番札所の近くにある宿まで歩く余力も無い。それに出来れば野宿にしたいし、でも入浴もしたいし。ということで、当初の予定通り先に立ち寄った温泉へ向かう。

第八番札所 熊谷寺(くまだにじ) 山門

熊谷寺 本堂

熊谷寺 大師堂

 

夕食

本当にクタクタな状態で16:30温泉に到着。天然温泉御所の郷。疲れて温泉の建物外観か看板の写真を撮るのも忘れていた。空腹だったのでまず食事。温泉施設内のレストランでビーフカレーを食べる。そして待ちに待った入浴。脱衣所で右靴下の親指に穴が空いているのに気付く。早っ!!まだ20kmちょっとしか歩いていないのにっ!足の爪が若干上を向いているが、アウトドア用の厚手でしっかりした靴下なので早々穴が空く事は無いと思っていたのだが… まぁ見てくれを気にしなければ問題ない。

汗をかいて疲れた後の入浴は本当に気持ちがいい。が、何だか疲労で気分が悪くなる予兆を感じたので、早々に温泉を出る。入浴後は休憩所の畳に寝転び仮眠し、野宿で不足した睡眠を補う…つもりが、子供がうるさくてあまり眠れず。閉館時間の24:00まで時間を潰し、退館時にフロントでトイレのある野宿できる場所は無いか尋ね、温泉前の公園にトイレがあり野宿も出来ると教えてくれたので行ってみる。しかし地面は硬く明らかに寝心地が悪いので、他にいい場所は無いか周囲を見てまわるが見つからず。

結局温泉に戻り正面玄関の玄関マットの上に寝袋を敷く。玄関マットなら多少柔らかく、地面ほど冷たくも無い。なかなかいいアイデアだと思う。入浴で使ったタオルと手洗いした頭の手ぬぐいを金剛杖に掛けて乾かす。寝袋の隣に置いただけの荷物が少し心配だが、お遍路のものを盗む罰当たりはそういないだろう。そして別の場所には見覚えのあるテント。例の女性のものだ。どうやら考える事は同じらしい。テントなら荷物も入れられるので安心だ。そう考えると少し荷物が重くなってもテントを用意してきた方がよかったかなと思う。24:00就寝。

玄関マットの上に敷く