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その3  2日目朝〜昼

 

夜中に風音で目が覚める。1年前のような車が揺れるほどの強風ではないが、少々強めで風音が大きい。そして夢を見ていた。トヨタ・ハイエースにベッドを載せて車中泊旅行をしている夢。定年後はハイエースなどのミニバンを買ってDIYで車中泊仕様に改造し、春と秋のいい季節は1ヶ月前後の長い車中泊旅行をのんびり楽しみたい、そんな事を薄っすら考えているので、それが夢に出てきたらしい。ただ、定年後にも車中泊旅行をする気力・体力・好奇心などが残っているかは怪しいが。。再度眠りに就いて以降は熟睡し、スマホの目覚ましで4:20起床。外は微風になっていた。寝袋とエアーマットは畳むのが面倒なので後ろに押しやり、後部座席を元に戻すだけで寝床の片付けを完了。今晩も車中泊するのでこれでいい。それから簡単な荷物整理をして、買い置きしておいた菓子パンを食べて、日の出見物のため知夫里島灯台へ向かう。

高平山

(たかひらやま:島根県知夫村)

糞まみれの高平山に再び足を踏み入れなければならないのは気が重いが、朝日を眺めるためなので仕方がない。日の出前で空はまだ薄明るく、前日以上に足元に注意しながら山頂の灯台まで歩く。灯台はまだ点灯中で、光源が暖色系の白色と赤色の2色であることに気付く。考えてみれば今までに見てきた灯台の中にも、白・赤2色の光源を持つものが他にもあった気がする。当然何かを知らせているんだと思うが、灯台マニアではないのでそこまでは調べない。

白色と

赤色と

灯台の側から東側の眺め

前日にチェックしておいた灯台左手の海を見渡せる場所へ移動し、日の出をじっと待つ。1年前の隠岐の島旅行2日目の早朝は、島後北端の見晴台から日の出を待っていたが、その時は強風で寒さに耐えながらの見物だった。今回はほぼ無風で寒くないので助かる。前日の日没前から広がり始めた雲が心配だったが、幸いな事に旅行2日目も快晴。ただし太陽が昇る東の方角には雲が広がっているので、水平線から顔を出す朝日を見るのは不可能となった。日の出も日の入りも、水平線の先まで晴れている事はなかなか無い気がする。日の出時刻は5:15分だったが、雲の後ろから朝日が顔を出したのは5:19。なかなか鮮やかで気持ちのいい朝日を見ることができた。

1日の始まりに朝日を見ると旅気分も高まる

ズボンに止ったてんとう虫

日の出見物後は西側の風景を一望できる方へ移動し、早朝の知夫里島を眺望。相変わらず景色は霞んでいるが、前日よりはいくらかマシなようにも見える。眺める時間帯が違うからかもしれない。知夫里島灯台が建つ高平山はマイナースポットながらいい展望地だと思うが、いかんせん足の踏み場に困るくらい糞が落ちているのが辛い。赤壁のように遊歩道や展望地に牛避けの柵を設置できないものだろうか。

<< SCROLL    高平山から西側の眺め パノラマ写真180°    SCROLL >>

朝焼けに染まるお松橋

知夫里島灯台のシルエット

景色をのんびり楽しんでから遊歩道の坂道を引き返す。行きは日の出前なので分からなかったが、遊歩道からでもちょうど真正面に朝日を眺める事ができた。そして駐車場(と言うより駐車できるスペース)に戻ると、マイカーが二匹の牛に囲まれていた。少し離れた場所から様子を窺っている自分に牛が気付き、一匹がのそのそとこちらに向かって歩いてきた。少々焦るも牛は自分の前を通り過ぎ、遊歩道脇の獣道に入っていった。もう一匹は子牛で人間の自分にビビッている様子で、こちらをじっと見て車の前で固まったまま。仕方なくこちらから子牛に近づいて行くと、慌てふためいてバタバタと走り去っていった。

遊歩道からの眺め

マイカーに牛がたむろ

無事マイカーから牛を追い払ったところで、念のため車に異常が無いかを確認。すると運転席側のドアミラーが何やらべっとりと濡れている。これは多分、牛に舐められた… まぁほっとけばいいさ。高平山から朝日を見終え、計画通りに知夫里島観光は完了。あとは西ノ島へ渡るために来居港へ戻り、9:57出航の島前内航船を待てばいい。しかしまだ6:00を回ったばかりで4時間近く時間があるので、暇つぶしで島津島へもう一度行くことにした。

島津島 …の西へ再び

(しまづしま:島根県知夫村)

お松橋を渡って三度目の島津島上陸。島の西へ続く遊歩道を進むか、それとも南へ続く遊歩道を進むか少々迷うも、前日に西端の海岸を訪れた時は景色が陰って冴えなかったので、朝はもっといい景色が見られることを期待して西へ続く遊歩道を進む。

西端の海岸へ続く遊歩道

途中から遊歩道が水浸し

島津島北岸沿いの遊歩道を歩いて島の西端にある海岸へ向かう。前日に歩いた時は夕方で周囲の景色に影ができていたが、朝は日差しを受けて景色が明るくいい眺め。同じ場所でも時間帯によって全く印象が違うものなのだと実感。舗装された遊歩道は途中から水に浸かったように濡れていて、地面の上には海草があちこちに転がっていた。夜間に海面が上昇していたのか、それとも強風で波立って海藻まで打ち上げられたのか、それは分からない。

遊歩道に転がる海藻

それにしても気分がいい。快晴で空も海も青く、明るい風景が視界に広がっているからというのもあるかも知れないが、妙に心が軽いのは何故だろうかと考えてみてふと気付く。道に糞が落ちていない、むしろ視界に糞が全く無い!考えてみれば前日夕方からの高平山、島津島の南端へ続く遊歩道、そして今朝の高平山と、牛糞まみれの観光が続いていた。

遊歩道の西端に渡津神社

朝日が眩しいぜ

渡津神社に着いたところで、神社の後ろから撮った写真を何処かで見て構図がいいと思ったのをふと思い出し、真似してみようと社殿の屋根の高さほどある神社の後ろへ回る。しかし朝は思いっきり逆光で眩しく、撮った写真はシルエット気味になってしまう。ここは前日の夕方に訪れた時に行っておくべきだった。

渡津神社の後ろからの眺め

渡津神社裏手からも海を眺められる

キャンプ場になっている西端の海岸

白い流木が沢山転がっていた

キャンプ場になっている海岸も前日とは随分印象が違う。黄色と赤茶色が混じった岩に朝日が当たり、濃い鮮やかな色になっている。前日は周囲に散乱するゴミばかりが目に留まったが、白くきれいな流木もあちこちに転がっていた。これは部屋のオブジェとか何かに使えそう。東急ハンズなどではこういう木がそれなりの値段で売られていたりするし。ところでこういう流木は勝手に持ち帰ってもいいものなのだろうか。いずれにせよ、用途が無ければ結局ゴミになるだけなので持ち帰るのはやめておく。時間は7:00を回ったところで、風が出ていないからか既に少し暑い。同じGW中の旅行でも毎日強風だった1年前とは大違い。

県道から島津島北岸を眺める

7:30過ぎに島津島を出て来居港へ向かう。日の出後の島津島散策は気持ちのいい朝の散歩になった。際立った観光スポットではなくとも、晴れ空の下で景色も空気も澄んだ場所をのんびり散策するのはとても気分のいいものだと実感。これまで行なってきた車中泊旅行は、時間の余す限り次々と観光地を回る高密度な旅が多かったが、年と共にそういうガツガツした旅よりも、時間と心に十分余裕を持ったのんびりした旅の方がいいと思うようになってきた。

来居港に7:50に到着するも、フェリーターミナルはまだ閉まっていた。どうやら着くのが早過ぎたらしい。ターミナル横の駐車場に車を停め待機し、8:00過ぎに職員が出勤してきたので内航船の乗船手続きは何時から始まるか尋ねたところ、事前の手続きは不要で船員に直接乗船料を支払えばいいとの事。1年前に中ノ島から西ノ島へ渡るために内航船を利用した際は、一般のフェリーと同じく受付に車検証を提出しての乗船手続きが必要だった。乗船手続きを簡略化したのだろうか。

知夫里島に寄港する内航船は1日2便だけ

車をターミナルの駐車場から内航船乗り場へ移動。まだ他に乗船客はおらず一番乗り。それから暫く経っても誰も来ず、到着があまりにも早過ぎた事が明らかに。結局二番目の乗船客が来たのは9:00過ぎで、これなら港の到着を1時間以上遅くして別の場所を観光できた。出航の1時間前までに到着すれば乗船できると、前日にアドバイスをくれた職員が正しかった。少々時間を無駄にしたがまぁ仕方ない。万が一にでも乗船できないと旅行計画が大きく狂ってしまうので、時間で安心を買ったという事にしておく。

一番乗りで到着

島前内航船「どうぜん」

船は遅くとも出航時間の10分前までに港に着くだろうと思い、9:30頃から車外に出て海を眺めるも船は一向に現れず。そして出航10分前を切った9:50を過ぎても船は到着せず。何らかの理由で到着が大幅に遅れるのではないかと心配しつつ、遠くの海まで見渡していると港に向かってくる船を発見。そして出航時間を過ぎた10:00に内航船が港に到着。公共交通機関は定刻通りに発着するのが当たり前だと思っている日本人的考えを持っていると、少々の遅れで心配したり苛立ったりしてしまうのが欠点だ。

さよなら知夫里島

西ノ島へ向かう

遅れて到着した内航船は車の載せ替えを5分程で済ませ、西ノ島へ向けて直ぐ出航。内航船は普通車が10台程度しか載らない小型のフェリーだが、この時来居港から乗船した車は僅か4台で、結果的には出航ギリギリに港に着いても車を載せる事ができた。まぁ、無事乗船できたんだからいいんだ。

中ノ島南端に建つ木路ヶ埼灯台

前日と同じくフェリー「しらしま」とすれ違う

西ノ島の別府港

知夫里島の来居港から西ノ島の別府港までの乗船時間は約40分。乗船中は終始屋外デッキで過ごし、中ノ島と西ノ島に挟まれた航路からの風景を楽しむ。1年前に観光した中ノ島の木路ヶ埼灯台が見えた時は、少々懐かしい気分に。それでも今回は中ノ島の観光は無しで、以降はひたすら西ノ島を巡る。ここから1年前の曇天西ノ島観光のリベンジ開始!

国賀海岸

(くにがかいがん:島根県西ノ島町)

別府港に着いたら西ノ島一番の観光スポットである国賀海岸へ直行。駐車場がある高台からは奇岩が連なる「天上界」を一望。快晴に恵まれ空も海も気持ちのいい青色で、視界いっぱいに明るい景色が広がっている。前日同様遠くの景色は霞んでいるが許容の範囲内。時間は11:00を回り気温は上昇し夏のような暑さに。とにかく1年前の曇天風景とは全く別物。待ち望んだ景色に気分も上昇!

高台から眺める国賀海岸の天上界

駐車場から仮設歩道を歩いて

国賀浜へ下りる

1年前は高台の駐車場から海岸まで下りる道路の施設工事をしていたが、1年経ってもまだ工事中であまり作業が進んでいる様子ではなかった。駐車場から続く仮設歩道を歩いて、天上界の一角にある国賀浜へ下りる。

<< SCROLL    国賀浜からの眺め パノラマ写真180°    SCROLL >>

まずは国賀浜の岩礁につくられた歩道を歩いて国賀神社へ。ふたつの鳥居をくぐった先には国賀神社の本殿となっている祠がある…と、1年前の旅行記に書かれてある。正直なところ観光地に関する説明や解説はどうでもいい、目に入る景色が素晴らしければそれでいい。

国賀浜の歩道に鳥居

ふたつ目の鳥居の先に祠

国賀神社!

仮設歩道からの国賀神社の眺め

国賀浜から続く遊歩道を歩いて天上界のハイライトである通天橋へ向かう。天気が良く何処を撮っても絵になるので、カメラを持つ手が休まる事はない。撮った写真全部をここに掲載したいくらいだが、さすがにしつこくなるので自重。国賀海岸は隠岐の島四島の中でも一番の観光スポットと言える場所なだけに、旅行1日目に観光した知夫里島の何処よりも観光客が多い。と言っても、駐車場に停まっていた車は10台も無かった。隠岐の島は離島で交通の便が良くないので、GW中でも観光客は少ない。自分にとって離島の大きな魅力のひとが、観光客が少なく落ち着いて旅行を楽しめるという事。有名な景勝地などでもあまり観光客が多いと、風景や本来のその場の雰囲気を味わう事ができず、楽しさも半減してしまう。

<< SCROLL    遊歩道から眺める天上界の奇岩群 パノラマ写真180°    SCROLL >>

そして念願の快晴下での通天橋見物。しつこいようだが1年前の曇天下での眺めとは全く違う、最高にいい眺め。1年越しのリベンジを果たす事が出来た喜びと共に、肩の荷が下りた気分でもある。もし今回も国賀海岸の観光で天気に恵まれなかったら、心底ガッカリして相当気分が落ち込んだに違いない。広島の自宅から島根の七類港まで約180kmを車で3時間前後かけて移動し、さらにフェリーに2時間乗船してたどり着く道のりは決して近くはなく、そしてフェリーの切符は高い。今回また天気が悪かったとしても三度目の正直は無かったと思う。

通天橋

摩天崖まで1.8kmのハイキングコース

通天橋上部まで歩く

通天橋の北側には日本最大級の海崖である摩天崖があり、通天橋から摩天崖まで約1.8kmの遊歩道が続いている。1年前は曇天にガッカリして遊歩道を歩かなかったが、今回はもちろん歩く。但し目的地は摩天崖ではなく、遊歩道のほぼ中間地点に位置する摩天崖を眺められる場所で、通天橋の断崖の一番上にある。摩天崖へは車で行く事ができるが、摩天崖を見られる展望所へは天上界か摩天崖から遊歩道を歩いていくしかない。

階段道を振り返る

細い遊歩道を進む

遊歩道は少々勾配のきつい場所もあり、ちょっとした山登り。と言っても急斜面は階段状になっていて割と歩きやすく、小さな子供も親に連れられて歩いていたりする。そしてとにかく眺めがいい。天上界の岩々や通天橋の様子が下からよりもよく分かる。この遊歩道は「一生に一度は訪ねてみたい百ヵ所」に選ばれている遊歩百選の道。国賀海岸観光するなら遊歩道も行かなきゃ損々。

ここから先は放牧地

追加事項 ●牛馬の糞に注意

遊歩道は途中から牛と馬の放牧地に入る。放牧地の入口には牛馬に対しての注意書きがある。前日の知夫里島でもあちこちの放牧地を観光したが、このような注意書きは1度も見掛けなかった気がする。ともあれ、どうせ注意書きを掲示するなら「牛馬の糞を踏まないよう足元に注意」みたいな一文も付け足しておいた方がいいと思う。

下からでは見られない通天橋の姿

快晴下での自然散策は気持ちがいい

放牧地=糞だらけ

結構登ってきた

旅行2日目は昼過ぎまで国賀海岸の観光をして、その後に14:40発の内航船で中ノ島へ渡り入浴をする予定になっていた。国賀海岸に着いた時は快晴下で観光するという1年越しの想いが叶って気分が高まり、観光に時間が押され入浴する時間が無くなってもいいとさえ思ったが、暑い中ハイキングをして汗をかいているので入浴できないのはやはり辛い。前日入浴していないので尚更に。なので内航船の出航時間を少し意識しながらの観光。

さらに上へと進む

天上界を見下ろす

遊歩道を登りきって

展望所に到着

景色と写真撮影を楽しみながらマイペースで遊歩道歩いても、通天橋から20分で摩天崖が見られる展望所に到着。通天橋からの歩行距離は約700mという短さもあり、思っていたよりも早く着いた。展望所からは海岸に切り立つ断崖絶壁を一望。海抜257mある摩天崖の眺めは正に壮大。写真ではそのスケールが全く伝わらないのが惜しい。時間はまだ正午前で、西を向いている断崖には日が当たらず陰になっている事だけが惜しい。

これが日本最大級の海崖

写真では伝わらないスケール

摩天崖の上をズーム撮影

天上界も一望

摩天崖の反対側は天上界とその周辺の景色を一望。こちらもかなりの絶景だが、正直なところ景色の霞み具合が気になる。展望所へは翌日も訪れる事になり、翌日の方が景色が澄んでいていい眺めなので、ここから撮った風景写真の多くは旅行3日目のページに掲載。

暑い中せっかく展望所まで歩いてきたので、暫くのんびりと景色を眺めて過ごす。通天橋からは意外と直ぐに歩いて行ける場所だったが、下から見上げると随分高く歩くのが大変そうに感じられるからか、遊歩道を歩いて展望所まで行く観光客は少ない様子。

<< SCROLL    展望所から北東〜南東にかけての眺め パノラマ写真180°    SCROLL >>

<< SCROLL    展望所から南東〜南西にかけての眺め パノラマ写真180°    SCROLL >>

展望所から摩天崖の上までの道のりは約900m。このまま遊歩道を歩いて摩天崖まで行こうかとも考えたが、暑い中これ以上山道を歩くのは正直面倒だし、この後入浴のために中ノ島へ渡る事を考えると時間に余裕を持たせたかったので、天上界まで戻って車で摩天崖へ行く事に。

1.2kmは摩天崖の駐車場までの距離

入れそうなので入ってみた

1年前よりもきれいに入った

天上界に戻ると空模様が急変

天上界まで戻るといつの間にか空は雲に覆われていて、青空も日差しも完全に隠れてしまった。風はそんなに出ていないのに何処からこの雲は流れてきたのか、あまりの空模様の急変ぶりに驚く。曇る前に天上界から展望台までの観光ができたのは本当にタイミングがよかった。しかしこれから車で摩天崖へ行こうという所で曇ってしまったので、上昇しっ放しだった気分は急降下。本当に天気は気まぐれで困る。